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学童保育不足をソーシャルファイナンスで解決する

学童保育不足をソーシャルファイナンスで解決する

    CATEGORY: AREA:東京都

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「sopa.jp(ソーパードットジェイピー)」は、社会を変えたいと思う起業家をみんなで支える仕組みを作ることで、日本・世界の社会問題解決を目指しているNPO法人です。

現在「小1の壁」の問題を解決するため、学童保育を立ち上げる社会起業家支援を行うsopa.jpの理事長で創業者でもある小田るいさんにお話を伺った。

障がい者と複数の家族で一緒に暮らした幼少期

gift-oda-06写真:医学部を中退し障がい者支援をしていた父と生まれたばかりの自分

学童保育不足という社会問題に取り組むsopa.jpの活動は、福祉と教育の仕事をしていた両親の影響が大きいです。

私が生まれたとき、父と母は、障がい者と複数の家族で一緒に暮らしながら障がい者の自立支援活動をしていました。その後、父は塾の経営や介護サービスの仕事に従事し、社会福祉士の母は、ホームヘルパー、ホームレス、DV(家庭内暴力)の問題に取り組むなど幅広く活動をしています。

両親の活動を傍目でみながら、その想いをもっと世の中に広められたら素敵だと幼心に思っていたことが原体験になっているとNPO立ち上げ時に気づきました。

sopa.jpの構想ができたのは、社会人になって数年経ったときです。企業のコンサルタントをしていて、物足りなさを感じていた時に、ソーシャルベンチャーパートナーズ(SVP)に出会いました。そこでNPOや社会起業家の支援をしているうちに、自分でやりたいという想いが強くなってきました。

NPOを運営している人の中には、せっかく想いをもって運営をスタートしても続けられず活動を辞めてしまう人達も多く、それはとてももったいないことだと思いました。そういう想いもった人の活動がもっと広がる仕組みをつくりたいと思い、自分自身で団体を立ち上げました。

女性がもっと柔軟に働ける場を

保育の問題に挑戦しようと思った1つの理由は、自分自身の子供が生まれるときに、待機児童の問題を意識したからです。もう1つの理由は、男性が仕事に打ち込み、女性が家庭に専念するという前提にたった働き方が主流で、柔軟な働き方ができないことに対する問題意識を持っていたからです。

日本は、内需中心国のため、少子高齢化によって労働者人口が減り誰かが働いて支えない限りどんどん衰退していくのではないかという懸念があります。その解決のためにも、働きたいと思う女性が活躍できる場を創っていかなければと思っています。

小学生版の待機児童ともいえる「小1の壁」

 

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当初は、子育てしやすい環境をつくるために保育園をつくる仕組みをつくろうと思ったのですが、保育園運営は莫大な税金の投下を前提にしなければ、増やせないと言う構造的な問題があるとわかりました。

実は保育園の利用者の多くは気づいていませんが、0歳児保育にかかるお金は、東京都23区内で月に40万円ほど必要です。そのうち利用者が払っているお金は数万円で、約30万円強は税金が投下されているという事実があります。そのため、財政難の自治体は保育を増やせないというジレンマがあります。その様な環境のため、現行制度下では、保育園を増やすかどうかは政治でしか解決できません。

一方、学童保育は、キッズベースキャンプという成功事例がある様に、創意工夫によって事業化できる領域です。また、学童保育は保育園以上に不足していると言われており全国で65万人分足りないと言われています。(この問題を小1の壁といいます)

小1の壁の領域にソーシャルファイナンスを活かすことで、社会にインパクトを与えられるのではないかと考えました。

ソーシャルファイナンスで学童保育を増やす

gift-oda-05写真:今年4月、世田谷区祖師谷大蔵でオープン予定のラボアンドタウンまちなか学童

課題を小1の壁に決めた理由は、SVPで活動していた間に感じた問題意識からです。

今の日本では社会起業家への資金援助の大半が寄付になってしまいます。
それは、多くのNPO・社会起業家の活動が事業として成立していないためです。

ソーシャルファイナンスの仕組みをつくるための必要条件は、出資先が事業として成り立つという事です。それができなければ、資金を提供しても返ってこないため、寄付したことと一緒になってしまいます。

私が作りたかったのは、出資したお金が返ってきて、KIVAのように再投資ができる仕組みです。

学童保育は創意工夫により事業化できる領域であるため、ソーシャルファイナンスを活用することで「小1の壁」問題解決を図ろうと決心したのでした。

学童保育支援の想いと縁の大切さ

gift-oda-02写真:学童保育経営セミナーの様子。参加者同士で起業する等様々な化学反応が起きている。

sopa.jpはよく学童保育運営をしている団体だと認識されます。それはそれで事実なのですが、本当は、学童保育は第一弾で、ソーシャルファイナンスの仕組みを第2弾、第3弾と仕掛けて行きたいと思っています。

実は、ソーシャルファイナンスを保育分野で実現したいと方方で話をしていたら、SVPの仲間が、民間学童保育の立ち上げを成功した人が同じようにソーシャルファイナンスをしたいと言っているよ!と紹介してくれました。そういったいくつかの出会い・縁で、想いを同じくする仲間と活動をスタートすることができました。

これまで学童保育経営セミナーなど継続して取り組んできた中で、少しずつ色々なネットワークができ、今年は2つのエリアで学童保育の立ち上げ支援をしています。来年それが5個になり、再来年10個になり、、、と増やしていくことで問題解決を加速化することができると思っています。

血縁や地縁だけではない、想いでつながる社会

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sopa.jpの仕組みを使って作りたい理想の社会は、血縁や地縁だけではない、想いをベースにした人と人との縁で皆が応援しあえる社会です。

現在は、あらゆる世代で単身世帯が増加しており、個人で生きる社会になってきています。その前提にたって、個別に分断されている関係性を結び直し、お互いがお互いを応援しあえる様にしなければならないと思いました。

特に近年は、ソーシャルネットワークなどのおかげで、
そのつながりができやすい世の中になったと思います。

すでに人間関係があっても、なくても、困っている人がいればみんなで助け合う。
それが親がそうするのを見てきた中で、一番大切にしたいと思う私の信念です。

【団体プロフィール】
特定非営利活動法人sopa.jp

sopa.jpでは現在「小1の壁」問題解決に向けて活動をしています。子ども向けの保育や教育に関心のある方、ソーシャルファイナンスに興味がある方は、 sopa.jpからお問い合わせ下さい。