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成功する地域ブランディング3つの要素。1粒1000円の国産生ライチから学ぶ。

成功する地域ブランディング3つの要素。1粒1000円の国産生ライチから学ぶ。

    CATEGORY: AREA:宮崎県

「1粒1000円」というと、先日書いたミガキイチゴを思い出すが、宮崎県児湯郡新富町でも、1粒1000円の国産生ライチ「楊貴妃ライチ」が去年誕生した。

1粒1,000円といえば、かなりキャッチーではあるか、実際には価格設定する立場からすると、「しっかり売れるかどうか?」が大事だ。当然、ミガキイチゴも同じ考えだとおもう

僕は、この国産生ライチは、1粒1000円の価値があると判断して値段設定をした。

わずか1%しかとれない。10年かけて誕生した奇跡のライチ


国産生ライチについての詳細は、こちらの動画を見てもらえればわかるが、生産者の森哲也さんは、マンゴーの技術を応用したり、すべてが手探りで、試行錯誤の末、10年かけてこのライチを生み出した。

そして、2017年4月に町役場が観光協会を解散してつくった、「地域商社こゆ財団」が森さんと一緒にブランディングを行った結果、商品の価値とストーリーをしっかりセグメントしたお客様に届けるを伝えることができた。

結果として、国産生ライチは、完売。メディアでも多く取り上げられた。

持続可能なモデルを確立

この国産生ライチプロジェクトで良かったことは、生産者がしっかり稼いで、そして2年目も継続的に、そのビジネスが成立していることだと思う。

この国産生ライチは、出荷前からほぼ予約で完売状態だ。

しっかり稼いでと行ってもこれまで投資してきたことを考えるとまだまだこれからだと思うが、地方創生プロジェクトであるような打ち上げ花火的な地域ブランディングにならなかったことは本当に良かったと思う。

端的に「大ヒットが生まれた」と書くのは簡単だけど、その裏では、試行錯誤もあり、何度も何度も話し合いを重ねてきた。僕も味の違いを知るために弾丸で台湾の市場や農園に足を運んだ。

加えて言うとただ話し合いを重ねて、味の違いを知るだけでは商売はうまくはいかない。本当に持続可能な地域ブランディングができるためには、何が必要なのか僕らの経験談から少しまとめてみたいと思う

地域ブランディングには、3つの要素が必要


1、つくる人
特産品の地域ブランディングで、もっとも大切なことは「圧倒的に美味しい」事だ。まず、ここがぶれてはいけない。お涙頂戴的な地域ブランディングでは、持続可能なビジネスにならないからだ。そしてその圧倒的な価値がある商品を、安定した質と量を提供できる人=生産者がいる事。このビジネスの基本的なことを無視した地域ブランディングが多い気がする。全ては需要と供給からはじまるのだ。

2,売る人
「うちの町にも、いいものがあるんだけどねぇ」こういう話を聞いたことはないだろうか。事実、日本には、まだ光を浴びていない特産品や伝統工芸品的が溢れているのだが、実際に売る人と言うものがいない現実がある。

そこで重要なのが、地域プロデューサーの存在。プロデューサーのしごとは、企画から実際に「売れる」ところまで持っていくことが仕事だと思う。そのため、企画から販売までのあらゆる工程に関与する人という認識でいる。

僕は、地域プロデューサーと言う立場で、地域の仕事づくりに携わらさせてもらっているが、地域プロデューサーがいれば良いと言うわけではない。成功の要因の全てはチームで成り立っているのだ。

3,つなぐ人
最後に、最も重要なのが、つなぐ人、すなわちコーディネーターの存在だ。実際に今回のプロジェクトにおいても、このつなぐ人がいなければ、国産生ライチ「楊貴妃ライチ」というブランドは、誕生していなかったかもしれない

今回のケースだと、役場から出向して、地域商社こゆ財団の理事もつとめる岡本啓二(農産業に精通している)とこゆ財団の商品開発メンバーがいたことが非常に大きいと思う。

岡本らは、足しげく森さんのビニールハウスに足を運び、何度も何度も話し合いを重ねた。そして、お互いの共通認識が大きく外れないように、会う機会を多くとっていた。

ブランドは、繊細だ。

この地道な努力が、森さんからの信頼を得て、商品をビジネスモデルに落とし込んで、お客様に届けることができたと個人的には理解している。

つなぐ人の重要性

もし、このつなぐ人、がいなかったら、どうなっていただろうか?おそらく生産者と売る人が意思疎通できず、1粒1,000円の国産生ライチという尖った商品は、生まれなかっただろう。

つなぐ人、コーディネーターと言う存在がいなくて、当たり障りのない地域商品に帰結し、失敗している事例が多いのではないだろうか。

上記の3つの要素+「α」が重要。

地域商社こゆ財団のメンバー。地域経済の潤滑油として活動


成功する地域ブランディングを実現するには、上記にあげた1つくる人、2売る人、3つなぐ人の3つのどれもがかけてはいけない。

そして、この3つの要素が、頻繁にコミュニケーションをとり、良い関係性が「保てている」ことが大切だ。

私自身、全国各地で地域ブランディングのお仕事をさせていただいたが、いずれのときも必ず地元の人と組むようにしている

その理由としては、仕事をしていく上で、コミニケーションが最重要であるからだ。良い結果をだすには、良い関係性は必須「条件」なのだ。

このコミュニケーションの質を高めることへの投資の重要性を認識すると結果として地域ブランドにつながるのではないだろうか

その地域ブランディングは持続可能であるか?を問いただそう。

地域ブランディングと言われると、かっこいいパッケージとキャッチーなコピー、ストーリーを創作して、一過性で終わってしまうイベントを打ち上げて、1年で消えてしまうものが多い

こんな金メッキのような地域ブランディングで疲弊するのは地元の人だ。もうこういうのを見るのは懲り懲りだ。発注側は、持続可能であるか?をしっかりと問いただしてほしい。

あらためて問う、成功する地域ブランディングとはなにか

この楊貴妃ライチのプロジェクトが、俗にいう「成功」したとは思っていない。では、成功する地域ブランディングとはなにか、それは「持続可能である」ということだ。

ブランディングを英語にするとBRANDING。この「ING」現在進行形であることが大切なのだ。

森さんと一緒にプロデュースした、この楊貴妃ライチというブランドは、2年目も出荷前からほぼ完売しているような状態で、今後は、ブランドをしっかり守った上での事業拡大、地元の雇用の増加につなげるところまできている。

地元の学校との連携などもうまれて、町のカルチャーになってきている。1年前からは、想像もつかなかったような風景が目の前に広がっている。

僕は、この素晴らしいチームメンバーたちと、10年先も20年先も、一緒にINGしていきたいと願っている。

photo by Jin Takano