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2020年度から導入される小学校プログラミング教育、宮崎県新富町の起業家が取り組み開始

2020年度から導入される小学校プログラミング教育、宮崎県新富町の起業家が取り組み開始

    CATEGORY: AREA:宮崎県

9月開校に向け、プログラミング教室の内装工事に自ら汗を流す稲田さん

宮崎県新富町は、小中一貫校の導入など教育方法を見直し、県内の教員達にも人気の町である。

その新富町にある地域商社「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)」の教育事業部で教育デザイナーとして活躍する稲田佑太朗さん。自分自身の進路選択に自信を持てなかった稲田さんの人生観が変わった出来事を通して、教育のあり方を見出す。

教育に魅力を感じるようになったきっかけや、教育の本質とは何なのか稲田さんに伺った。

誰にも認められない空虚感

学生時代から、稲田さん特製の参考書を作成したり友人に勉強を教えてあげたりと教育に興味のあった稲田さんだが、すぐにはその道に進まず、大学卒業後に臨床検査技師の道に進んだ。その当時、これまでの進路選択が正しい道だったのか不安に思っていたという。

− なぜ、ご自身がした進路選択に不安を抱いていたのですか?

稲田 社会に出て、褒められることが極端に減りました。そうしていると少しずつ自分自身の選択が間違ったものだったのかと自信をなくしていったのです。

− その後、すぐに臨床検査技師は辞められたんですか?

稲田 どうしたら自分に自信が持てるようになるのか分からないまま、臨床検査技師という仕事にも見切りをつけ辞めようとしましました。だけど、このまま辞めても自分自身が成長しないと思って、臨床検査技師としてのレベルが宮崎で一番の病院に転職しました。

そこで自分の可能性を試してみようと一歩踏み出してみました。これをきっかけに僕の人生は劇的に変わります。

あなたに出会えて良かった

− 自信を持てなかった自分自身が変わった、何かきっかけはあったんですか?

稲田 ある日、近所の居酒屋さんで食事をしていた時のことです。たまたま知り合った女性と一緒にお酒を飲む機会があったのですが、話も盛り上がり、ふとした瞬間に「あなたに出会えて良かった」と、女性が口にしたのです。本当に嬉しかった。

− その一言が、稲田さんを劇的に変えたんですね?

稲田 この時のことを、僕はよくボードゲームのオセロに例えています。自分自身のネガティブな感情を黒、ポジティブな感情を白とすると、当時僕の盤面はほとんど真っ黒。それが全部白にひっくり返ったような感動を覚えたのです。

初めて自分が認められた、これまで勉強してきたことが無駄じゃなかった。そう思えました。それから、本格的に教育の道に進もうと考え、臨床検査技師を辞め教育に関わる仕事を始めました。

自分を好きになるための教育

− 稲田さんは、教育の本質についてどのように考えられていますか?

稲田 勉強って良い学校に進学し、良い会社に就職するためにも必要なことかもしれませんが、本質は違うと思うのです。教育は、自分を好きになるための1つの手段だと思います。もちろん誰かと比較するための手段ではありません。

そのために必要な教科を国語・数学・社会・理科・英語の5教科だと思っています。

− 自分を好きになるために、基礎となる勉強をするということですね?

稲田 はい、そうです。国語であれば、多くの言葉に感動できますし、勇気をもらうこともできます。理科であれば、多くの星座を覚えることで夜空を見るのが人の何倍も楽しいものになります。僕の場合は、星座の勉強をしていなかったので、これだけ星の綺麗な町で、星座の勉強をしていたら、もっと感動でき、更にこの町を好きになれたと思うのです。

5教科を学ぶことで、町の良さや、自分の良さが見えてくると思いますし、これからもそれを大切にしたいです。

これから必要な教育の3本柱

− これからの教育には、どのようなことが求められますか?

稲田 僕が考える教育は、5教科+農業+プログラミングの3本柱です。

5教科は先ほどお話ししたような理由ですが、農業は実際に触れること、プログラミングが論理的な考えを習得することだと考えています。座学だけでなく、多くのものと実際に触れ合い、人に認められる喜び、必要とされる喜びを経験し、自分をもっともっと好きになってもらいたい。

僕と同じように自分に自信の持てない子供達が教育で救われる。そんな未来を考えるだけで心が躍ります。

− これから始まるプログラミング教室が、その第一歩ですね。ありがとうございました。

こゆ財団では2018年9月より、商店街の空きテナントを活用したプログラミング教室を開催。日本全国から起業家や移住者が集まる宮崎県新富町。ここから子どもたちの教育はどんどん面白くなる。