きれいなエネルギーは好きですか。
東日本大震災以降注目されているのが、再生可能エネルギーです。中でも、日本の森林資源を有効活用する方法のひとつとして、木質バイオマス発電があります。
日本は、どこを見渡しても山があり、森がある森林大国です。そしてその多くの森は、かつて人の手で造林されたもので、人が手を入れなければ荒れ果てていくことがわかっています。
日本の森林資源の有効活用をめぐって、いろいろな取り組みが始まっています。
日本は森林資源大国。その活かし方は?
日本の森林資源はどれくらいあるのでしょうか。そのときの指標になるのが「森林蓄積」という指標です。これは、「森林を構成する樹木の幹の体積」のことで、現在約60億立方メートルあると算出されています。
森林面積は、日本の国土の約7割=約2500万ヘクタールで変わっておらず、森林蓄積がどんどん増加しているのが現在の森林の状況です。
つまり、かつて造林した木々が育ち、十分に使える木材となる状態になってきたのがいまの日本の森林の状況というわけです。
ヨーロッパの森林先進地域である、ドイツやスウェーデンと比較しても抜きん出ており、それぞれ34億立方メートル、30億立方メートルとなっています。これらの地域のおよそ2倍の森林資源を日本は有しているといえます。
木材加工と発電施設の一体化
日本の森林面積の第3位を誇るのが、長野県です。県土の約78%を森林が占める森林県である一方で、県内での木の消費量はとても少なく、大きな課題となっています。
林業が衰退してしまったからだということは多くの人が認識を同じくするところですが、その弊害はあまり話題にあがりません。植林された人工林は、人の手が入らなければ荒廃していき、土砂崩れなど、様々な悪影響を招いてしまいます。
そこで求められているのは、森林資源の積極的な活用で、しかもそれがお金になり、産業になるという状態です。
長野県と塩尻市と大学と民間が連携
「木を育て、活用し、また育てる」という発想のもと、森林を重要な地域資源として位置づけ、産業化と健全な森林の育成を行おうという取り組みが始まっています。それが、長野県塩尻市で取り組まれている「信州Fパワープロジェクト」です。
県内の木材を集約し有効活用
「信州Fパワープロジェクト」は、長野県のほぼ中央に位置し、かつてより交通の要所として栄えた塩尻市に、木材加工場と木質バイオマス発電所を設け、一体となって森林資源を活用しようという試みです。
信州Fパワープロジェクトの「F」は、「Forest(森林)」「Future(未来)」「Factory(工場)」の3つを表しているのだそう。
長野県、塩尻市、民間企業、大学が連携し、戦略的な取り組みが行われています。
木材を集約し、無駄なく出口をつくる
なぜ木材加工場と木質バイオマス発電所を一体化して作り、運営する必要があるのかといえば、無駄なく有効活用することに尽きます。
木材はすべてが均質ではありません。例えば、真っ直ぐで曲がりが少ない木は、建材に加工されます。製材の際に出るオガ粉は、固められ、木質ペレットに加工されます。
これらはそれぞれ製品として流通します。
一方で、曲がっていたり小さかったりで建材として使えないものや、製材の際に出た端材は、木質バイオマス発電の燃料として活用されます。
それらがバラバラの場所で、バラバラに加工されるとどうなるでしょうか。木質ペレット化の手間や、搬送の手間などで、それぞれお金にならないと判断されて捨てられてしまうことになります。
つまり信州Fパワープロジェクトのポイントは、集約することで、森林資源の出口を明確にしたこと、そして一体的に処理することでコストを抑え、森林資源を有効活用すると共に、産業として成り立つようにしていることだといえます。
再生可能な資源としての森林活用
このプロジェクトは、地域雇用の面でも注目されています。試算では、素材生産や、運搬、発電施設など、関連するそれぞれの仕事が生まれることで、年間400人の新規雇用が増えるとしています。
経済効果も、20年間で少なくとも500億円を見込むなど、地域資源を活かした産学官連携の地域振興策としても注目を集めます。
かつて森林は、建材としての活用が見込まれた再生可能な資源でした。しかし海外産の木材の増加や担い手不足により、衰退の一途を辿ってきました。しかし、建材として以外の利用方法や、エネルギー資源としての注目から、21世紀の重要な資源として位置づけられています。
信州Fパワープロジェクトが、森林資源活用のモデルケースとして注目されることで、持続可能な新しい森林資源の活用が全国で広まることが期待されます。