地域が主導して観光地域づくりを進める取り組みが盛んになってきています。ニュース等で、DMOという言葉を聞く機会も増えてきました。
外国人観光客が急増する中で、受け入れ環境を整備しつつ、観光を産業として持続可能な地域づくりにつなげることが求められています。
世界も評価する瀬戸内地域
日本でもっともインバウンドに力を入れている地域に、瀬戸内地域があります。アートの島として知られる直島や豊島はもちろんのこと、広島の厳島神社や、しまなみ海道のサイクリングなど、様々な観光資源がある地域です。
訪れた人が誰しも、どこか安心してしまう穏やかな内海と、そこに浮かぶ島々の景色は、世界でも類を見ない美しさを誇っています。その景色の美しさは、世界の旅行者や探検家を広く魅了していることでも知られています。
この瀬戸内地域を共有しているのが、歴史や風土が異なる、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県の7県です。
課題は観光客の伸び悩み
美しい景色が魅力となっている一方で、外国人延べ宿泊数をみてみると、7県を合計して約261万人となっており、全国7位の福岡県(236万人)に並ぶ程度になっています。
ちなみに、1年間に訪れる外国人観光客が、2017年には速報値で約2800万人となっていますが、都道府県別の外国人述べ宿泊者をみてみると、約半数が東京・大阪・京都の3都市に集中しています(2016年観光庁調査による)。また上位10県で、訪日旅行者の約80%が宿泊していることも特筆すべきでしょう。
このような状況の中で、瀬戸内地域全体のインバウンドを促進しようという取り組みが、7県の自治体や銀行等があつまり、組織化された「せとうちDMO」です。
地域住民を巻き込む、せとうちDMOの取り組み
そもそもDMOとは、Destination Management Organizationの頭文字をとったもので、地域にある観光資源を活用し、観光地域づくりをリードする組織のことを指します。
まず、DMOが担う役割は大きく2つあることを押さえておきましょう。ひとつは、観光客のニーズに合わせた情報提供を行い、旅行のきっかけをつくるマーケティング。もうひとつは、観光客はもちろん、観光地の方々も満足できる受け入れ体制・運営体制を整備するマネージメント。これら2つが大きな役割です。
せとうちDMOがユニークなのは、従来各県で実施されていた観光施策を俯瞰して、横断的に瀬戸内ブランドとして確立しようという点です。
瀬戸内海の島々は、それぞれ個性があり、それらを巡る観光体験ができるのは、日本には瀬戸内しかありません。そのユニークさを、瀬戸内の多島美として訴求していっているわけです。
またマネージメントの観点でも、地域事業者や住民を積極的に巻き込むことを進めており、その指標として、住民満足度も重視しているといいます。
2度、3度訪れたくなる地域をどう作るか?
アートの島として知られる直島を訪れると、多くの外国人観光客と出会うことができます。
中には、訪れたのは3回目ですという方もいます。理由を聞いてみると、「ここでしか見られない景色があることと、行ったことのない島に行くため」という回答が返ってきました。
まさにこの状況こそ、せとうちDMOが目指している姿だといえます。
なんでも良いから、この地域にお越しくださいというのではなく、この地域で、どのような体験をしてほしいのかを明確にすることで、地域のファンを作ることができるということを教えてくれる実例ではないでしょうか。
瀬戸内地域は、数年以内に北海道や沖縄に並ぶ認知度まで高めたいとその目標を掲げています。観光を手段とした持続可能な地域づくりの例として、瀬戸内地域に注目してみてください。
参考文献:
せとうちDMO(公式サイト)
地域の取組事例集(総務省)