「まちづくり」分野で先進的な取り組みが評価されている地域のひとつ、長野県小布施町。
まちづくりを引っ張ってきた会社のひとつに、栗菓子で有名な小布施堂があります。
民間と行政が連携した様々な先進的な取り組みも行われてきている小布施のまちづくりのリーダーのひとりとして牽引してきたのが、小布施堂の代表を務める市村次夫さんです。
「稼ぐ地域を作る」をテーマに、全国で地域の仕事づくりを支援する地域プロデューサーであり、NPO法人まちづくりGIFTの代表理事齊藤潤一さんが、市村さんの元を訪ねました。
小布施の人が町を愛する理由
齋藤:小布施の人たちは、なぜ町を愛し、誇りに思っているのでしょうか。自分たちの活動が、街を作ることになるという考え方の方が多いように思います。
市村:ひとつは、天領だったということがあります。天領というのは明治時代の言葉ですが、それ以前は幕府領と呼ばれていました。
幕府領には、代官所があったんですね。でも30年くらいで閉鎖されてしまうんです。
240年間は自治の町だった小布施
市村:徳川260年っていうけど、お代官がいたのは最初の30年間だけなんです。
あとの230年間は、自治と言うか、みんなが勝手にやってたんですよ。だから、お上に何かをやってもらうとか、何かが押さえつけられてできないとかいうことはなかったんだろうと思います。
だから昔から、自分たちでやってきたという部分があるのでしょうね。
誰かが胴元になって水路を作ったり、斜傾地に棚田を作るとかですね。
補助金は既製品
齋藤:自分たちでやると言っても、他の地域では補助金漬けになってしまったりという状況があると思います。小布施の方は経済を作っていこうという意識もありますよね。
市村:補助金っていうのは既製品なんですよね。
既製品でいくらやっても、それは情報性もないし、面白みもないし、魅力もないから人も来てくれなくなります。
補助金と引き換えに、やってることが既製品になっちゃってるという価値の無さに早く気づかないと。
補助金じゃないから自由にできる、自由にできるから貴重性のあることができる、ということですよね。
小布施の得意技は「蟻地獄」
齋藤:小布施で、先人から引き継いでいる思いとか、大事なこととは何でしょうか。
市村:町長の言葉を借りれば、小布施の得意技は蟻地獄ですよということになります。
小布施の強みとは、過激に言うと、自分たちがバカだと知っている人が結構多いということです。
これは大事なことなんですよ。
だからこそ、外の人の知恵や、熱、全てを取り入れていかないととなるわけです。
時代に合わせた魅力的なものを提示する
齋藤:そのときにはやっぱり、外の人が惹きつけられる理由があるってことですよね?
市村:それはやっぱり外の人が感じる魅力っていうのは、どの時代もその時代にあったものを用意していかないといけないですよね。
それしかありません。
情報の発生こそ価値
市村:情報の発信ってよく言いますが、発信というのは消費活動なんですね。
なのですぐなくなるし、面白くなくなっちゃうんです。
小布施がそうすべきと考えているのは、情報の発生です。
AとBが小布施にやってきて、それを小布施のCがもてなしてくれた。そしてAとBでごにょごにょっとなって、新しいものが生まれる。Cはさておき(笑)。それで構わないと思っているんですよ。