2010年7月19日~10月31日まで小豆島、直島をはじめ瀬戸内の7つの島と高松港周辺で開催される「瀬戸内国際芸術祭2010」。新しい価値や創造を生み出す「Art」と「まちづくり」に共通するキーワードは「Ask(=問い直す)」。「Ask」が活かされた瀬戸内のまちづくりとはどのようなものなのでしょう。
まちづくりもArtも基本は『Ask(=「問い直す」)』
瀬戸内国際芸術祭のテーマである「Art」。「ArtとはAskである」、と今から5年前に京都造形芸術大学で行われたアーティスト・サミットで世界中から集まったアーティストが紡ぎ出した答えがあります。アーティストも、それを鑑賞する人と共に、この時代に生きていくことを、アートを通してもう一度「問い直そう」とするものだ、と宮本亜門氏は語っています。
「まちづくりの基本もAskなんですよ。」と香川県地域振興アドバイザー竹内守善氏は力強く語ります。ですから、Artによるまちづくりを行う瀬戸内の島々はまさに「Ask」を通してまちづくりを実践しているのです。
Askを実践するまち、徳島県勝浦郡上勝町
Askはどのようにまちづくりに活かされるのでしょうか。その良い例が徳島県勝浦郡上勝町。上勝町元々売ることなど考えられなかった地域に生える木々の葉っぱを、料亭等のお料理に添えられる「つまもの」として販売することをビジネスにした町として有名です。なぜ上勝町でそれが実現できたのか。そこにはAskがあったからです。
地域にたくさんあるこの葉っぱをどうすれば売り物になるのだろう、という問い直す姿勢がビジネスを作っていきました。ビジネスとして成功した後でもこの姿勢は貫かれていて、今でも「1Q運動」と言われ、ワンクエスチョン、必ず一つは疑問を出そう、と行われています。
例えば、出荷しようとしていた葉っぱが虫に食われたらどうするでしょうか?売り物にならないな、とそこで諦めると何も生まれません。虫喰い部分をあえて強調するようなかたちで、きれいに手でちぎって形を整えて使えるようにして売り物にしたそうです。問題点や課題を探すことで新たな解決策がでる一例です。このように問い直すことが、もっと新しいものを生み出すちからになるのです。
地域へのAskが生まれる瀬戸内国際芸術祭
Artには「これは一体何を表しているのだろう、何を訴えかけているのだろう」という「Ask」を、見た人の心に芽生えさせる力があります。今回この瀬戸内国際芸術祭という瀬戸内の七つの島を舞台にして芸術祭を開催することによって、作品自体のAskもさることながら、それぞれの島、また、この瀬戸内という地域に対するAskが人々の心に生まれる、そんな祭典なのではないでしょうか。
なぜなら、この芸術祭に出典されているアートはみな、島に受け継がれてきた伝統や文化、人々の暮らし、美しい自然など、島のもつ素晴らしい財産に溶け込んだ現代アートだからです。
島に生活する人々にとってはあまりにも普通で気がつかない島の魅力を、Artを通して改めてAskが生まれ、そして私達にはこんなにも素敵な宝があるということを再認識することで、地域に対する誇りを生みだし、活気が生まれる。そんなきっかけとなる芸術祭なのです。
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