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鳥取県に住む高校生が、学校や地域の枠を超え、鳥取県の魅力を伝える旅行ツアーをつくり、実行するプロジェクト「高校生旅行社」が実施されています。
2017年の夏から企画がはじまり、12月に実際にお客さんを集めてのツアーも行われました。「高校生が旅行ツアーを企画」というユニークさから、テレビや雑誌の取材も行われ、注目度の高さが伺えます。
なぜ高校生旅行社の取り組みが生まれたのか。その狙いとは何かを、本プロジェクトをサポートする日本財団鳥取事務所の木田悟史所長に伺いました。
「高校生旅行社」の3つのねらい
高校生旅行社の狙いは3つあると木田さんは指摘します。
1. 高校生自身に地域の資源に気づいてもらうこと
2. 県外に地域の魅力を発信していくこと
3. 県内の一次産業を盛り上げること
1. 高校生自身に地域の資源に気づいてもらうこと
「高校生旅行社」という企画は、地域の魅力や資源に気づいてもらうことを目的に始められました。
鳥取に限らず、大学の進学等のタイミングで県外に出ていき、そのまま戻らないという人の流出が増える中で、高校生のときに、地域の魅力に気付くことで、鳥取の可能性を体験し、Uターンのきっかけになることを狙います。
実際にフィールドワークを通じて、自分自身で体験し、自分たちで伝えたい魅力を明確にし、ツアー企画を作ります。
このプロセスを通じて、鳥取の魅力を再発見できるというわけです。
2. 県外に地域の魅力を発信していくこと
地域の資源に気付き、発信するだけであれば、動画作成など他にも手段は数多くあるでしょう。ツアー企画になっているのは、鳥取県の魅力は、訪れることではじめて伝わるという思いがあります。
鳥取砂丘など、全国的に知られている観光スポットであっても、実際に訪れるとそのスケールに驚かれると思います。何かで知った気になっているというのは、とてももったいないと考えました。
高校生自身が地域の魅力を発見し、それをツアー企画にすることで、県外から旅行者を招き、地域の魅力を体験してもらう。そして鳥取を好きになってもらうというのが、この企画のねらいというわけです。
3. 県内の一次産業を盛り上げること
高校生旅行社の取り組みで、思いがけない効果も上がっています。それが、県内の一次産業を盛り上げることになったというものです。
地域の魅力を発見するために、高校生が県内各地の生産者の元を訪れ、話を聞き、農作業の体験等をする中で、生産者が若者と触れ合うことでやる気がアップしたのだといいます。
実際にツアーを通じて人の流れもできたことで、売上の向上にもつながっています。
「何がある地域なの」質問に答えられない悔しさ
高校生旅行社に参加した高校生は、6人。この取り組みへの参加を県内の高校生に呼びかけ、地域も高校もバラバラのメンバーが集まることになりました。
どのような高校生が参加しているのでしょうか。木田さんはあるひとりのエピソードを教えてくれました。
印象的なのは、アメリカに短期留学していたという参加者の方です。アメリカで自身が「鳥取県の出身です」と自己紹介したところ、「そこには何があるの」という何気ない質問に答えられなかったという経験をしたのだそうです。
その悔しさで参加してくれたんです。
6人の高校生が主役となっている高校生旅行社は、大学生や地域の方々によりサポートされています。特に、フィールドワークや、企画を考えるワークショップ等で、スムーズな場作りができているのは、このサポート部隊のおかげでしょう。
チームが伴走することで、主役となる高校生が全力で取り組めるというわけです。
地域の魅力を発見するために必要な「飛び込み力」
高校生旅行社の取り組みを見てみると、地域の魅力を発見する際に大事なことが見えてきます。
それは「飛び込み力」ともいえるもの。
フィールドワークを通して現場に行き、自分たち自身で体験し、何が魅力であったかを整理する。このプロセスを通じて得られるのは、地域にはたくさんの魅力が眠っているという実感です。
逆説的ですが、その地域に住んでいると、地域の魅力に気付くような体験ができなくなるということがいえるでしょう。なぜなら、日常を当たり前に過ごすためには、刺激に溢れていては疲れてしまいます。
あえて、知っている、わかっていると思うことで、新しい発見の視点をなくし、日々を過ごしているといえるのではないでしょうか。
そんな日常の過ごし方を突破するために必要なのが、「飛び込むこと」。高校生旅行社の企画でフィールドワークが様々な場所で行われたように、普段行かないところで、やらないことをやってみる。未知の分野の話を聞く。そんなことを続けていくと、新鮮な地域の魅力を発見し、自分自身がもつ地域のイメージを、自分から変えていくことにつながるのだといえます。
新たな魅力を発見し、新たな価値をつくる
高校生旅行社は、地域の魅力を高校生が発見し、高校生が旅行プランをたてるというユニークな取り組みです。
地域に、高校生目線を入れることで、新しい視点が提供され、それは新しい価値を作るきっかけになるはずです。
今回はじめて実施された1泊2日の旅行ツアーでは、口コミで参加者も集まり、最後は感動の涙まであったといいます。
地域の魅力はまだまだたくさん眠っていて、誰がどのように発見し、価値をどのように伝えていくのか。その余地はまだまだあるといえるでしょう。
そして地域の魅力は、発見した側の視点や価値も変えてしまうという側面があります。今回高校生旅行社を体験した6人は、顔つきが変わっただけでなく、鳥取への思いも増したはずです。
鳥取県の高校生旅行社の企画は、継続して実施するとされており、ここから今後どのような魅力的なプランが登場していくるのかに期待が集まります。
※高校生旅行社のプロジェクトは、日本財団の資金的な支援のもと、 アマゾンラテルナの貝本氏やNPO法人コトハナの協力のもとで実施されている取り組みです。