少しびっくりするデータがあります。子育てにおいて、4人に1人は相談相手がおらず、4割の人は困った時に子どもを預けられる人がまわりにいないというものです。
この状況は、「孤育て(こそだて)」として社会問題としても浮上し、解決に向けての取り組みが始まっています。
そのひとつが、茨城県県北地域で活躍する女性起業家・高橋美紀さんです。
茨城県が主催する地域ビジネスコンテストでも優秀賞を授賞したアイデアとはどのようなものなのでしょうか。
お母さんの働く環境を整える
高橋さんは、”動ける身体をつくるヨガインストラクター”として県内外で活躍しています。体育大学を卒業し、映画やテレビやPV等で活躍したダンサーでもあり、その知識と身体のキレは本物です。
知識と専門的な指導ができるため、リラックスではなく、動ける身体を作るクラスとしてヨガ教室を開催しています。特定の教室等を持たないスタイルで、社会人や親子など 対象者や目的別に合わせたレッスンを提供しています。
2018年4月で、フリーのヨガインストラクターとしての活動開始から1年を迎え、現在までで茨城県北地域に限っても、200名以上の生徒を指導しています。
高橋さん自身も2児の子育てを経験したことで、育児中の課題を実感。体力増強やリフレッシュのために、赤ちゃんをもつママのためのヨガクラスを開講しています。
そこで浮彫になったのは、「レッスンに出たいけど出られない」という方々の存在。特に、孤育てになってしまっている過程では、子どもの面倒を見ているだけでいっぱいいっぱいで、他に何もできないようなこともあるということがわかります。
そこで高橋さんは、託児付きのヨガクラスを準備します。ここで活躍することになるのが、潜在保育士の方々です。
保育士の資格を有しながら保育関係の職に就いていない人数=潜在保育士の人数は、全国で約76万人とされていて、その中の多くの人は長時間労働や業務量の過多等「働きたくても働けない」という状況にあります。
そこで、ヨガクラスの託児所という時間を限った仕事の場を準備したわけです。
地域の良さを活かすから、ここだけの価値を提供できる
この仕組をつくることで、子育て世代の方はヨガのレッスンを受けることができ、潜在保育士の方は、その技能の用いて貢献し賃金を得ることができ、さらに社会復帰の一歩にもなりました。
と、高橋さんは言います。
クラスを開催する毎に、フルタイムでは難しいけれど、自分のスキルを活かして働きたいと考えている子育て世代の母親達が多くいることを知り、この仕組をさらに拡張することを決めます。
短時間でも、その人が持つスキルを発揮する場と機会があれば、キャリアを断念せずに活躍できるのではないかと考えています。そのためにも変化の激しい時代だからこそ即戦力となるスキルアップ講座を開催することにしました。
この仕組は、フルタイムでなくても働きたい方を対象に3つのことを提供するものです。それらは、
・ヨガによる健康増進
・スキルアップ講座による専門知識の習得
・時短での専門的な仕事のオーダーの獲得
この3つ。これらをまずは茨城県北地域からスタートするといいます。
地方には豊かな環境があり、都会の喧騒とは違う時間軸で生活が出来ます。その分 自分を高める為の場や刺激が少ないなど課題が多いこともありますが、だからこそ解決にむけてチャレンジできるところだと思っています。
IT革新のおかげで地方にいても世界と繋がる事のできる時代です。
自らの手で仕事を創り それぞれのライフスタイルに合わせた仕事の進め方を通じて、地方ならではの新しい働き方につながればと思います。
ゆるやかな連携が、安心の子育てにつながる
高橋さんが提供しているのは、安心安全の場だといえそうです。孤育てという環境の中だけでは、社会との繋がりが弱くなり、個人の不安も増していってしまいます。
だからこそ、家族とか地域を超えて、子どもを一緒に育てて、社会に参加しようというコミュニティは、スキルアップや仕事といった面はもちろん、それぞれの安心安全につながっているのではないでしょうか。ゆるやかな顔の見えるつながりが安心安全を作るのです。
オンラインがベースのクラウドソーシングと異なるのは、集う場と、目に見える仲間がいることだといえます。
「働き方改革」の掛け声でいろいろな取り組みが始まっています。動きの中で、少しずつ寛容な社会になっていくことでしょう。
高橋さんの取り組みも、新しい働き方を提案すると共に、子育てをおこないやすい社会を作っていくきっかけになることが期待されます。