都会から地方に移住する人がここ数年、すごい勢いで増えている感がある。ただ私は、個人的な経験からも「移住ではなく多拠点居住の方がいいよ」ということは言っている。完全に地方に移り住んでしまうのではなく、都会と地方を行ったり来たりした方がいい場合もあるよというアドバイスだ。もちろん多拠点居住にもデメリットはあり、移住にもメリットがある。そこでこの記事では、両者のメリットとデメリットを比較してみたい。
多拠点居住のメリット
私はいま、東京と長野県軽井沢町、福井県美浜町の3拠点を移動しながら暮らしている。その生活で感じた多拠点居住のメリットは次のようなものだ。
人間関係が多層的になる
都会で知り合う人と、地方で知り合う人は重ならない。都会にはもちろん面白い人が多いが、地方で大工さんや農家さんや漁師さん、山の猟師さんなど現場を知ってる人たちと知り合えると、人間関係の幅はぐっと広がる。
やっぱり都会は重要
「いま地方が面白い」と言っても、やっぱり仕事の場として都会は重要。キーパーソンとも交流しやすいし、企業がたくさんあるので仕事を作りやすい。
生活に区切りをつけやすい
スケジュールによって生活が決まる。「3日後から地方」と決まると、その日までに今の業務を終え、余ってる食材も食べ切り…とさまざまな〆切を設定しやすくなる。移動日は、次の業務のための心機一転にはぴったりだ。
移動の荷物が減る
それぞれの拠点に家財道具一式、さらには歯ブラシや石鹸、パソコンのACアダプタまで置いてあるので、拠点間を移動する時はほとんど手ぶらですむ。都内を仕事で移動するときと、拠点間移動するときの荷物はほとんど変わらない。余計に持つのは食べきれなかった野菜だけ。
多拠点生活のデメリット
移動コストが高い
これが最大の問題。特に日本は新幹線など鉄道の運賃が高いので、この負担がけっこう大変だ。
初期コストもかかる
拠点を新しく開くと、引越しではないので、新しく家財道具を一式買い揃えないといけない。冷蔵庫、洗濯機、ベッド、ダイニングテーブル、食器類。
スケジュール管理ができないと・・・
宅配便でのAmazonなどの受け取りやゴミ出しなど、綿密なスケジュール管理をしないと、誰もいない拠点に宅配便を送ってしまったり、これから出発なのに拠点に生ごみが残ってるといった面倒なことになる。
完全移住か?多拠点居住か?
一方で完全移住は、何と言っても最大のメリットは、生活コストを劇的に下げられることだ。家賃は安く、土地にもよるけれど農家さんと知り合いになれば、余った野菜をもらえたりする。住まいの周囲で空き家が取り壊されるようなことも多いので、家具や雑貨、食器などを無料で手に入れられることもある。
しかし先に書いた多拠点居住のメリットが、完全移住のデメリットにもなる。地方の比較的狭い人間関係に浸って生活しなければならなくなり、都会とも切り離されがちになるというのはけっこう問題かもしれない。
こうしたメリット・デメリットを比較検討したうえで、自分に合った移動生活を考えてほしいなと思う。
*2枚目の画像 photo by WAKI HAMATSU