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宮崎県のほぼ中心部に位置する新富町。このまちは、国内にわずか1%しか流通していないという貴重な国産ライチの生産地として注目されている。
その理由の一つが「楊貴妃ライチ」。行政にはできなかったスピード感のあるまちづくりをするために2017年4月に町が設立した地域商社「こゆ財団」が、ライチ生産者とタッグを組んで作った国産ライチのブランドである。
高い希少価値を生かしたブランド展開で、新富町の国産ライチは東京・銀座の高級フルーツカフェや、割烹店などに食材として採用されているほか、ふるさと納税でも予約注文が集中。50g以上の大玉を集めた「楊貴妃ライチPREMIUM50」(2018シーズンより展開)は、収穫前にすでに受付を終了するまでになっている。
さまざまな課題を抱える農業において、特産品が持つ高い価値を磨き上げ、ブランディングによって市場の支持を獲得していくのは決して簡単なことではない。楊貴妃ライチの場合、どんなクリエイティブでそこにチャレンジしたのか。ロゴデザインやアートディレクションを手がけたクリエイター・増田悠太朗さんに聞いた。増田さんは東京都生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後にデザイン事務所「ミニマムデザイン」を設立し開業。CI/VI制作やブランディングを中心としたグラフィックデザイン全般を行っている。
ブランディングで大切な2つのこと
−ブランド「楊貴妃ライチ」のロゴが生まれた経緯について教えてください。
まず、ロゴを考えるにあたって、ブランドネームである「楊貴妃」とライチとの親和性を大切にしました。
楊貴妃は、中国・唐の時代の妃様ですよね。その背景に着目し、フォントも中国のものを使いたいと考えた結果、選んだのは欧体楷書でした。これ、唐の時代の文字をベースにして作られたフォントなんですよ。
ロゴで使用するフォントを考える際も、背景・ストーリーは重要だ。それについて、更に掘り下げて増田さんにお話を伺った。
ブランディングでは背景・ストーリーが重要
−見た目ではなく、背景・ストーリーも考慮されたのですね。
そうです。欧体楷書は、唐の時代の書家・欧陽詢(おうようじゅん)という人の書をベースにしているそうで、楊貴妃と親和性が高いと感じました。きっと、当時も同じテイストの文字で楊貴妃と書かれていたのではないかと思います。
−ロゴには赤色の印判もあしらわれていますね。
もともと、ぼくはライチの色を黒ずんだ茶色だと思っていました。冷凍品のライチの色です。ところが初めて見た新富町の国産ライチの写真では、鮮やかな赤色をしていました。これがとても衝撃で、ロゴでもこの色を引き立たせることが、生ライチのイメージにつながるのではと考えました。
最初に文字だけで作ったロゴはちょっと弱かったのですが、ワンポイントの赤い印判を入れることでアクセントが生まれました。
ロゴデザインのポイント
−こうしたデザインを手がける際に意識していることはありますか?
デザインは目に見える形を作る仕事なので、かえって誰が作ったかわからない「匿名性」が大事だと思っています。デザイナーの個性や色を入れたりせず、変にデザインを目立たせないこと。商品であればそのもののよさに注目できるようにすることが大切だと思いますね。
−ブランド誕生から1年が経ちますが、どんな想いですか?
お客様に1玉1,000円という価格を納得していただけるだけの価値を出さないといけなかったわけですが、結果としてブランドはたくさんの方に受け入れていただくことができました。
実はつい先日、新富町で収穫が始まったばかりのライチを食べたのですが、まず大きさに驚きましたね。そして味。サイズが大きいと大味になるのでは、と思いましたが、とてもしっかりした味で、瑞々しかったです。
ブランディングで大切なバランスとストーリー
−地方の特産品のブランディングに関わることで見えてきたものは?
古民家のリノベーションはトレンドですが、一方で東京住まいの人の目で見たとき、地方にはあえてそのままにしていたほうがいいように感じるものもあります。
ブランディングやデザインをするとき、大事なのはそのバランスですね。どこを残して、どこをカッコよく変えるのか。地元の人には古いものでも、初めて知った人にとっては、知らない過去は未来なわけで、逆に新鮮だったりするんですよ。
−それは面白い視点ですね。
そうですね。活かせるものは活かしたいなと思います。
それと、新富町の新緑園さんというお茶園を訪れ、茶畑でお茶の説明を聞く機会があったのですが、お茶にまつわるストーリーを知っているのとそうでないのとで、飲んだお茶に対する感じ方が明らかに変わると思いました。
−どんな説明を受けたのですか?
例えば、「お茶は黒い布をかぶせることで甘みが増す」というお話があったのですが、それを知って飲むと甘みの感じ方が変わります。聞かずに飲んだらきっと「あーおいしいねー」だけになる。
お茶は一つの例ですが、おそらくぼくたちの暮らしの中に当たり前のようにあるものの中には、実はまだまだ価値が伝えられるものがいっぱいあるんだと思います。
ブランドづくりでは、なぜを追求する
−「なぜそうなのか?」という問いとその答えを知ることで理解が深まるわけですね。
はい。新富町には古墳群があるのですが、なぜここに古墳がいっぱいあるのかを知ると、行った時の感動は増すはずです。感じ方のレベルが一段階も二段階も変わる。
地方には、ウェブに詳しいことが載っていない「人」や「モノ」って、まだまだありますよね。すごい努力をされている農家さんしかり、特別なものをつくりつづけている職人さんしかり。地方には、工夫次第でまだまだ伝えられることがある。
「楊貴妃ライチ」のように、ぼくはそれをデザインという手段で伝えられるようにしたいなと思います。
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