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地方でウェルビーイングに生きると言うこと

地方でウェルビーイングに生きると言うこと

    CATEGORY:人気記事地域ビジネス AREA:宮崎県


「ウェルビーイング(主観的幸福)」は、国際機関OECDが研究を進めるほど世界的なトピックとなっています。これは、紛争や貧困にあえぐ世界が、それでもなお幸福でありたいと強く願っているあらわれでもあると感じます。

2019年5月、日本では新元号「令和」の時代が幕を開けました。日本最古の歌集「万葉集」を出典とする元号は、中国の古典に由来してきた過去の元号と一線を画し、平和と調和を重んじる日本古来の伝統と文化を象徴するものとして、とても意義深く感じます。

ウェルビーイングやダイバーシティといった価値観は、海外諸国が先進的です。ですが、多様性を受け容れ、固有の歴史や文化と外来のものを織り交ぜて独自の風土をつくりあげてきた日本には、実はその価値観がすでに根付いています。これは特に、画一的な発展を遂げている都市ではなく、個性を今にとどめている地域に顕著だと感じます。

日本の地域は、世界をリードする。私はウェルビーイングという観点において、そのことを改めて確信しています。世界の平和と調和は、日本の地域から広がっていくものだと思っています。

寛容で厳しい町 シリコンバレー

私は、関西の大学を2年で中退し、カリフォルニア州サンフランシスコのシリコンバレーへと飛び出しました。コーディネーターさんが紹介してくれたのがたまたまシリコンバレーだったのですが、結果的には環境や文化がフィットし、そのまま仕事を始めるに至りました。

フィットした理由は、オープンでフラットであること、そしてダイバーシティがカルチャーになっていることです。宮崎にも通じますが、とても寛容な町でした。もちろん、寛容な町とはいえども厳しさもあり、プロフェッショナルでないと認められない場所でもありました。それで私は、帰国して起業したあとも、すべて自分でやらないといけないと思って行動してきました。

その考えが変わったのは、こゆ財団がスタートしてからです。新しいことに次から次へと取り組む中で、気づけば自分らしさを失い、常に誰かと比べていました。そんなときに感じたのが、信頼できる仲間の存在です。もちろん、ビジネス上の厳しさはありますし、努力し続けることにも変わりはありませんが、こゆ財団では仲間に恵まれました。だから手放せるし、委ねられる。みんなでやっていこうという思いが強くなりました。

自分を大切にして生きるということ

チームのありようを決めるのはトップ次第だとよくいわれますが、こゆ財団の場合も同じでした。ぼく自身が自分らしくありたいと願ったことが、チームの変化にもつながったんじゃないかと思います。手放したり委ねたりするのには勇気が必要でしたが、補ってくれる仲間がそばにできました。おかげでお互いをリスペクトする関係も生まれてきています。

ウェルビーイングとは、自分を大切に生きることだと感じています。世の中には、優しさや責任感が人一倍大きいがために、心を病んでしまう人が多いように思います。だからこそ、自分を大事にして欲しいと声を大にしていいたい。嫌だなと思う上司のことで思い悩む前に、地球に住む1人としてちょっとだけ考えてみてください。世界のどの国と比較しても、これだけ守られている国は他にない。みんな、自分がいる場所の価値に気づいていないと思いますよ。

信頼関係のもとで手放し、委ねる

ノートルダム清心学園の理事長であった渡辺和子さんの著書『置かれた場所で咲きなさい』をご存じですか? この本には、今あることに感謝し、希望を持ち続けようといった趣旨のことが書かれています。腹の立つ上司なり満員電車なり、誰もが嫌なことって挙げだしたらきりがないと思いますが、新富町のような小さな町でも、全国各地に応援してくれる仲間がいます。手放したり、委ねることができる仲間は、実は誰にでもいるんじゃないかと思います。そしてそれは、手放したり委ねることができたときにわかるのかもしれません。

時代は、新たに「令和」となりました。混迷の平成を経てスタートする新しい時代について、いろいろな思いがあります。ウェルビーイング(自分らしく生きる・働くこと)というと、どこか理想郷のように思う人もいるかもしれません。自分らしさを大事にするためなら、人を傷つけたりわがままであってもいい、自分がやりたいことを貫けばいいという考え方の人もいるように思います。でも、それは周りへのリスペクトを失っています。誠実ではない対応は信頼を失ってしまいます。信頼関係がなければ、手放したり、委ねたりすることもできません。逆に、信頼関係のもとで手放し、委ねることができれば、自分に余白が生まれ、新しい人・モノ・価値が入ってきます。ぼくが知る全国の地域リーダーの方々には、そうやって周りにどんどん人が集まっています。

いくら稼ぐかよりも、誰とやるか

私がつとめていたシリコンバレーの会社は、上場も目指す創業期にありました。あの時に味わったギラギラした感覚は確かにエキサイティングで、その後に東京でつくった会社やNPOもそれぞれ楽しかったんです。それでも正直にいうと、こゆ財団でやっている今がいちばん楽しい。いくら稼ぐかよりも、誰とやるか。思いを共有できる仲間を作ることって難しいと思いがちですが、3人ぐらいなら見つけることはできるんじゃないでしょうか。見つけるには行動しかない。セミナーなり講座なりに出会いを求めて参加してみるなど、誰にでもできることは少なからずあると思います。もしもそれができない人は、きっと今いるところが好きなんだということです。

こゆ財団は、設立前(2016年度)の4.3億円から、1年目で2倍以上の9.3億円、2年目(2018年度)には約19億円にまで、ふるさと納税の寄付額を伸ばしてきました。それでも私は、そんな成果以上にいい仲間とやれていることが幸せだと感じています。イーロン・マスクと仕事をするよりも面白いんじゃないかと思っています。

自分を大事にすること。そのために周りと信頼関係を築き、手放し、委ねること。美しい人が集まるところによい文化が創造されるというのが新元号「令和」の持つ意味ですが、自分を大事にできる人を美しい人というならば、そんな人の小さな集合体である日本の地域は、まさにウェルビーイングを体現するものではないかと思います。いま、宮崎県新富町にはこゆ財団が媒介となり、美しい人が集まる小さな集合体が作られつつあります。5年後、10年後の未来に、新富町が世界をリードするウェルビーイングな町と評されている可能性を、私は確かに感じています。

1万回の決断の1回を変えていく

もしあなたがウェルビーイングでありたいと望むのであれば、試してほしいことがあります。それは、1万分の1の決断を、自分を大事にする方向に変えてみてほしいということです。人は、1日1万回の決断をしているといわれています。その1万分の1だけでも変えてみてほしいのです。私もかつては、誰かと比較したり成果を上げたいがための決断を繰り返してきました。そうではなく、まず自分を大事にすることです。一つ一つは小さなものでも、1年で365万回の決断が合わされば、人生は自分らしくありのままに生きるウェルビーイングの方向へと、確かに変化していくと思います。