宮崎県児湯郡(こゆぐん)新富町で、明治時代から続く酒店「伊藤酒屋」。その五代目店主である伊藤寛人さんが、町にある天然記念物の梅の実を使った梅酒をつくるプロジェクトをスタートさせた。
天然記念物の梅で梅酒づくり
これは、寛人さんが3年ほど前に着想したもの。寛人さんは全国の酒蔵を自らの足で直接訪ね歩き、酒造りにかけるさまざまな思いに共鳴してきた中で、他県で地域を元気にしたいと行動する同業者に刺激を受けたという。
素晴らしい活動をしている人ばかりで、自分にも何かできないか、生まれ育った町に貢献できないか、と思うようになりました。
着想していたアイデアは、2017年に皆の知るところとなる。同年5月~8月にかけて、全6回にわたって開催された起業家育成塾「児湯シータートル大学」。
その受講生として参加した寛人さんは、受講しながらアイデアを醸成し、8月に開催された最終プレゼンテーションで天然記念物の梅を使ったプロジェクトについて発表。多くの参加者から「ぜひ実現してほしい」という励ましの言葉もいただいていた。
そして今年、いよいよ梅の収穫時期に突入。
プロジェクトの発表から半年以上をかけて待った5月、天然記念物の座論梅がついにその実をたわわに実らせた。収穫したのは寛人さんと智美さん。
梅の実は80kgを収穫できました。収穫した日は毎年一度、上新田小学校の子どもたちが座論梅の梅を集める日として定められていて、そこに混ぜてもらうかたちで収穫ができたのは本当によかったです。
寛人さんは、念願のかなったうれしい声を上げる。
※天然記念物・座論梅とは
昭和10年に国の天然記念物に指定され、推定樹齢600年といわれる梅の古木。宮崎の巨樹百選にも登録されている。
寛人さんによると、もともと天然記念物である梅の木の実を活用するのはハードルがあったが、こゆ財団の特産品開発事業として進めることで実現性が増し、新富町役場からゴーサインが出たとのこと。
100本分の梅酒づくりにチャレンジ
今回収穫した梅は、720mlサイズで100本分の梅酒ができる予定という。
座論梅の梅酒は小ぶりでタネが大きく身が小さいので、梅酒をつくるにはサイズなどがまだ物足りない状況だが、とりあえずやってみることを優先しました。座論梅は町の名所なので、梅酒も町の名物になるといいなと思います。
現在のところ、梅酒は2018年12月~2019年1月ころに完成予定。5年ほど前からつながりのある大山食品(綾町)に醸造を依頼。
気軽に相談でき、小ロットにも対応してくださることから、今回の依頼につながりました。お訪ねしたところ、面白そうだね!といい反応をいただいたことも依頼につながっています。
いろいろな人の縁をつなぎながら実現に向かっている梅酒プロジェクト。利益が出た暁には一部を梅の木の管理費にあてたいと寛人さんは語る。新富町の新しい名物の誕生なるか。