秋田県五城目町に、「一人ひとりが人生の指揮を執り、関係性のなかに自分を位置づけ、未来を共創していく世界をつくる。」というビジョンを掲げる教育ベンチャー「ハバタク株式会社」があります。
地域に根ざしたベンチャー起業家を育成するプログラム「ドチャベン・アクセラレーター」の仕掛人です。
秋田県五城目町を拠点に、ハバタクラボを運営する丑田俊輔さんと、NPO法人まちづくりGIFT代表の齋藤潤一さんが「地域ビジネスの育て方」をテーマに対談を行いました。(以下、敬称略)
起業家が地域に集積するハブを創る
齋藤:秋田の五城目町を拠点にするきっかけはあったのですか?
丑田:2年前の春にはじめて訪れました。
ハバタクを立ち上げて5年になるのですが、全国の学校と海外を行き来する仕事をする中で、五城目を訪れる機会がありました。
丁度いま拠点としているこの学校が廃校になるというタイミングでした。
そのときに、とにかく熱い役場の人がいて、起業家が地域に集積するハブにしたいという思いを語っていて、面白いなと思ったんですね。
地域に根ざしたライフスタイルを楽しみながら、内発的に仕事を創っていくことに可能性を感じました。
ビジネスと地域が両輪で動いていく感覚
齋藤:面白いですね。地域×ビジネスの可能性を感じたのはどのあたりなのですか。
丑田:2004年、東京都千代田区の公共施設を活用してビジネスをインキュベートする「ちよだプラットフォームスクエア」の立ち上げ期に関わった際、地域内で思いをもった人や起業家同士がコ・ワークして、「ビジネスのインパクトと、地域社会へのインパクトが両輪で動いていく」という原体験をしました。
地域に根ざしたベンチャーを育成する困難さ
齋藤:今年、宮崎スタートアップバレーという取り組みを始めました。
「宮崎を世界一チャレンジしやすい街にする」を掛け声に、ローカルベンチャーを育てる取り組みです。
実際やってみると、大変だと考えています。
情熱がある人たちは、がんばるパワーがあるので、誰か一人でもロールモデル(成功事例)を作って、相互に助け合い、動きやすい環境を作っていくことが大事だと考えています。
いますぐ、誰にでもベンチャーを、というのは考えていないんです。
丑田:少しネジの外れた起業家人材がまちを舞台にチャレンジすることで事業と気運が生まれ、アントレプレナーシップが感染していく、といったイメージを持っています。
震源地は、地域に代々暮らしてきた人、外来種の移住者、地域出身で都会や世界で活躍している人たちの合わせ技で。
齋藤:まず最初のモデルケースをつくって、その人たちが雇用を生み出せるようになると、その中で修業するということもできるようになります。
丑田:そうですね。突破口となるベンチャー群が立ち上がって、そこで協働したり関わっていく中で、事業の大小に関わらず、小商いから成長ベンチャーまで、自ら地域で仕事をつくっていこうという人が増えていったら嬉しいです。
単に東京に売ろう、ではかなり難しい。
齋藤:ローカルベンチャーを増やすには何が必要でしょうか。
丑田:何より「人」が一番大事だと思います。
ご縁が重なり合い、一人一人が人さらいになることで起業家人材が集まり、共創を楽しみながら育っていくことだと思います。
齋藤:ローカルベンチャーは、「お金になりにくい」という罠がありますね。
東京に向けて売れば良いという話もありますが、レッドオーシャンですからね。
丑田:やり方にもよりますよね。6次産業化のようにどストレートな地域ビジネスも大事と思いますが、単に東京に売ろう、ではかなり難しい。
また、わかりやすい地域資源ドリブンではない事業づくりのアプローチもよいと思います。
地域資源のストーリーで勝負せよ
齋藤:インターネットのおかげで、勝負の場はフラットになったと思います。地域資源をもっている方がむしろ強いかもしれません。
丑田:そうなんですよね!地域の付加価値を単純に比較できないからこそ、文化や人やつながり、物語が力強いパワーになります。それは主観的な価値だけれど、世界中にファンが生まれるかもしれない。
グローバルなコモディティ競争とは違うレイヤーで戦うこともできる。
ただ、「物語があるから」ではもちろんダメで、「いいものをつくる」、そしてそれを継続して、売っていくというのが何をするにも前提です。
長く続く良いビジネスをつくることができるチャンスがあると思います。
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□寄稿:オカダタクヤ