PR for こゆ財団(宮崎イノベーションサミット)
宮崎県の中央部に位置する新富町。この人口約17,000人の小さなまちで、大きなチャレンジが始まっている。
2017年4月に新富町の観光協会を解体し設立された地域商社「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)」と、宮崎のスタートアップ企業を発掘・応援することを目的とした宮崎商工会議所と宮崎県の共同事業である「みやざきスタートアップセンター」が、2018年6月23日に「宮崎イノベーションサミット2018」を開催した。
成長段階にあるベンチャー起業家・担い手がイノベーションの本質に触れられる機会をつくろうと、イノベーションの第一人者である一橋大学イノベーション研究センター教授 米倉誠一郎氏の基調講演、宮崎県内のイノベーターによるピッチが行われた。
テーマは世界一チャレンジしやすい町
当初予定していた50席の定員に応募が殺到。100席に増席し、会場は満席となった。当日は、開催地の新富町民だけでなく、町外からの来場者が過半数を超えていた。
今回のサミットを共催した「こゆ財団」の代表理事 齋藤潤一氏より、掲げられたテーマが「世界一チャレンジしやすい町」。こゆ財団設立以降、多くの移住者・チャレンジャーを呼び込んでいる新富町。
チャレンジする「人」に投資し、挑戦しやすい町にすることを目指している「こゆ財団」は、日本中で活躍する人と地域の人々を繋ぐ・出会う場として多くのイベントを企画・運営している。その中の1つが、今回の「宮崎イノベーションサミット2018」だ。
イベントは、米倉誠一郎氏の基調講演でスタートした。
特別講師プロフィール
米倉 誠一郎 氏
一橋大学イノベーション研究センター教授。一橋大学社会学部、経済学部卒業後、同大学大学院社会学研究科修士課程修了。ハーバード大学歴史学博士号取得(PhD.)。イノベーションを核とした企業の経営戦略と発展プロセス、組織の史的研究を専門とし、多くの経営者から熱い支持を受けている。
日本にとって重要な「人」と「教育」
米倉氏の基調講演で、大きなテーマになった「人」と「教育」。財源に乏しい日本で、唯一大きな財源と言える「人」。その財源を重要視するのであれば、教育は切っても切れないものとなる。
学校の無償化が進み、教育への公的支出が世界最低の日本。安売りをした教育では、学校に多くを求めなくなってしまう。
日本にも最高水準の教育を提供できる場所があっても良いし、何より教育の本質を見抜かなくてはならない。
米倉氏が伝える、教育の本質とは何だろうか。
大切なのは、授業の科目ではなく概念
米倉氏は、教育の重要性について次のように伝えてくれた。
科目が大切なのではない。例えるなら教育は窓。そこから見える景色が社会なのだが、現在の教育は窓枠をどうしたら良いか考えるだけで、本質については触れていない。
授業についていけないお子さんに、ボクシングを教えたら一気に頭角をあらわしたという実例がある。その子は、ボクシングの試合をするときに1ラウンド3分だと教わる。
その3分をいかに動くか考えたときに必要になったのが「わり算」だし、リング上をいかに効率よく動くか考えることも同様。つまり、この子にとって「わり算」という概念が重要なのだ。
「教育の基本は、人と違うことを考えさせることだ。」と、米倉氏は教えてくれた。それこそが、イノベーションにとって、これからの日本にとって大切な考え方となる。
起業家ではなく企業家を育成
一般的に、「起業家」という言葉が用いられるが、米倉氏の場合は異なる。
会社を作ることが大事なのではない。常に企て、イノベーションを起こすことこそが重要なのだ。
それが社長じゃなくてもよい。一般社員が企てれば、その一人ひとりが「企業家」となるのだ。
「イノベーション」とは、社会に新しい価値をつくること。このような企業家が多い地域が、今後ますます成長していくのだ。
失敗は、問題なのか?
日本人の多くは失敗を恐れるが、「失敗は、問題なのか?」と、米倉氏は参加者に問いを投げかけた。
新しいことは失敗しやすいし、失敗して当然という考えもある。大切なのは、結果を出すまで、手を替え品を替えて、挑戦し続けることだ。
失敗は、大した問題ではない。それを恐れていては、イノベーションを起こすことなどできないのだ。
宮崎県内のイノベーターによるピッチ
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米倉教授の基調講演後に、宮崎県内のイノベーター5名によるピッチが行われた。米倉氏やゲストからの講評が行われ、プレゼンターや参加者からも多くの意見が飛び交うイベントとなった。
プレゼンター プロフィール
中武利仁さん
高原町役場まちづくり振興課所属
宮崎県西諸県郡高原町出身。2002年宮崎大学卒業後、高原町役場畜産課配属。長く使われていなかった公的施設を新たな交流拠点にしようとクラウドファンディングに挑戦。目標の167%を達成。Mfnet所属。
生駒祐一さん
テラスマイル株式会社 代表取締役
2010年グロービズ経営大学院卒業。(株)シーイーシーにてSI・医療・FAの新規事業を担当後、農業生産法人の立ち上げに関わる。2014年「楽しく働く街づくり」をビジョンに掲げテラスマイル(株)を創業。農業コンサルティングを経て、現在は農業経営の見える化・管理会計と、出荷予測が行える「RightARM」を展開している。
結城嘉朗さん
有限会社 結城水産
福岡県の大学を卒業し、そのまま福岡県のスーパーにある魚屋に就職し、5年働いたあと島にUターン。延岡市島浦でカンパチやシマアジ、タイなどの養殖を手掛けながら、島浦町漁業後継者部や島浦未来会議で島浦や地どれ魚のPRに取り組んでいる。
石川美里さん
みらい畑株式会社 代表取締役社長
2015年に新卒でボーダレス・ジャパンに入社。2017年9月に福岡県から新富町に移住し、未経験で就農した。農家として経験を積みながら高齢者の身体の負担を軽減できる農業の仕組みづくりに取り組んでいる。
猪俣太一さん
新富町のきゅうり農家
耕作放棄地を再利用し、若手農家3人で希少品種のきゅうりを栽培する「きゅうりラボ」を開設。資金はクラウドファンディングで獲得。農家の悩みであった横のつながりを解決するために、農家同士をつなぐコミュニティづくりにも取り組んでいる。
チャレンジ・フィールドをつくる
今回開催されたようなイベントや講座を通して、宮崎県新富町には少しずつ変化が生まれている。
「参加する人の行動に変化が生まれる。小さくても、それぞれができる新しいことにチャレンジする。」そのような考えに共感し、この町には多くの移住者やイノベーターが集まり始めている。
チャレンジ・フィールドをつくる。世界一チャレンジしやすい町への挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。