宮崎県の中ほどにある、人口17000人ほどの町・新富町。ここで毎月第3日曜日に開催されているのが「こゆ朝市」です。
町内外から出店者を集め、商店街が臨時のお祭り会場のような風景になるイベントです。少し暖かさも感じる晴天となったことも影響し、延べ500人ほどが訪れる異例の大盛況イベントとなりました。
子どもからお年寄りまで大盛況の朝市
朝10時から開催される朝市ですが、開始早々に多くの人で賑わいます。親子連れはもちろん、お年寄りの夫婦や、子どもたちのグループも多く見られます。
お店を出しているのは、地元の飲食店やお菓子屋さんなど。それぞれがブースを構えて自慢の商品を販売します。
主催する「こゆ財団」のまちのコミュニティづくり
主催しているのは、新富町でまちづくりをおこなっている一般財団法人こゆ地域づくり推進機構、通称:こゆ財団です。
「強い地域経済をつくる」を掲げて活動するこゆ財団は、地元産品のブランディングや販路開拓をおこなっており、東京など地域の外に向けた活動が盛んです。一方で、こゆ朝市は、地域内を活性化しようと始まったイベントです。
最初は出店者の確保や、人集めに苦労したといいますが、少しずつ内容も改善し続けているといいます。
実はこゆ財団もお店を出店しています。それがオリジナルホットドッグの「新こゆドッグ」。素材にこだわった、ここでしか食べられないホットドッグということもあり、行列ができていました。
食べてみると、ジューシーなソーセージと、少し焼きを入れたパンが絶妙にマッチ。何度も食べたくなる一品です。
出店者と声を掛け合う姿が印象的
朝市の光景で印象的なのは、各出店者と、こゆ財団のメンバーが交流しているシーンです。「◯◯さん、調子どうですか」とスタッフが声をかけ談笑したり、ときには一緒に呼び込みをしたり。
このようなイベントだと、主催者はただ場所を貸すだけという形式が多い中で、主催者と出店者が一緒に盛り上げよう、楽しもうとしている様子が伝わってきます。ときには、店主がふらっといなくなり、財団メンバーが留守番をすることも。
この「良い加減」さが、この町のコミュニティを象徴するようなできごとではないでしょうか。
クルーズトレインななつ星で採用のキャンベルジュースも
こゆ朝市には、いろいろなお店が出店していますが、こんなお店も出店しています。
JR九州が運行するクルーズトレイン「ななつ星」で提供されている最高級のぶどうジュース「キャンベルジュース」です。
濃厚なぶどうジュースで、今までのぶどうジュースの概念が変わること間違いなし。めったに飲めないというのも、ポイントです。
このようにすぐに飲める形式で提供されているのは、宮崎県内の一部の高級ホテルと、ななつ星以外では、この移動販売車だけなのだとか。
もし出会ったら、必ず飲みたい一品です。
ホッとできる居場所づくり。地域コミュニティが育む安心できるまち
普段は閑散としている商店街に人が集い、笑顔になる。これだけで町の安心感が向上するように思います。
いま日本の社会課題のひとつとして、都市部・地方部を問わず、地域コミュニティの衰退が指摘されています。
国土交通省が平成17年に実施した全国の一般世帯を対象にしたアンケートで、「地域の人々との付き合い」を調査したところ、「付き合いはあるがそれほど親しくない」「ほとんど、もしくは全く付き合っていない」という回答の合計割合は、都市部で72.9%、町村部でも68.8%となっており、地域コミュニティがほぼ機能しなくなっていることがわかります。
このような現状に対して、こゆ朝市は地域コミュニティの回復を果たすことができるかもしれません。
それは、多様な世代が集っていることと、子どもが集まることに大きな要因があります。
子どもの減少によるきっかけの減少
なぜなら、子どもたちが集まることは、コミュニティ活動のきっかけになるとされており、前述の調査でも、「子どもの減少によるきっかけの減少」が要因として指摘されています。
地域コミュニティを形成する条件は数多くありますが、中でも、昼間に地域に出て交流できる時間と場があること、そして子どもたちが集う場があることが、大きな条件の一つとされています。
つまり、こゆ朝市の作り出している風景は、この2つの両方の要素をもっているといえます。
朝市に行ってきた方が、知り合いに朝市の良さを語り、また新しい人が訪れるというサイクルもできており、少しずつ認知も広がっているようです。
まだまだ課題も多いという朝市ですが、これからどのような場になっていくのかが、とても楽しみな取り組みです。