宮崎県新富町を拠点に、地域経済の創出に取り組み、多くのメディアからも注目されている「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(こゆ財団)」。2017年4月の設立以来、「特産品販売」や「起業家育成」などを行っています。
そんなこゆ財団が「地域の資源を活用し、地方でも稼ぐ方法を語り合う」というテーマのトークイベントを、2018年8月10日に東京の『SENQ(センク)京橋』で開催しました。
今回は、こゆ財団のメンバーに加え、こゆ財団代表理事で地域プロデューサーの齋藤潤一さん、そして、宮崎県新富町の小嶋崇嗣町長が登場し、新富町やこゆ財団の取り組みについて紹介してくれました。
「世界一チャレンジしやすい町」を目指す、新富町
イベントでは、まず、宮崎県新富町の小嶋崇嗣町長が登壇。小嶋町長は2018年3月に就任したばかりで、現在44歳。宮崎県内で一番若い町長です。
就任当初から掲げている目標が、新富町を自立した町にすること。職員も町民も、自分で考え自分で判断し、行動していく風土を作ることを目指しています。
小嶋町長は大学卒業後、ニューヨークでの生活などを経て、26歳で新富町に帰ってきたUターン組です。新富町に帰ってきたばかりの頃、周囲の人々が「新富町がつまらない」と言っていることに、違和感と反発を覚え、31歳で町議になり、新富町の町づくりに関わるようになります。
小嶋町長はニューヨークにいた時に、自分で目標を決めて、努力をすることで「なりたい自分になれる」ことを体感して、チャレンジすることの重要性を感じ、政治の道に入ったそうです。
海外でのご自身の経験から、誰もがチャレンジできる「世界一チャレンジしやすい町」にしていくことを理念に町政を進めています。
地域づくりは「笑顔とお金」
続いて登場したのが、こゆ財団代表理事であり、地域プロデューサーの齋藤潤一さん。齋藤さんは、シリコンバレーのITベンチャーで勤務した後、東日本大震災を機に地域づくりに人生を捧げることを決意。宮崎県を中心にソーシャルビジネス創出事業に従事しながら、慶應大学でソーシャルビジネスの授業も受け持っています。
ビジネスの仕組みを地域に入れることで、日本本来の魅力ある地域づくりに取り組んでいる齋藤さんは、地域づくりに大事なのは「笑顔とお金」だと語ります。お金だけでもだめ、笑顔だけでもだめ、人が歪み合わない街にするには、そのバランスを保つことが大事だそうです。
そのために、メルカリやユニクロのような大きな企業を作るのではなく、人間中心で、小さくても持続可能なビジネスを目指しています。小さなビジネスの集合体、例えば、年商1000万円の事業でも、100事業あれば100億円になるのです。
地域ビジネスの創出のコツ
齋藤さん曰く、地域ビジネスのコツは「ワクワクする」こと。ワクワクできるぐらい自分の好きなことなら、誰かに指示されなくても自然に動き出すことができるので、継続したビジネスを作ることができます。
そして、現場で起きている目に見えない地域の課題を発見すること。地域にとって必要となるビジネスを作ることは必要不可欠ではないでしょうか。
もう一つは、リスクの高い補助金を使わず、自主財源で運用できるようにすること。齋藤さんは、クラウドファンディングなどを活用しながら、外部資金に頼らない取り組みを進めています。
失敗を恐れない精神を持つ
地域づくり取り組むポイントは『1勝99敗』の精神だと話す斎藤さん。せっかく思いついたアイディアでも、失敗を恐れ、実行しなければ意味がないですよね。
たくさん地域の声を聞いて問題を発見し、構想を練り、速くトライしていくことが、結果的に地域づくり成功につながるそうです。実際、こゆ財団のメンバーも、日々数々のトライ&エラーを繰り返しているそうです。
人を育て、地域を育てる
失敗を恐れずチャレンジするという理念に基づき、新富町のふるさと納税の納税額を4億円から10億円に引き上げたり、1粒1000円のライチのブランディングを成功させたりと、注目を集めている「こゆ財団」。
こゆ財団が目指しているのは雇用の創出です。持続可能なビジネスを実現するためにも、稼いだお金を町に還元するのは大切なこと。こゆ財団では、雇用の創出のための教育にも力を入れ、起業家育成も行っています。起業家が育てば町が潤い、そしてどんどんビジネスが拡大していくというわけです。
現在、同財団では新富町をさらに活性化させるため、10社10事業にて人材を募集しています。応募者へ向けて約束することとして、
- 失敗の責任は一緒に取る
- ワクワクすることをしてほしい
- 最高のメンバーと仕事ができる
という三つの条件を掲げています。こゆ財団には、宮崎県へのUターン、宮崎と縁もゆかりもない2拠点居住者、大手広告代理店を辞めて移住された方、宮崎県の職員からジョインされた方など、背景の違う様々な方が在籍しているので、一緒に過ごすだけで刺激になりそうです。
失敗を恐れず、夢を大きくもつ
最後に設けられた質疑応答では、たくさんの質問が上がりました。
「失敗を恐れず、どんどん行動をする」という話が印象に残った方が多いようで、「良い失敗と悪い失敗はどう違うのか?」「大きな失敗の規模はどのぐらい?」「このプロジェクトが失敗だと見極めるタイミングは?」という失敗に関する質問が多く寄せられました。
齋藤さんは「失敗に良いも悪いもなく、諦めた時が失敗です。一番大事なことは心が折れないこと。こゆ財団としては、新富町の皆さんと事業者の皆さんが失敗しても守れるセーフティーネットになることを重要視している。」と答えていました。
そして、最後に「5年後のこゆ財団、新富町はどうなって行きたいのか?」という問いに対しては、「2025年までに教育と産業がしっかりしている町にすること。新富町で、農業・アグリテック分野の上場企業を生み出し、雑誌の表紙になって取材が殺到する町にする!」という目標を掲げてくださいました。
聞いているだけでも、ワクワクする目標ですね。
人間中心の地域づくりを目指す
小嶋新富町長のお話にもあったように、自分の地元のことを「つまらない」と思っていても失敗を恐れ、新しいことにチャレンジできない風土の街というのはたくさんあると思います。
筆者の私自身も地方在住を経験し、保守的な空気の強い街や企業を経験し、違和感を覚えてきました。ワクワクしながら、稼ぐことが大事だという今回のお話は、ローカルベンチャーに興味のある方にとっては、大変参考になったのではないでしょうか。
地方でチャレンジしたいけど、どこで何をしたらよいのか、まだ具体的に決めていないという方は、こゆ財団の新事業募集を選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか?