KYUSHU ISLAND WORKは、「はたらくをオフィスから解放する」をコンセプトに、九州全域に快適な環境の整った分散型ワークプレイスを展開しています。この度、働き方、ワーケーション、地域商社、スタートアップ、農業改革、事業承継、公民連携など、多様なテーマで活躍するトップランナーが一堂に集結する『KIWサミット2022』を開催しました。
今回は、九州から始める地方創生の未来をテーマにした対談内容をご紹介します。
【パネラー】(敬称略)
・福岡地域戦略推進協議会 事務局長 石丸修平氏
・株式会社一平ホールディングス代表取締役 村岡浩司氏
「ONE KYUSHU」で人を呼び込みたい
村岡:石丸さんとの出会いは2017年です。私の著書でもある「九州バカ」の本でも出てくる「いいかねPalette」の中で廃校を利用するプロジェクトを進めていたときに、石丸さんが訪問してくれました。そこで意気投合、今に至るわけです。
石丸:廃校利用ということで興味をもち、急にお邪魔させてもらいました。
村岡:「ONE KYUSHU」という概念に強い共感があって、これに対する議論を重ねましたね。
私が常に考えているのは、福岡は九州にとってキーになるキャピタルだということです。なぜなら、九州外から九州に入ってくる人で福岡を経由するのは半数以上。福岡を拠点に、九州全体へ人を呼び込みたいという気持ちがあります。
石丸:あらゆる場面で、送客に対する意識が強くなっていると最近特に感じています。行政も、送客につながる部分に一層投資していますよね。
村岡:送客に力を入れるのは歓迎です。ただ、政策の弱点として、KPIを各自治体が競い合っていた過去がありました。これは良くないです。
今後は、各自治体が共通のベネフィットをもって、創客に対して皆で取り組んで、九州全体の流動性を高めていくことが重要となるでしょう。
石丸:実は、九州は都市間の流動性が高いという特徴があります。環境は整っているので、今後は実現に向けて適切な設計が必要となりますね。
人々はその土地にしかないものを求めている
村岡:ここでいくつか質問をしたいと思います。新型コロナウイルスが落ち着いた後はどのような展望があると思いますか?
石丸:現在、「リアル」への要求がとても高いです。また、地域創生としてもリアルでなければ、その土地にお金を使っていただけないという観点もあります。
人々は、その土地にしかないものを求めていることを忘れてはいけません。これは観光誘致も事業誘致も同じことです。
特に事業誘致では、民間企業が従業員の労働環境を一層意識するようになってきたと感じます。実際、企業側から「本当に5分で砂浜に行けるのか?」など、九州へのオフィス設置に関連して聞かれることがありました。
オンラインを活用したプロジェクトの発展
学びについても、ハイブリット型が進んでいます。
今後も継続することでしょう。オンラインを活用することで、少し離れた自治体同士が一緒にプロジェクトに取り組めるようになってきました。一つの自治体ではリソースに限りがあっても、ハイブリット型で協力すると大きなプロジェクトにすることができるので、このメリットを活かせるといいですね。
村岡:一例を上げると、福岡の大学生、企業の若手、行政が一緒になって、自治体の活性化に向けたヒアリング、議論、実装を進めるプロジェクトはとても面白いのではないでしょうか。
民からのアイディアを官が取り入れる流れも強いです。コロナ禍で一時期ストップしましたが、現在はオンラインでいつでも連携できるという良い流れとなってきています。
言い換えれば、話し合うのに会議室を用意する必要がなくなったということです。SNSなどを介して意見を交換できる環境がプラスに働いています。
多人格性があるメタバースに期待
石丸:メタバースにも注目です。このポイントは、テクノロジーではなくその多人格性にあります。
自分自身では発信できないことを、別人格に乗せて発信している人が多い。そのおかげで、メタバースの世界には夢のあること、チャレンジングなことがたくさんあるのです。
現実的ではない意見は、従来なかなか手に入りにくいものでした。それが、メタバースの世界であれば、企業は新しいニーズを拾い上げられるようになります。行政にとっても同じで、今まで得られなかった市民の声を聞くきっかけになるでしょう。
従来顕在化していなかったことがたくさん落ちているメタバースには、大きな期待をしています。
自分たちの地域を改めて見直すきっかけになった
村岡:最後に、九州バカの本にもう一度戻りたいと思います。
「拠点となるワークスペースを手に入れ、場所と時間の概念から解き放たれて、旅をする自由を手に入れたい。インターネットのおかげでその自由が手に入ろうとしている。」
これは5年前に書いていたことですが、現在現実のものになっています。
実際、今はコワーキングやワーキングスペースが発達して、自分でオフィスをもつ必要がなく、自由な働き方ができるようになっています。
5年後の世界の展望を石丸さんにぜひ予想していただきたいのですが、いかがでしょうか?
石丸:私自身、当時コミュニケーションを取っていたコワーキングスペース関係者とは、コロナ禍でもネットを通じて定期的に連絡を取り合えており、実際に会わずとも距離は縮まっていると感じています。
ただし、まずは出会わなければこれはできません。
そのため、今後もリアルへの需要はなくならないはずです。従来は現地に訪れ、滞在しないと進まなかった物事が、今後はオンラインで進められるようになると思います。
信頼関係さえ構築できたら、その後は距離があってもさまざまなプロジェクトをリモートで進められる世界になるでしょう。
最近感じるのが、世界情勢が落ち着かない中で、自分たちの地域を改めて見直すきっかけになったということです。九州の人たちにとっても、九州の価値が高まっています。この流れは、ONE KYUSHUにとって好機となるでしょう。
何が起きるかわからない世界の中で、どうしたらいいかを考えていかなければなりませんね。
村岡:九州は日帰り圏内で結構色んな所に行けます。
コロナをきっかけに、中(自分のいる場所)と外(それ以外の場所)をより意識するようになりました。九州の人たちが九州を見つめ直し、価値を再認識し、皆で流動性を高めていけたらいいと思います。