前編に引き続き、桜井甘精堂代表の桜井昌季さんと、NPO法人まちづくりGIFTの齋藤潤一さんの対談の模様をお伝えします。
小布施のファンを作る町づくり
齋藤: 人口減少の中で、町の規模は小さくならざるを得ません。
その中で、小布施町は、交流人口を増やすということを言っていますよね。
桜井: 小布施町全体で、「観光の町から交流の町へ」ということを言っています。
小布施のファンを作ろう、交流する人を増やそうということですね。
観光客を増やそうというよりは、小布施を好きな人をたくさん作って、たくさん触れ合おうというのが趣旨です。
小布施の強みは大人の態度
桜井: 小布施の魅力ってなんだろうと考えた時に、ひとつ思いついたんですよ。
若い連中はいろいろなことをやりたがるんですけど、じいさん、ばあさんがそれを止めに入らない。
「またやってる」とか言いながら、協力するとまではいかないんだけど、見てくれているというのが小布施の強みだと思いますね。
齋藤: 若い世代が活躍しだしたのは最近ですか。
桜井: そうですね。ここ5年くらいで活発になってきています。
しかし小布施町全体でやろうぜという感じではまだないですね。
動き出している人は、総量としては少数だと思います。
まだまだこのままの小布施町でいいじゃないかという人もいます。
早く動き出せば、変わる
桜井: 現実的に、観光地としての小布施町は陰りを見せているという部分はあるんです。
観光客も減少しています。
でも、まだまだ小布施町は他から憧れられる部分もあるわけです。
取り返しがつかなくなる前になんとかしようとして動き出していて、そこで観光をもっと盛り上げようというのか、観光に変わる何かを考えようとするのかですね。
観光から交流へという中で、どれだけ何ができるかが重要だろうと思います。
考える順番が「町がどうあるべきか」からスタートする
image by obusekanko.jp
齋藤: 桜井さんは9代目ということなのですが、どういう風に思いを繋げてこられたのでしょうか。
桜井: 家業が200年も続いているので、時間を見るスパンが長いんです。
5年、10年というよりは、100年先をみるというようなイメージです。
町とともに会社があるわけだから、まず町をどうするかという話になる。
町がどうあるべきで、そこから企業がどうあるべきかを考えていきます。
会社としてのリターンはだいぶ先になるけど、まずは町を活性化させて、その中で会社として生きていこうという方向性です。
良い企業でありたいという思い
齋藤: 自分の会社よりも、利他の精神というか、町をよくしようという思いがあるから続いているわけですね。
桜井: うちは、地元の人に好かれたいという欲求が強いんです。
全国的にメジャーになるよりも、地元の人が他県からの観光客の方に「どこが美味しいの」と聞かれた際に、「桜井甘精堂です」と言って欲しいんですよ。
自分自身が今色々な役職をもっているのも、町にとっての良い企業でありたいという思いがあります。
町の人に信頼されるために、町づくりに入り込んでいかないといけません。
ちゃんと生活している町が理想
齋藤: 100年先に小布施の魅力を伝えていこうという時に、何が一番大事だと思いますか。
桜井: ここに住んでいると、都会化したいという声があがります。
しかしそれが小布施町が生きる道かといえばそうではないし、逆に古いものを維持しようというのも正解ではないと思うんですよね。
なぜなら古いものというのは、生活しにくいものでもあるからです。
住みやすいんだけど、田舎の良さを残してあるというもので、住んでいる人間が住んでいて落ち着く町というのが一番良いのではないでしょうか。
理想はちゃんと生活している街で、奇をてらった変わった店があるのではなくて、ふつうに住んでいる人間も、食べて満足できる街。
こうあるべきっていうよりは、普通に変化していけば良いと思います。
若者がチャレンジしやすい町
齋藤: 若者がチャレンジしやすい町ができてきているのはなぜですか。
桜井: 小布施町の気風でしょうかねえ。
様々な年代との交流がしやすいし、協力しようという雰囲気があります。
その中で生まれた「何か面白そうなコト」を、とりあえずやってみよう、という腰の軽さ。
それが大事なんだと思いますね。
だから町外の人にも、小布施町だと何かできそうだなと思ってもらえるのが大事だと思います。
小布施町の人間と友だちになってもらえばわかる
桜井: 「第二町民制度」とか、観光でない小布施町との付き合い方って結構あるんですよ。
そういうものを利用して、小布施の人と酒でも酌み交わしてもらって。
その後は、どうにでもなると思います。
だから、小布施にきて、小布施の人と友だちになってもらったら、この町の風土もわかってもらえると思いますね。