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「地方創生」の名のもとに、全国各地で様々な取り組みが行われています。移住定住に向けた取り組みや、地方経済活性化のための地元企業の支援や、地域産品のブランド化など、その取り組みは多岐にわたっています。
しかし一方で、地方創生の取り組みに対しての評価指標は存在しておらず、それぞれの取り組みを個別で評価するという状態となっています。
そこで今回、鳥取県と日本財団が共同で進める「みんなでつくる“暮らし日本一”鳥取県」のプロジェクトの一環で、「人と人とのつながりの豊かさ」に注目し、地方創生の評価指標を開発しました。
この取り組みは、慶應義塾大学SFC研究所(社会イノベーション・ラボ)と共同で実施され、地方創生の効果を高める環境づくりに活用されます。
「つながりの豊かさ指標」とは?
今回開発された「つながりの豊かさ指標」が開発された背景には、地方創生を考える視点において、資金がどう使われたとか、何か建物が建ったとか、モデルケースができたという以外の視点で、地方創生を考える視点が持てないかと議論したところから始まったと、日本財団鳥取事務所の木田悟史所長は語ります。
鳥取県と日本財団の共同プロジェクトが進むに連れて、県側と一緒に取り組む領域が増えていきました。
鳥取県と日本財団の共同プロジェクトが広域にまたがっているため、プロジェクト全体を包括して、何らか変化を見える化できる
ような仕組みがないかと考えたことがきっかけです。
鳥取県は、ボランティアへの参加率が高い県として知られ、全国第9位となっています(平成28年度社会生活基本調査)。中でも、「まちづくりのための活動」は全国平均の11.3%を大きく上回る18.4%で全国第3位となっており、まちづくりへの参加に積極的であることがわかります。
これらのボランティアへの高い関心と、地域活動が盛んであることを念頭に、自発的な協力活動が生まれる根底に人々の「つながり」があるとして、どのように実感されているかを調査し、指標化することで、今回の「つながりの豊かさ指標」が誕生しました。
「つながり要因」と「つながり度」を見える化
「つながりの豊かさ指標」を開発する調査はどのように進められていったのでしょうか。
まず県内の活動団体等へのインタビュー調査や新聞記事の分析を行い、得られた発言等を基に「つながり要因」として60項目に設定。
その上で、県民:3000人、NPO法人・広域的地域運営組織:388組織、行政担当者:鳥取県全域を対象にアンケート調査を実施。それぞれ、鳥取県全域に対して調査は行われました。
その結果を元に、今後の鳥取県において特に着目すべき「つながり要因」22項目(重要だと認識しているが実現度の低い項目)を抽出するとともに、これらの実態を具体的な数値として測定するための「つながり度」を目盛り化。
以上のような開発プロセスを経て、「鳥取県のつながりの豊かさ指標」が設定されました。
重視される「ソーシャル・キャピタル」とは何か?
今回の調査で重要視されているのが「ソーシャル・キャピタル」です。
「社会関係資本」とも訳され、アメリカの政治学者ロバート・パットナムの定義によると、人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる、「相互信頼」「ネットワーク活動」「互酬性の規範」という特徴をもち、グループや組織内で相互の信頼が高いほど自発的な協力関係が生まれるため、成果を実現する際の効率が高まるとされています。
ソーシャル・キャピタルの考え方を市民活動に用いると、「ソーシャル・キャピタルが豊かならば、市民活動への参加が促進される可能性」があり、「市民活動の活性化を通じて、ソーシャル・キャピタルが培養される」という好循環が生まれる可能性が指摘されています。
鳥取県のボランティアへの高い関心と、地域活動が盛んであることの背景には、豊かなソーシャル・キャピタルがあるという発想が、今回の指標づくりには用いられています。
日本は少子高齢化が進み、人口減少局面を迎えています。これにより、人の数が減ることで、出会い・交流の機会の減少につながり、人々のつながりや協力関係が希薄化・劣化していくことが懸念されています。
そのような環境のもとでの、ソーシャル・キャピタルを醸成し続ける仕組みを構築する必要があるといえ、今回の指標開発もその一環として捉えることができます。
鳥取県の「つながりの豊かさ」を取り組みに活かす
「鳥取県のつながりの豊かさ指標」で見えてきたものは、どのようなものなのでしょうか。
まず明らかになったのは、6つの強みと魅力です。今回の調査では、対象を「県民」「NPO 法人・広域的地域運営組織」「行政担当者」としており、これら3つの属性すべてで、「重要であり、実現している」と回答があったものが6つの項目です。
(1)自然を感じながら暮らしを営める地域であること
(2)住んでいて愛着を感じられる地域であること
(3)地域の人と適度な距離で付き合える地域であること
(4)知らないことがあれば、教えてくれる人がいる地域であること
(5)困ったときに周りの人に頼れる地域であること
(6)想いを共有する仲間がいること
一方で、重要度と実現度を組み合わせて“期待度”を算出すると、2つの項目が浮き彫りになりました。
(1)子どもたちに『帰ってこい』と言える地域であること
(2)がんばる若者を応援すること
これらの項目は、誰もが重要と考える一方で、実現していないという状況にあるものです。
客観的な指標を注力する分野決定に活かす
この結果を受けて、
まずは現状が明らかになったと捉えています。ここから深掘りしていくのが次のステップだと考えていて、なぜそう言えないのか、どう応援する取り組みができるのかなどを考えていきたい
と木田さんが語るように、今後の展開としては、鳥取県と日本財団による共同プロジェクト全体や個々の取り組みで評価軸として活用することが想定されています。
特に、調査で明らかになった重要視されている項目である、子どもたちのUターン支援や、若者への支援などに注力していくことが期待されます。
既にこの指標を地方創生戦略に取り入れるという自治体も現れており、客観的に現状を把握し、取り組みがどのような評価となるかが明らかになるため、感覚や思い込みによる無駄な施策を是正することにもつながるといえます。
今回開発された「つながりの豊かさ指標」を活用することで、各地域の現状に即した「つながりの豊かさ」や「ソーシャル・キャピタル」の醸成と維持向上が期待され、それらは豊かな地域、ひいては豊かな日本をつくっていくことにつながるでしょう。
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