MACHI LOG

地方で働き方改革:ユニリーバ島田由香氏、ホッピー石渡美奈氏が登壇-宮崎県新富町

地方で働き方改革:ユニリーバ島田由香氏、ホッピー石渡美奈氏が登壇-宮崎県新富町

    CATEGORY: AREA:宮崎県

PR for しあわせなまちづくり実践塾

自分らしく働く、生きる。今、多様な働き方を個々が選択できる社会を実現しようと、様々な取り組みが行政・企業でスタートしている。

「働き方改革」は、地方にも大きな影響を与える。東京と地方で人の流れが活性化することを想定し、今後のまちづくりを考える上で、地方の行政・企業も自律的なチーム・組織づくりについて考え、取り組む必要がある。

宮崎県の中央部に位置する人口約17,000人のまち、新富町。東京ドーム約460個分にも及ぶ広大な農地と、アカウミガメが上陸・産卵する美しい海を有する、この自然豊かな小さなまちで、既に新しい働き方を目指した取り組みが始まっている。

「世界一チャレンジしやすいまちへ」というビジョンのもと、「強い地域経済をつくる」をミッションとし、2017年4月に宮崎県新富町が設立した地域商社「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)」は、第一線で活躍する講師と一緒に地域の課題を発見・解決する「しあわせなまちづくり実践塾(全5回の講座+ワークショップ)」を企画・運営している。

そのプログラムの一環として、2018年7月7日(土)に「地域創成シンポジウム2018」が開催された。

働き方改革とまちづくり:自律的な組織のつくり方

こゆ財団」が企画・運営する今回のイベントは、新富町長の小嶋崇嗣氏や人・組織づくりのプロフェッショナルをゲストに迎え、「自立・自律」ついて参加者と一緒に考える機会となった。

会場には、宮崎県内外から約40名の参加者が集結。九州各地や大阪など遠方から来た参加者もおり、経営者・教育関係者・公務員・大学生など様々な職種の人たちが、このイベントのために新富町を訪れ、議論や意見交換が行われた。

宮崎県新富町が取り組む、自立したまちづくり

2018年4月、町長に就任した小嶋氏は、地方が抱える様々な課題を解決できる強い地域を目指し、“自立したまちづくり”を掲げられている。

「自立を目指しましょう。自立を支援します。」と、よく言われますが、そもそも自立とはどういうことでしょうか?

そんな小嶋町長から、会場の参加者への問いでイベントはスタートした。町長は、経済的自立・社会的自立・精神的自立という3つの定義について話し、具体的に役場で取り組んでいる2つのことを説明された。

一つは、管理職に決裁権をより多く持たせ、自分たちで決断してもらい、スピーディに住民の要望へ対応すること。もう一つは、新しいことを始めるために、勇気をもって「やめることを決める」ということだ。

自立した行政・民間、それぞれが協力し、コラボし、地域を支える。それが「地域の自立」に繋がる。

また一方で、人は1人では生きられない。ただ、特定の人に依存するのではなく、頼れる人をたくさん増やすことで、選択肢を多く持てる自分になり、社会と共に生きていく中で、人は独り立ちしていくということも伝えてくれた。

組織づくりに大切な「自立と自律」

イベントのスペシャルゲストとして、トータルビューティケアブランド「Dove(ダヴ)」や「Lux(ラックス)」を展開するユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役人事総務本部長 島田由香さんが登壇。

新人事制度「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」を推進し、日本の働き方改革をリードする、組織論・HR(ヒューマン・リソース)のプロフェッショナルである島田さんは、個々が好み・強みに気付いて、楽しく豊かに笑顔の続く人生を送ってもらうことを大切にしながら、様々な活動をされている。

島田さんは、組織づくりに大切な「自立と自律」という2種類の“ジリツ”について教えてくれた。

「自立」には、決まっていることを自らやる「自主性」が求められる。
「自律」には、決まっていないことも自らやる「主体性」が求められる。

決まっていることはもちろん、決まっていないことや前例がないことに対しても、どんどん行動を起こせる人材が自律型人材。

組織にいる人(個人)が主体的に考え、最高で最善と考えられることを自ら行う組織、それを妨げることなく迅速に動ける組織、そして、誰かの言葉や行動に流されるのではなく、「やってみよう!」と失敗を恐れず動ける組織が、自律型組織だと伝えてくれた。

100年企業の「ホッピー」に学ぶ

もう1人のスペシャルゲストは、10年で年商を約5倍にした「ホッピー」で知られる、ホッピービバレッジ株式会社 代表取締役社長 石渡美奈さん。

ホッピー誕生70周年を迎えるホッピービバレッジの歴史、経営者としての「自立」などについてお話をいただき、多様な視点から「自立」を考える時間となった。

登壇されたゲストの方々が、今回の「自立」というテーマについて、共通してお話していたことは「自分で決める・選択する」ということだ。

自立した、しあわせなまちづくり

質疑・ディスカッションでは、今回のテーマである「自立」について、多くの意見交換が行われた。

―メンバーが自信をもって、自立したまちづくりに取り組むにはどうすれば良いか?

(小嶋町長)
職員には、コントロールできないことを無理にコントロールしなくて良いと伝えています。自分がコントロールできることに対して、精一杯尽くしましょうと常々話しています。

自分の置かれている環境や場で、目標に向かってまず一歩を踏み出す。それぞれのできること、やるべきことを実践していくことで得られる成功体験がとても大切だと思います。

―自立へのステップで大切なことは何ですか?

(島田さん)
人生は、4つの掛け合わせでできていると思っています。それは、好きか・嫌いか、やるか・やらないか。

ぜひ、好きなことをやってほしいです。そう思える仕事を選んでいるのかを考えて、人目ではなく自分の心の声を大切にしてほしいですね。まずは、自分を知ることが、自立への大切なステップだと思います。

―活動を広めるために言葉を発したことで、ネガティブに捉えられてしまうことがあります。そんな時、どうされていますか?

(島田さん)
何かを始めるときは、必ずネガティブな意見も出ます。それを気にしていたこともあるし、耳に入ってくると悲しくて落ち込むこともありますが、自分が信念を持ってやっていることの火が、それで消えるかといったらそうではないと考えています。

ネガティブに捉えられる可能性は、どんな事をしてもあると思います。実は、無反応・無関心の方が怖いことで、ネガティブな意見はむしろ宝ものです。

イベント後に参加者へ話を聞くと、「たくさんの地方を見てきたけれど、新富町はきっと自立したまちづくりを実現すると思います。町長の想いとこゆ財団の取り組みに感動しました。」という声があった。

「自立したまちづくり」を目指すことは、強い組織やチームをつくることにつながるだけでなく、関わる人をポジティブにさせる「しあわせなまちづくり」にもつながる。宮崎県新富町と「こゆ財団」の取り組みはスタートしたばかりだが、既に多くの人を巻き込み、ワクワクさせ始めている。