福井県の伝統工芸のひとつである越前漆器。
その歴史は、1500年にも及びます。
伝統的な木地製作、手塗り、加飾という分業体制を維持し、今に伝わっています。
減っていく作り手。絶滅の危機

伝統工芸は年々規模を縮小している(※出典:伝統的工芸品産業振興協会)
越前漆器は危機を迎えています。
例えば、漆器に絵を施す「加飾」を担う「蒔絵師」と呼ばれる人たちは、25名しか存在しません。
若手と呼ばれる方の年齢も50代後半になってきており、将来的に産業そのものがなくなる危機に直面しています。
全国的に見ても、担い手の高齢化・職人不足が、深刻な課題のひとつとして数えられています。
「知ってもらう」ことから始まる伝統産業の応援

森田さんは仕事の傍ら、福井の伝統工芸を取材している
「伝統工芸のことが全然知られていないと気付いたんです」と語るのは、東京で大手通信会社に務める森田裕士さんです。
蒔絵師の父親の元で育ち、伝統工芸はいつも身近にあったと言います。
福井県に息づいている多くの伝統工芸は、未来につなぐために様々な取り組みが行われています。
職人の一人ひとりはもちろん、販売する方や宣伝する方も、思いを持って取り組んでいらっしゃいます。
その姿が、福井を出た途端にまったく知られていない。
その状況を変えたい。まず知ってもらうところからスタートしようと決めました。
百聞は一見にしかず。訪れる人を増やす
森田さんが注目した「動画撮影」です。
福井県の映像を調べてみると、「移住・定住促進」「観光スポットPR」などの映像は見つかります。
しかし伝統工芸や作り手に注目したものはないんです。福井といえば、伝統工芸の職人たち。
そんなふうに思っていただきたいんです。
映像を選んだ理由は、「伝わる力が段違い」だからだといいます。
福井は、晴らしい職人や技が息づく県だということが見ただけでわかるようにしたいんです。
そして驚いてほしい。驚いたら訪れてみたくなるはずです。そして実際に触れて買ってもらう。
それが、蒔絵師の息子として、恩返しできることだと思っています。
森田さんは、制作費用を募集するためにクラウドファンディングを実施中です。
越前食器がお返し品として準備されており、実際に触れて使えるようになっているのこともポイントです。
伝統工芸を未来に伝える新しい挑戦が始まっています。