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“志”を語り合う場を創りたい。地方都市で模索するベンチャーの在り方

“志”を語り合う場を創りたい。地方都市で模索するベンチャーの在り方

    CATEGORY: AREA:静岡県

静岡県西部にある人口約80万人の政令指定都市・浜松市では、今年、自治体主導でもなければ大手企業主導のアクセラレータ・プログラムでもない文脈で、スタートアップのコミュニティが始動しています。

その名は「Hamamatsu Venture Tribe」(ハママツ・ベンチャー・トライブ、以降HVTと記載)。

発起人である株式会社NOKIOO代表の小川健三氏にお話をうかがいました。

浜松に静かに湧き上がるスタートアップ熱

スタートアップの街づくりに積極な地方都市と言えば、福岡市や大阪市がイメージとしてあがるかもしれません。

実は、ここ静岡県浜松市でも静かに、そして確実にスタートアップの熱が湧き上がってきています。

実際、経済産業省主催する人材育成プログラムには、初年度の2015年にリンクウィズ株式会社代表の吹野 豪氏、2016年に株式会社SPLYZA代表の土井 寛之氏が選出されて、米国シリコンバレーへ派遣されています。

地方都市におけるベンチャー企業の存在

自分達NOKIOOが成長するためにも、本気で!本音で!考えや志を語り合える場が必要になり、この“出世の街浜松”において“集団出世”を目指すためにHamamatsu Venture Tribeを立上げました。

吹野氏や土井氏らと共に地元に新たなコミュニティを立ち上げた小川氏はHVT立ち上げの目的をこう語ります。

小川氏が起業したのは2011年4月。当時は重厚壮大な理念や志を掲げて起業したわけではなかったと振り返ります。

起業してから3期目~4期目となった頃「なぜ自分はNOKIOOを経営しているのか?」、「社員達にどうなって欲しいのか?」、「事業を通じて何を実現したいのか?」と、経営者としての壁にぶつかり暗中模索する中で行き着いたのがビジネススクール(経営大学院)でした。

志を真顔で話せる仲間との出逢い、そして、その場で自分自身に起きた思考や価値観の変化を感じ取った小川氏は、自分達ベンチャー企業にとっても、地元“浜松”にとっても必要な環境に気付きます。

ヒトもおカネも限られる地方都市では、人との出逢い方も、人の成長の仕方も、首都圏のベンチャー企業のサクセスストーリーとは異なるのではないかと考えています。
優れた学歴や職歴があるわけでもないごくごく普通の人が、悩みながらも成長するモデルが、地方におけるベンチャー企業の在り方ではないかと模索しているところです。

米国の心理学者マズローの欲求5段階説の最上位にある、人の「自己実現欲求」。

刺激の多い首都圏と比べて、家庭と会社を往復するだけの地方都市の生活には、「自分の能力を引き出して自己実現を果たしたい」と考える人に応える環境は少ないのかもしれません。

地方に根を下ろすベンチャー企業として、同時に、時代の潮流を理解すべき経営者として、どう在りたいかを考えた小川氏は、その悩みを共有できる浜松のベンチャー企業経営者の同士と共に今年の8月にHVTを始動しました。

地方都市のベンチャーに必要なのは支援ではなく“志”の縁

NOKIOOはまだまだ激動期。だからこそ、その情熱を社内外へ共有できる場が必要と話す小川氏、

HVTは、安定期に入った先輩ベンチャー企業が後輩ベンチャー企業を指導する為の仕組みではなく、むしろ激動の渦中にいるベンチャー企業同士が、今まさに現座進行形で体験している悩みや苦しみも共有し、咤激励し合い、そして共に切磋琢磨するための環境です。

好景気でも不景気でも変わらずに、誰もが生き生きと働き、自分達が大切にする志や理念を常に心に抱きながら事業に臨む経営を『ビジョナリー経営』あるいは『理念経営』と表現します。

HVTに集う浜松のベンチャー経営者達が目指すのは、志を本気で!本音で!語り合い、自分達の事業において『理念経営』を実践するための“縁(繋がり)”を得ることではないでしょうか。

浜松という一つの地方都市に、新たなベンチャー・エコシステムが生まれようとしています。

寄稿:秋間 建人