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「ありがとう」と言い合える関係を作りたい。Uターン×地元の薪と石窯でつくる「おひさまパン工房」

「ありがとう」と言い合える関係を作りたい。Uターン×地元の薪と石窯でつくる「おひさまパン工房」

    CATEGORY: AREA:広島県

ここは、宮島や牡蠣で有名な広島県廿日市市。広島市の中心地から電車で30~40分のこの街に、森のロッジのような雰囲気の「おひさまパン工房」があります。店内に並べられた天然酵母パンの奥に見えるのは、なんと石窯と積み重ねられた薪や端材。この工房のパンの魅力は、薪を使って石窯で焼いていることです。

オーナーの野村直さんは、大手食品会社の社員として長年東京で活躍した後、Uターンで地元広島におひさまパン工房を立ち上げました。パンに縁もゆかりもなかった野村さんが、なぜパン工房を始めたのか。そこに込められた想いや、地域コミュニティの中での挑戦や試行錯誤、その先に見えてきたことなどを伺いました。

「ありがとう」と言い合える関係をつくりたい。サラリーマンからの転身

オーナーの野村直さん

野村さんのキャリアは、「ゆかり」などのふりかけで有名な広島の食品会社「三島食品」からスタートしました。主に業務用の商品開発や海外事業の担当として、名古屋や東京で仕事に没頭していました。東京での仕事も10年を過ぎた頃、参加したマーケティング研修で耳にした、「マーケティングとは、顧客を創造すること。そのためには、お客様との絆づくりが大切」というシンプルな言葉にハッとしたそうです。

日々、商品開発や取引先企業との仕事に没頭する中で、一人ひとりの消費者・お客さまの喜んだ顔を知らない自分に気づいたんです。お客さまと直接「ありがとう」を言い合える、そんな関係や絆をつくりたいと強く思うようになりました。

仕事や仲間に恵まれた職場だったものの、野村さんは悩んだ末に、約14年勤めた会社を辞めて、自分自身でお客さまと接する商売を始めようと決意します。東京のような大都会は、交通の便もよく、人口も多く、ビジネスの可能性は大きいけれど、野村さんの暮らしの中では、お店の人と仲良くなったり、つながり合ったりする体験はありませんでした。規模は小さくても、つながりの深い古き良きコミュニティがあるような地域を考えた時に、野村さんの心に浮かんだのは、生まれ育った広島。地元からも近い宮島が、過疎化の課題を抱えていることを知り、家族とともに移住して、自分に何ができるかを探ることにしたのです。