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子育て中の約2割が、地方移住を検討。魅力は自然環境?

子育て中の約2割が、地方移住を検討。魅力は自然環境?

    CATEGORY: AREA:東京都


朝7時30分、「おはようございます」という元気な大きな声が外から響いてきます。

通学中の小学生が、道行く人に挨拶している声です。

朝から道路を駆け回っている子どもたちもいて、伸び伸びと生活していることがわかります。

これらは、私が暮らす宮崎県新富町での朝の光景の一部です。

東京と地方の違いが、子どもたちの挨拶の有無。東京をはじめ都市部では、いまや犯罪対策などもあり、知らない人への挨拶はほとんど行われていません。しかし地方にいくと、元気に挨拶してくれる子どもたちの姿があります。

都市地域で暮らし、6歳以下の子どもをもつ男女にアンケートをとったところ、約2割が地方への移住を検討していることがわかったという調査があります。

この結果からは、多くの人が地方での子育てを魅力に感じていることがわかるものです。明らかになったのはどのような内容なのでしょうか。

都市部での育児は孤独

「孤育て」「ワンオペ育児」という言葉でも知られるように、誰かに頼ることなく育児を強いられている親が増えています。

アンケートでも、近所に暮らしていて子育てをサポートする存在の有無について聞いたところ、子育てを支援する祖父母や親族がいない人が、全体の49.4%にのぼることが明らかになっています。

子育ての不安やストレスの増加

子育ての孤軍奮闘は、ストレスや不安を感じることにもつながっているでしょう。

同様の調査で、子育てにおけるストレスや不安を「常に感じている」と「よく感じている」を合わせると29.7%にのぼり、ここに「時々感じている」まで合わせると75.3%にもなります。

例えば頼れる人がいない子育ての中で、時間拘束が大きかったり、息抜きの時間が確保できない、そして相談ができないなどの理由が考えられるでしょう。

子どもは自然体験不足

子育てといえば、多くの親が自然環境の中でのびのびと子どもを育てたいというイメージをもっているであろう一方で、子どもに十分な自然体験ができているという親は、全体の約2.2%しかありません。

比較的ポジティブな、ある程度は自然体験ができているを除くと、全体の約3分の2の親は、子どもの自然体験不足を認識していることが明らかになっています。

子育て世代の約2割が地方移住を検討

このような子育てでの課題に対し、地方への移住というのが解決策のひとつとしてあげられるでしょう。

実際に、入園前・入学前という比較的早い時期での地方移住の検討は14.7%、中学入学前・高校入学前を合わせると、18.6%の約2割の親が地方への移住を検討していることが明らかになっています。

ちなみに、「子育てが終わったら」と「いつかは分からないが」を合わせると、約4割の親が地方への移住を検討していることも添えておきます。

都会での課題を解決したいというニーズがある

地方移住を考えるきっかけになっているのは、やはり子育てにおける子どもへの影響を考える部分が大きそうです。

きっかけとして約3割が回答しているのが、「子育てのために、自然環境が豊かなところ、地域コミュニティが豊かな地域で暮らしたいから」というものです。

次点では、「スローライフ・自分らしい生き方のため(26.4%)」、「出身地や親元等へのUターン(24.0%)」となっています。

ここからわかるのは、自然環境豊かなところで暮らしたいというニーズと共に、孤軍奮闘での子育てではなく、コミュニティでの子育てが求められているということでしょう。

地方移住で子どもも増えるかも

地方には子育てを支えるコミュニティがある。写真は筆者も移住した宮崎県新富町の朝市の様子

地方移住が社会課題となっている少子化に対しても有効かもしれないデータも出ています。それは、今後の出産の意向について「現在の環境の場合」と「地方に移住した場合」で聞いたというものです。

その結果、「もう1人子供がほしい」〜「もう3人以上子供がほしい」という項目でそれぞれ増加し、合わせて約1割が地方に移住することにより、子どもを増やしたいという意向があることが明らかになりました。

また「子どもを増やすことを望んでいない」という回答も、現在の環境では43.9%ですが、地方に移住した場合には31.6%と、10%以上の減少をしめしています。

つまりこれらは、条件や環境が整えば、地方移住によって子育てでの課題解決につながるであろうことを示しています。

しかし現在は、都会にはない、また都会での課題を解決する魅力が地方にはあると漠然と認識されている状況であるといえるでしょう。

子育て世帯の地方移住促進のためには、子育て環境や、自然の中でどのように子育てができるのかを見せたり、体験したりできる機会を積極的につくっていくことが必要でしょう。

子育て、暮らし、仕事といった面を連携させながら、地方移住の具体的なイメージを喚起し、実際に行動を促すことが求められています。

参考文献:「都市地域に暮らす子育て家族の生活環境・移住意向調査」(2016, 株式会社NTTデータ経営研究所)