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真珠養殖を次代へ。「あるもの」から新たな価値を創造し、天草の地で事業を守り立てる

有明海、八代海、東シナ海の3つの海に囲まれた熊本県天草地域は、生産量こそそれほど多くはないものの、真珠の養殖が一大産業となっている。毎年12月から1月にかけて、真珠と貝柱を取り出す「浜場」と呼ばれる作業をすると聞いて、天草・倉岳で真珠養殖業を営んでいる平山さん親子をたずねた。

「会社をなくすわけにはいかない」後継者として、熊本市内からUターン

平山家の次男・将司(まさし)さんが、家業の「株式会社平山海洋」を継ぐために天草に帰ってきたのは5年ほど前だ。将司さんは大学卒業後、熊本市内で営業の仕事をしていた。もともと家の仕事をする意思は無かった。しかし、長男が家業を継がなくなったため「会社をなくすわけにはいかない」と思い、熊本市内からのUターンを決めた。

かつて天草地域には、たくさんの真珠養殖業者があった。真珠養殖業は人手を必要とすることから、天草域内でも真珠に関わる仕事をしていた人は多かったという。しかし、真珠養殖業は経営者の高齢化や後継者不足の問題を抱え、その数を大きく減らしているそうだ。

そして2008年の「リーマンショック」も、日本の真珠業界にとって大きな打撃となった。真珠は限られた人しか入れない「入札場」で競りにかけて売ることになるが、リーマンショックの時には、これまでの価格を大きく下回る値しかつかなかった。リーマンショックをきっかけに廃業した養殖業者は数えきれない。真珠養殖に使われている貝の種類はアコヤガイ。真珠の養殖技術は日本で開発されたものだが、アコヤガイの病気の拡大やリーマンショックなど経済状況の変化などにより、日本では全国的に真珠養殖の担い手が減少している。近年は海外で養殖されたシロチョウガイやクロチョウガイが人気を集めるようになっていることも業界には痛手だ。

天草での真珠養殖業者の数も、今や数えるほどになっている。若い後継者がいる真珠養殖業者は、ほぼ平山海洋だけといってもいいだろう。

そこに「あるもの」を活用し、別の収入源を作る

株式会社平山海洋の代表取締役である平山剛(ひらやま・つよし)さんには、息子の将司さんのほか10人ほどの従業員がいる。養殖場に到着すると、従業員たちが手早く「浜揚」の作業をしているところだった。「浜揚」は真珠と貝柱を取り出す作業のことで、毎年12月から1月の時期にかけて行われている。

美味しい貝柱は、注目度上昇中

アコヤガイは真珠を取り出すために利用されるだけでなく、貝柱は食用として活用されている。漁業関係者の間では歯ごたえがよいことから、その日のうちに自分たちで食べたり近場の漁協などに出荷されるケースも一般的だ。平山海洋は、近年この貝柱を活用して真珠とは別の収入源を作る道を模索している。設備投資をして新たに別のものを作るのではなく「あるものを活用する」という発想だ。

アコヤガイの貝柱は食味がよいが、そのおいしさを知っている人は国内でもごくわずか。多くの人にアコヤガイのおいしさを届けたいと、熊本県内の郵便局経由による販売やホームページでの販売を続けるうちに、くまもと県民テレビ「テレビタミン」でも取り上げられた。アコヤガイの噂を聞きつけたレストランからも引き合いがあるなど、アコヤガイの貝柱は注目されている。

生の貝柱は、鮮度を保てるその日のうちに食べられる域内への販売に限定されるが、冷凍であれば域外へ商圏を広げることができる。平山海洋のホームページには、貝柱を取り出してからパック詰めするまでの工程が写真入りで紹介されているのが興味深い。

貝柱は海水での洗浄や皮とり作業、オゾン水での殺菌を経て、真空パックにして冷凍される。冷凍の状態で保存することにより、貝柱を出荷できる期間が長くなるため販売のチャンスを広げることが可能だ。

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