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移住したくなるまち、津山。年間100件以上の創業相談を受ける場づくり「アートインク津山(岡山県)」

移住したくなるまち、津山。年間100件以上の創業相談を受ける場づくり「アートインク津山(岡山県)」

    CATEGORY: AREA:岡山県

岡山県の北部に位置する人口約10万人の地方都市、津山市。

移住定住促進を実現しようと全国の各自治体が様々な取り組みを行っているが、実際にところ、その多くが大変に苦労している中で、1つのモデルケースになり得る地域が津山市である、

そして、移住定住促進の実現に大きく貢献している場が、津山市での創業や事業化を支援するシェアオフィス・コワーキングスペース「アートインク津山」だ。

その運営を行い、全国から津山市への移住支援を行っている「レプタイル株式会社」の代表取締役 丸尾宜史さんと取締役 白石七重さんにお話を伺った。

今回は、宮崎県新富町で移住促進を推し進め、その成果が多くのメディアに取り上げられている地域商社「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(こゆ財団)」のメンバーと共に、アートインク津山とその周辺を訪れた。

年間100件以上の創業相談が集まる場

「起業したいと思います。」「津山に戻りたいんですが、働く場所はありますか?」「カフェの経営が、うまくいかないのですが・・・」など、アートインク津山には、色んな相談者が訪れるという。

その数はなんと、年間120件。そして、その内の11人が創業し、アートインク津山を拠点として、周囲に新たな経済圏が生まれている。

アートインク津山を運営し、創業相談だけでなく、移住検討者・移住者からも多くの相談を受けているレプタイルの丸尾さんと白石さんに、そのポイントを伺った。

創業相談窓口の開設をきっかけに、創業相談だけに限らず移住・定住に関する相談も受けるようになり、移住相談窓口の役割も果たしていることがわかった。「気軽に相談できる」、「色んな人が相談を受ける」、そして、「移住検討者とつながる環境をつくる」という移住のために必要な3つのポイントが見えてきた。

気軽に相談できる

1つ目のポイントは、移住について関心のある人、悩んでいる人が気軽に相談できるということだ。

行政の窓口に行くとなると、こんなことで相談しに行ったらダメなんじゃ・・・と考えてしまう人も多いと思うんですが、私たちは「どんな相談でも良いですよ!」ということを全面に打ち出して、Facebookで発信し続けてます。

その結果、ふんわりした悩みでも、聞きに来たり問い合わせをしてきてくれたりするんです。

移住を検討している人が、とりあえず聞いてみようと思える環境をつくることが大切だ。

色んな人が相談を受ける

津山にオープンした情報交流拠点&コワーキングスペース「Ziba Platform」

2つ目のポイントとして、相談を受ける側の多様性や専門性が挙げられる。

この人だったら、私が聞くよ。この人だったら、丸尾さん聞いて。という様に、私たちは相談者に応じて、柔らかく相談できる環境をつくっています。

その結果、何度か相談しに来てくれたり、友人や知人にも津山を紹介してくれたりするんです。その人に合った人が話を聞く様にして、聞いている内に、この人繋げた方が良いなと思ったら、繋ぐようにしています。

アートインク津山では、ベンチャー企業の上場を経て、現在は岡山県北を中心に活動し、先進的な取り組みで全国的にも注目されている岡山県西粟倉村のエーゼロ株式会社で執行役員として働く山田邦明さんをインキュベーターとして招いている。

都会と変わらぬ情報や人脈を持った人に相談できる環境は、移住者にとって貴重だ。

移住検討者とつながる環境づくり

アートインク津山を訪れる相談者は、津山に地縁のある人たちだけではない。約三分の一が、津山とは縁もゆかりもない人だという。どのように、移住検討者とつながっているのだろうか。

金曜日をメインに週1日は、「この日は必ず相談できるから、どんどん来てください。」と、発信していることが一番の理由でしょうか。

また、行政からの様々な業務委託のつながりもあり、つやま産業支援センターさんからの紹介はもちろん、ふるさと回帰支援センターさんや岡山県の東京事務所さんからの紹介で移住相談に来られる方もいます。色んなところで、移住を考えている人とつながるのは大切ですね。

広いアンテナで、継続的・定期的に移住検討者とつながる環境は重要だ。

地方に足りない移住の受け皿をつくる

地方移住の相談に乗るということは、その人の話を聞いて面倒なことを一緒に考えるということだ。地方にはまだまだ、その面倒な部分を受け入れる寛容さ、受け皿となる場が足りていない。

アートインク津山では、ただ相談に乗るだけではなく、相談者のために「創業後」や「移住後の暮らし」を考えて、時には突き返すという。

もちろん、面倒な人もいますから、結構突き返しますよ(笑)

「今のままでは、準備が不十分だから、次来るまでにこれは決めてきましょう。」ときちんと伝えています。時に優しく、時に厳しく、突き放します。

ここには、1000冊ぐらい専門書やビジネス書がおいてありますので、勉強が足りないなあと感じた時には、本を貸し出してます。

アートインク津山では、相談者の未来を真剣に考えているからこそ、上辺だけの対応ではなく、移住検討者にとって必要な対応をとっていることが印象的だ。

移住者と地域のコミュニティづくり

多くの移住相談を受ける、アートインク津山。この場に、移住者・移住相談者・地域の人たちが、常に20人ぐらい滞在している状態をつくりたいと伝えてくれた。

それによって、移住の相談者はもっと増え、地域コミュニティはもっと強くなる。今後はさらに、移住・創業から、雇用が生まれる仕組みづくりにも取り組んでいくという。

移住者・移住相談者を1人にさせないこと、強いコミュニティづくりを実現できれば、場所は関係無い。津山は、それを証明し続けている。