とにかく、笑いが耐えない。それが「山元はじまるしぇ」チームの印象である。
「山元はじまるしぇ」は、人口1万2000人の宮城県山元町で5000人以上を集めるマーケットイベントだ。31歳の時に仙台から拠点を移し役場職員となった武藤亮平さんが旗ふり役となり、2018年で開催4年目を迎えた。代表は武藤さんだが、実行委員会は町内外から集まった20人を越える若手チームで組織されている。
その中でも、武藤さんと近い関係でイベントを支えるのが、同じく30代の内藤靖人(ないとう・やすひと)さん、伊藤雅訓(いとう・まさのり)さん、横野壮俊(よこの・たけとし)さん。3人とも都市圏からの移住者であり、それぞれに山元町で起業した経営者でもある。
最初は手探りで始まった
武藤さんが山元町に移住したのは2013年。それまでは仙台市で、警察官をしたり、データセンターで働いたりしていた。しかし、2011年に起きた東日本大震災の被害の大きさを目の当たりにし「被災地で仕事をしたい」と考えた。山元町は太平洋に面し、津波で甚大な被害が出ていた。武藤さんは山元町の職員採用試験に応募し、公務員となった。
熱い気持ちを持って山元町で働き始めた武藤さんだったが、とにかく最初は町のことが何も分からず、何をすればいいか迷走してしまったという。そんな時、公務員としての研修で島根県海士町(あまちょう)を訪れる機会に恵まれた。その頃すでに地方創生の旗手となっていた海士町で、役場の総務課長に言われた「一人では何もできない。我慢強く、協力者を一人ずつ増やしていくんだ」という言葉に、武藤さんは感銘を受ける。
山元町に戻ると、早速、海士町で開かれていた「明日の海士をつくる会」=「あすあま会」を真似て、山元町の未来を考える「あすやま会」を開催。そこに参加していた一人から「マルシェをやろう」という提案を受け、手探りなまま始まったのが「山元はじまるしぇ」だった。