今最も注目される地域ビジネスを展開する企業のひとつである「四万十ドラマ」。
地域の山や川がベースになった、地域の独自性が産業になることを目指して、多様な商品開発や事業を手がけています。
代表の畦地履正さんは、自分の仕事を「地域の人達と一緒にやりゆうビジネスやき」と言って笑います。
四万十ドラマは、地域に産業を作る会社です。
今や四万十ドラマは、その考えかたやノウハウを教わろうと、全国各地から、視察・研修が絶えません。
2016年も最注目のローカルベンチャーのストーリーを聞きました。
四万十にも、ええもんがいっぱいあるやないか!
四万十ドラマは、畦地さんとひとりのデザイナーの出会いがきっかけで始まりました。
そのデザイナーの名は、地域に根ざしたデザイナーで知られる梅原真さん。
ある日、25歳の畦地さんは、梅原さんの元を訪ねました。
当時、高知県で売れている商品といえば、馬路村のポン酢デザイン、黒潮町の砂浜美術館の「Tシャツアート展」、明神水産「藁焼き鰹タタキ」と、全て梅原さんがデザインや企画に関わったもの。
その企画力を頼っての訪問でした。
「隣の芝生が青く見えてて、思わず『ええなぁ、地元のいいものがあって』とぼやいたんですよ。
そしたら、机をバーンと叩かれて、あの大きな梅原さんに、四万十には、お茶も栗も、ええもんがいっぱいあるやないか!と怒鳴られました」
畦地さんの目から、ウロコが落ちた瞬間でした。
四万十のお茶を売る挑戦
梅原さんの言葉に動かされた畦地さんは、地域を自分の足で歩き、自分の目と耳で人と話し、ひとつの地域資源を見つけます。
それはお茶。
実は四万十は、全国的にも有数のお茶の産地だったのです。
お茶を売るために、お茶のことを調べ、歴史を学び、お茶の淹れ方も先生に習います。
このお茶をコンセプトにしたイベントが、畦地さんが初めて企画したイベントになりました。
初めて自分の手で作った企画書を携え、再び梅原さんの元を訪ねます。
「お茶はタダで提供して、羊羹を買って食べてもらうという企画でしたが、梅原さんからは、『お茶は価値をつけないかん!タダじゃいかん!』と怒られました(笑)」。
そして、畦地さんの企画書を元に、企画内容を仕上げ、タイトルが「四万十川のほとりで新茶を楽しむ会」に決まりました。
イベント当日、販売商品はお茶と羊羹だけ。
それでも1日15万円の売上となり、最終的には売上200万円を記録します。
20年前に決まったマスタープラン
自分たちの力で、最初の企画を成功させた畦地さんは、梅原さんに四万十ドラマのプランナーをお願いします。
一度は断った役割を、梅原さんは引き受けました。
出てきたのは、16ページに渡る企画書です。
これから四万十がどうするべきか。
産業作り、ネットワーク作り、食づくり、資金について、会員制RIVERの立ちあげ、「四万十川のユタカサを考える」など、たくさんの項目が書かれていました。
お気づきでしょうか。
ここに書かれた項目が、今まさに四万十ドラマによって実践され、地域に産業が生まれているということを。
四万十という地域がこれからどうすれば良いのかを考え、未来を作ってこられたのは、このプランを全員で信じ、取り組んできた結果なのでしょう。
「『梅原さんならどうやるか』というのが、ものさしになってるんです。
15年の年の差があるけど、人生の師と思っています。梅原さんは師とは思ってないだろうけど(笑)」
四万十川流域資源を活かしたものづくり
image by shimanto-drama.jp
今、四万十ドラマは、栗山の再生に取り組んでいます。
全ての事業は、1次産業を守り、崩れつつあったものを再構築するための産業づくりです。
四万十の特産品でもある栗ですが、収穫量は右肩下がりというのが現状です。
そんな中で四万十ドラマは、栗を植え、育てる仕組みを作っています。
栗の木が育ってくれば、収穫量も右肩上がりになっていくことでしょう。
この栗で世界に挑戦すると、畦地さんは言います。
「産業を守り、雇用を生み、生産者を守ることで、四万十の風景が守られるんです。
良いものをつくって、地域の人が儲けられる産業をつくっていきます」

「食」を中心とした地域おこし企画の立案や、企業コンサルティングを行う。笑顔と情熱でプロジェクトを盛り上げるムードメーカー。高知が大好き。