『RIVER』という会員誌をご存じの方はいらっしゃるでしょうか。
1997年に誕生し、高知県の四万十川流域の、ヒトや産物、取り組みを実況中継することを目的としています。
そんな『RIVER』が、10月1日に「しまんと川の会員制度”RIVER”」として生まれ変わりました。
今回は、新RIVERの会員紙の創刊イベント「ナニガユタカナコトナノカ」に参加してきたので、レポートをお送りします。
デザイナー梅原真さんを知っていますか?
今回のイベントの目玉は、編集長である梅原真さんと、創刊号で取材された田中隆博さんの対談。
梅原真さんのお名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。
梅原さんは、いま最も注目されているデザイナーのお一人でしょう。
彼の著書『ニッポンの風景をつくりなおせ』には、こんなサブタイトルが付いています。
「一次産業 ✕ デザイン = 風景」
梅原さんは、これまで一次産業のデザインをメインに取り組まれてきました。
なぜなら、一次産業は、産業のベースだからだと言います。
梅原さんの作品は数知れず。その実績も数知れず。
その独自の着眼点と、消費者の心をつかむデザイン力・キャッチコピー力で、イナカの一次産業を活性化しています。
何がユタカなのかを考える”RIVER”
image by npo-river.jp
「この会員誌は、何がユタカなのか、が根本にある」
と梅原さんは言います。
「国が経済経済と言う先に、何があるのか。何もないのではないか。あるべきは、ユタカさではないか。」
そんな思いのもと、ユタカを考える旅が始まります。
最初に取材されたのは今回の対談相手である田中鮮魚店店主の田中隆博さんでした。
田中さんのお店は、高知県の中土佐町久礼(クレ)中心部の「久礼大正町市場」にあります。
40メートルの商店街に30店舗が軒を連ねており、商店街の一番奥の魚屋が田中さんのお店。
お客さんから注文があったら、その場で魚を切ってくれます。
梅原さんいわく、
「田中さんはずっと同じポジションで、必ず毎日カツオを切っている」
のだそう。
ユタカとは何かを考え、高知へ帰郷
なぜユタカを考えるときに、田中さんが選ばれたのでしょうか。
田中鮮魚店の息子として生まれた田中さんは、「絶対に魚屋は継がない」という決意を持って勉強に励み、慶応大学に入学。
卒業後は商社マンになり、23歳の時、中国の工場を切り盛りする仕事を任され、たった3人で中国人300人を抱える工場を運営します。
それがいまから30年前のことです。
その後、中国で10年仕事をし、高知に帰ることを決意しました。
田中さんが高知に帰るきっかけになったのは、あるひとつの悩みだったそうです。
それは、「幸せは、どこに基準があるのだろう。今の自分のようにビジネスでお金を生むことが幸せなのか。」
ということでした。
魚屋と市場を救ったアイデア
久礼に帰ってきた田中さん。
家族で経営していた魚屋と、寂れかけた久礼の大正町市場を救ったのは、田中さんのアイデアでした。
現在田中さんのお店では、田中さんが切ってくれる”刺し身”と、向かいのごはんやさんの”御飯と味噌汁”で定食として食べることができます。
この斬新な定食屋をはじめとした田中さんたちの精力的な活動が、久礼大正町市場をもう一度盛り上げることになります。
いまでは、高知で美味しいカツオを食べるならココ!と、県内外から人が集まり、「刺身がうまい。この値段で!」と絶賛されているそうです。
とれたての新鮮な魚が食べれるのは、今も昔も変わりません。
では、何が変わったのか。
ただ”高知のカツオ”と並べたら売れていた時代が、田中さんのお父さんの代で終わった、と田中さんは言います。
だから、同じやり方を続けていてもダメだと思ったのだそうです。
今必要なのは、「高知産のカツオでも宮崎産のカツオでも、食べて美味しいと思ってもらえる我々の腕。漁師文化を残すこと」
その思いで、アイデアを実行されているのです。
カンブリア宮殿で語られた地方に一番大切なこととは?
梅原さんは、10月にカンブリア宮殿に登場しています。
司会の村上龍さんから「地方の自立に一番大事なことは?」と聞かれ、「地方は自分で考えろ!」と答えました。
「コンサルタントなど外部任せにせず、自分たちで考えて、実行する。自分で考えると、答えが出てくる。失敗したときにも、きちんと反省できる。」
と仰っていました。
田中さんは、まさにこの「自分で考える」ができる方だからこそ、梅原さんはインタビューしたそうです。
ユタカとは何か、を考えて、人生を決めた田中さん。
ユタカとは何か、を考えて欲しくて、RIVERを作る梅原さん。
とてもおもしろい対談でした。
ちなみに、ユタカ、をカタカナで書くのは、梅原さんのこだわりです。(その理由は、動画をご覧ください。)
ユタカを考えるきっかけにしてほしい
RIVERは、会員制です。
年会費を払うと、四万十に関するユタカな特典を10個受けられます。
そのうちの特典の1つが会員紙。年3回、梅原編集長渾身の会員誌が届きます。
年会費は1万円。
会費1万円は、多くの人にとって、安くはありません。
会費制にしたのは、梅原さんたちのこだわり。
「県や国のお金をつかうのはやめよう。補助金に頼らず、いただいた1万円でできることをやってみよう。『これだけのもの作るなら、1万は必要や』と思ってもらえる活動にしていこう。」
そんな思いがあるのだそうです。アツい男です、梅原さん。
次号は2月。
いま申し込むと、田中さんが登場する創刊号が届くそうなので、田中さんの思いもじっくり読むチャンスです。
あなたにとってユタカはなんでしょうか。
考えるきっかけにしていただけると良いなと思っています。
参照サイト

「食」を中心とした地域おこし企画の立案や、企業コンサルティングを行う。笑顔と情熱でプロジェクトを盛り上げるムードメーカー。高知が大好き。