公務員というと、みなさんはどんなイメージを持っているだろうか。「就業時間が9-17時きっかり」「安定している」「お堅い」など、必ずしもプラスの印象を抱かない人もいるだろう。
「このイメージを覆したいんですよね!」と、にこやかに語る人物がいる。47都道府県の公務員をつなぐ「よんなな会」を主催する脇雅昭さんだ。脇さん自身も、総務省から神奈川県庁へと出向している公務員である。
脇さんが宮崎県出身というご縁から、東京在中の宮崎県出身者をつなぐ「宮崎ひなたフォーラム」が意見交換会を主催。この意見交換会の様子をリポートしたい。
公務員をつなぐ「よんなな会」
登壇した姿を一目見た瞬間、「公務員=お堅い、生真面目」というイメージが吹き飛んだ。それだけ親しみやすい雰囲気をまとっている脇さんは、笑顔を時折浮かべながら、よんなな会について語り出した。
よんなな会とは、47都道府県の地方公務員と、中央省庁で働く官僚が交流する会である。これまでにVol.12まで開催されたほか、公務員・民間それぞれの人事課に所属する人が一緒に合宿をする「よんなな人事会」、全国の学生が集まる「よんなな学校」、宗派を超えてお坊さんが繋がる「よんななお坊さん会」といった、公務員だけに留まらない、派生コミュニティも誕生している。
よんなな会の魅力は、中央省庁の長官から社会起業家までさまざまなゲストが登壇することはもちろんだが、参加者が「笑顔になる」ことと「当事者意識を持つ」ための工夫が凝らされていることだ。
参加費は地元の特産品
例えば、よんなな会の懇親会に参加費はない。そのかわり、地元の特産物を1人1品持っていくというルールがある。参加費ならば払っておしまいだが、1品持っていくとなると、何を持っていこうか、品物のアピールを当日してみようかなどと、参加者自ら考え行動するという。
また、当日にステージ上で自分の考えや想いをアピールできる時間を設け、自ら発信するきっかけを作ることも大事にしている。
人口減少が進み、幸せの形が多様化しているこれからの社会では、一人ひとりの力をどう高めていけるかが大事だと脇さんは考える。
僕が1万の力を持つのではなく、1万人が1の力で、自分の身の回りに何ができるだろうと考えている人を増やすことが、よい社会に繋がると思っているんです。だから、そういう人をまずは僕と同じ公務員の中から増やしていきたい。公務員の志や能力が1%上がったら、社会がもっとよくなるのではと思っています。日々何のために仕事をしているのか分からなくなっている人にこそ、よんなな会に来て欲しいですね。
地方の魅力は課題にこそあり
脇さんがよんなな会を主催している理由のひとつに、公(おおやけ)が抱えている課題は、行政だけでは解決できないという考えがある。一方で、課題は人の心を集めるキーワードでもあるとも考える。
地方ほど『課題』があるというけれど、それはすなわち、地方ほど人を惹きつける『財産』があるということ。その財産を通じて人と人がつながることで、より良いものが生まれたり、もっとおもしろいことが起こったりすると思っています。
よんなな会で民間や学生とも交流するのは、つながりを生み出すだけではない。“公務員はいい仕事だと知ってもらう”ためでもあるという。
そのためには、公務員と実際に出会ってリアルを知ってもらうしかないと考えています。これは地方についても一緒。僕の出身の宮崎に例えるなら、リアルな宮崎との接点がないから『仕事がない』などのイメージができてしまう。
100を描くより、1を踏み出す
大学生の質問者から「将来やりたいことがわからない、アドバイスがほしい」といわれた脇さんは、苦笑しながら「自分もよんなな会を将来どうするのか、と尋ねられると困っちゃう」と話す。
父の死をきっかけに自身の“人生をかけるビジョン”を2年ほど考えたというが、よんなな会の行く末を含め、なにも思いつかなかったという脇さん。ひとつだけ気づいたのは、いくら頭の中で考えていても、実際に動かない限りは1mmも世の中のためにならないということだけだった。
それからは、明確なビジョンを描かないかわりに、今おもしろいと感じたことを行動し続けた脇さん。その実行力のエネルギー源について問うと、脇さんはこう答えてくれた。
何かをやりはじめる前に、100を描いて100を目指そうとすると、できない・やらない理由がいくらでも思い浮かんで一歩も進めません。だから僕は1を目指すんですよ。そうすると70点取ったときに69も前に出た!と喜べる。しかも、1を踏み出したときは1人だけど、2踏み出すときは2人、3踏み出すときは3人・・・と、仲間が増えていくから、負担もその分減って100を目指していけるんですよ。