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島野浦で魚の養殖業を営む結城嘉朗さん
九州宮崎県の北部に、離島「島野浦」があります。人口900人。巻き網漁や魚の養殖が盛んな島です。本土から定期高速船を使って10分ほどで着くため、比較的訪れやすい島だといえます。
かつては、「イワシの舞う島」と呼ばれるほど多くの魚がとれ、離島にも関わらず映画館もあるような島でした。しかし島にも少子高齢化の波が押し寄せ、漁業の担い手の高齢化、担い手不足といった課題に直面しています。
「かっこいいイメージの島にしたいんです」と語るのは、島野浦で魚の養殖業を営む結城嘉朗さん。島野浦の若手漁師で組織されている島浦町漁業後継者部の中心メンバーで、島のことを積極的に発信しています。
結城さんの目指す島の姿とは何か、そして島のまちづくりで大切にしていることをうかがいました。
島のことが知られていないという危機感

島の玄関口。美しい海が広がっている
結城さんが島のまちづくりに積極的に関わる背景には、ひとつの理由があります。それは「島のことが知られていない」ということ。
同じ宮崎県内であっても知られていないということが、ショックを与えました。
自分と同年代での飲み会だったり、交流だったりするときに、島のことを紹介すると誰も知らないんです。これはヤバイんじゃないかと危機感をもったんです。
島と仕事はつながっている
結城さんは、現在島にUターンして5年目。家業の結城水産でカンパチ、シマアジ、タイなどの養殖を行なっています。
実は結城さんは、「島のことが好きではなかった」といいます。
島には高校がないので、島の子どもは高校進学でかならず島外に出ていきます。
そのときに、島出身であることがコンプレックスで、島のことや、そこ出身であることを言わないよう、知られないようにしていました。
結城さんは、高校卒業後、福岡の大学に進学。そのまま福岡の魚屋に就職し、5年間働きます。魚屋を選んだのは、いつか地元に帰るかもしれないという意識からでした。
就活でIT企業を受けたりもしたんですが、何か違うなと。実家が養殖業と商店をしていることもあり、売るということが身近だったんです。
魚屋で働いていれば、いつか戻るとなったときに得られるものがあるのではと思っていました。
実家が養殖の作業用の船を新しくするというタイミングと、サラリーマンを辞めようかと思っていた時期が重なり、親からの呼びかけと、「人に使われるより自分でやりたい」という思いが強くなり、Uターン。
ここから挑戦が始まります。
島のことが知られていないということを知ったからこそ、「島のことを知ってもらおう」という情報発信や、若手漁師と連携した活動を始めます。
島を知ってもらうことは結城水産を知ってもらうことになると思っています。島のことと、仕事がイコールでつながってるんです。島がうれていけば、結城水産の魚も売れるだろうなと。
自分の将来や、結婚できるかどうかといったことも全部、島とつながっていると思います。
島のことと、自分の生活や人生がつながっているという感覚があるからこそ、積極的な活動につながっているというわけです。
島の魅力は何かを考え続ける

島野浦には、独自の食文化も根付く。そのどれもが美味しいと評判だ
メディアからのインタビューなど、様々な機会で島について語ってきた結城さんが、一番苦手な質問があります。それが「島の魅力は何ですか」というものです。
わからないんですよね。魚もおいしい、スキューバもできる、大きくて美しいサンゴがある。どれも魅力だと思うんですが、自分が納得できる魅力に出会えていない、見言い出せていないんです。
「それがほんとに魅力なのか」と自問してしまうんです。
心の底から思っていないのに、これが魅力だと答えるのがいやだという結城さんは、魅力とは何かを考え続けています。そのときにヒントになるのが、島を訪れてくれる人の言葉です。
島を訪れる人の声がヒントになっていると思います。自分は、島のことしか知らないからわからないんです。
島の魚はおいしいということや、のどかなことなど、自分はここしか知らないのでわからないのですが、訪れた方々が魅力だと言ってくれる部分を、ひとつひとつヒントに、島の魅力を考え続けています。
まちづくりで大事にしている2つのこと

島のまわりで行われる養殖。漁師体験なども行い、魅力を伝えているという
「もし他に前に出て引っ張る人がいれば良いのですが、いないので0よりは良いと思って、自分が積極的に発信しています」と結城さんが語るように、結城さんは、若手漁師の中でも積極的に、島でのイベント開催を企画したり、クラウドファンディングなどを通じて、島野浦のことを発信し続けたりしています。
島のまちづくりで、2つのことを大事にしているといいます。
「情報を発信し続けること」と、「島外の人に島に来てもらうこと」の2つです。
知られていないことを知ったからこそ、どんなに小さくても発信し続けていって、知るきっかけを作らないといけないと思っています。
次に、島に来てもらうことが大事だと思っています。たくさんの人に来てもらえれば、それだけ島の魅力のヒントも教えてもらえるし、何が求められるのかを知ることができます。
自分には当たり前のことでも、外の人は「いいね」と言ってくれる。それがヒントです。
島のことを発信することと、島外から訪れる人を増やすことを通じて、お客さんが求めることを知り、それにこたえていくのが大事だと考えて行動しているという結城さん。
発信して、人に遊びにきていただいて、その人たちが求めていることを提供していく。それが評価につながると思っています。
泊まるところがほしいとか、魚を食べられる場所がほしいとか、いまはまだ基本的な要望にも応えられていないのですが、ひとつひとつ応えていけば、ファンになってくれると思っています。
島外に出た高校生が自慢できる島を目指す
「かっこいいイメージの島にしたい」と繰り返す結城さんには、ひとつのイメージがあります。
将来、島を出た高校生が、「うちの島にはこんな魅力があって、人もたくさん訪れていてすごい島なんです」と、誇りをもって語れることです。
結城さん自身が言えなかったからこそ、未来の高校生が堂々と言えるようにしていきたいというわけす。
かっこいいって、いろいろあって良いと思っていて、女の子にキャーって言われる漁師とか、おしゃれなイメージとか、星がきれいだよね、魚がおいしいよね、ビーチがきれいだよねとか、何でも含まれていて。
大事なのは、自信をもってよその人にいえる島、島外の人に自慢できる島になることだと思っています。
それが「かっこいい」ということで、未来の高校生が堂々と語れる島づくりにつながると思っています。
いま、結城さんたち若手漁師のメンバーが中心となり、島でとれた魚を漁師が料理して振る舞う「漁師食堂」を計画しています。
魚は鮮度が命。だからこそ、島でとれる魚を、島で贅沢に味わってほしいという思いで始まった取り組みです。
いま島には食堂がありません。漁師食堂の取り組みを通じて、島でおいしい料理が食べられる場を提供することで、島の魚の魅力を、島で伝えるということができるようになるというわけです。
情報発信と島外から人を呼ぶ取り組みが、島を元気にしていく。「かっこいい」島野浦を実現する挑戦が続いています。