By Mutimaro – Mutimaro本人が撮影 (Pictured by Mutimaro), CC 表示-継承 3.0, Link
少子化により、多くの人が母校を失っている。私も、その1人だ。
文部科学省の発表によれば、平成14年度から平成27年度の間に、全国にあった公立の小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校の内、なんと6,811校が廃校している。
学校の消失が地域に与える影響は、大きい。私の故郷でも、小学校が廃校したことで、子どもがおらず地域内の活気もなくなり、授業やクラブ活動で取り組んでいた伝統文化(地域の名前が付いた太鼓演奏)も伝承が難しくなった。
東北最大の都市である宮城県仙台市でも、一部の地域では、既にそんな危機が間近に迫っている。
100万人都市・仙台の地域格差
恐らく、多くの人が想像するより、仙台市は広い。東京23区の約1.3倍の広さに約108万人が住むが、その人口の分布には大きな偏りがある。
仙台市全体でみると、順調に人口は増え続けており、減少傾向に転じるのが平成32年頃だと言われている。しかし、東北自動車道より西側に位置する仙台市の西部地区では、既に少子高齢化がかなり進行している。
仙台宮城インターチェンジのすぐ近く、約30年前に仙台市と合併した旧宮城町では、地域内の格差も激しい。インター付近では、ファミリー層を中心に人口が増えて商業圏が形成されている。
その一方で、高速の出口から30-40分ほどの地域になると、既に小学校の児童数は100人を切っている。
仙台で廃校危機の学校も
By Crown of Lenten roseだと推定されます(著作権の主張に基づく) 投稿者自身による作品(著作権の主張に基づく), CC 表示 3.0, Link
全国的にも有名な秋保温泉や作並温泉を有する地域が、それに該当する。この辺りは名湯が多く存在し、2016年には「G7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議」が秋保温泉にある宿「佐勘」で開催された。
その近くにある湯元小学校の児童数は全校82名、付近にある秋保小学校は全校48名、更に近隣の作並温泉にある作並小学校に至っては全校18名で、一学年が数名しかおらず、少子化が危機的な状況だ。
開湯1000年を超えるような歴史ある温泉宿が存在する地域資源の豊かな地域でありながら、人口減少は加速している。
どう人口減少と向き合う
仙台市は、このような状況を受け、人口減少と超高齢化社会への対策として、交流人口の拡大と持続可能なまちづくりを目指し、「仙台市郊外住宅地・西部地区まちづくりプロジェクト」を立ち上げ、実施している。
今までにない新たな手法や発想をもとにチャレンジする人を応援するため、具体的に取り組む事業に対して補助金を交付している。
上限3,000万円(事業期間が複数年度の場合も同じ)で、補助対象経費合計額の4分の3以内と指定されている。
補助金漬けでは解決できない
このような行政が支援する事業において、心配されるのが「補助金漬け」で結局に事業が終わった後に何も残らないというケースだ。
このような地域事業は、補助金が参加者の手間賃などで支払われ、一時的なイベント開催や物を作って終わるという過去の歴史がある。
仙台市としてもその点に憂慮し、応募要綱に「対象とならない事業」という項目を作り、「事業補助の終了後において、事業の継続性が期待できないもの」は対象として認めないと明記している。
地域課題の解決に必要な熱量
問題は、このように開始した事業をどのようにして持続可能なものにするのかという点にある。
一番大きなポイントは、住民自身がどれだけ本気で、自分の暮らす地域の課題と向き合い、その問題解決に有効的な「投資」をすることができるかどうかだ。
補助金をもらうためではなく、自分と次世代が、大切な地域の中で生きていけるか。その瀬戸際で、東北人はその熱量を試されている。
参考資料
「廃校施設活用状況実態調査(平成29年1月12日)」文部科学省
「統計情報せんだい(2018年1月12日)」仙台市
「市立小学校児童数一覧(2017年6月1日)」仙台市