「すだち」よりも果実が大きく、「かぼす」より香りがマイルドで、「ゆす」より皮が薄くて果汁が豊富な果物「へべす」を知っていますか。
宮崎県日向市の特産品です。
どんな料理にも合う万能選手として活用される果物です。
日向市で、成合へべす園を営むのが成合利浩さんのもとを、全国で地域の仕事づくりを行うNPO法人まちづくりGIFTの齋藤潤一さんが訪ねました。
成合さんは、へべす以外にも、野菜や果樹を育てる方が多い中、成合さんはへべす専門農家として取り組まれています。
へべす栽培の背後にある思いを聞きました。
安心・安全なへべすの栽培を追求
成合さんは、日向市生まれで、へべす農園の2代目です。
農薬を使わず、安心を大事にした、味の良いへべすの栽培を追求されています。
「へべす」への思いを伺いました。
300本を育てるへべす農家
齋藤: どのようにへべす栽培をされているのですか
自分の農園で、300本ほどのへべすを育てています。
化学肥料を使わず、自分のところで発酵有機堆肥を作り、香りの強い外皮まで安心して使える様に無農薬で栽培しています。
既存の販路だけでは売上が厳しくなっていくことを感じて、販売方法の切り替えに取り組みました。
直販の方にこそ未来があると考えて、取り組んでいます。
自然の美味しいへべすを届けたい
齋藤: へべす栽培はどのようにされているのですか
ほったらかしです。
草刈りをする程度ですね。
ある程度は、木の力に任せるという方針で、人の手でいろいろせずに、自然にまかせた方が野性的になるだろうと思っています。
そうすれば収穫したへべすも自然のへべすだと言えますし、見てくれよりも味で、美味しいへべすが収穫できています。
齋藤: へべすの魅力とは何でしょうか
「かぼす」や「すだち」とはまた違う、邪魔をしない美味しさですね。
焼酎に絞って飲むのですが、その味に惚れ込みました。
味が上品で、お客さんにも最高ですね、と言われるのでますます惚れ込んでいます。
売る人がいないという課題を解決したい
齋藤: へべすを取り巻く課題はありますか
売る人がいないことです。
現在82名の生産者がいますが、そのほとんどが高齢者で、へべす専業という方は多くありません。
「売ること」に対して生産者の意識が高くないため、自分で売ろうというようなチャレンジもされなくなっています。
齋藤: 専業が少ない理由は何でしょうか
単価が低いことが原因となっていると思います。
それは売ることをしていないことによって単価がさがり、という循環の結果となっていると思います。
へべす農家がいなくなれば、日向市の特産品がなくなることになります。
そういう危機感を感じていますし、だからこそ私は、直販であったり、加工品であったり、できることを全てしていくという気持ちですね。
そしてどんどん真似してくれたらいいなと思っています。
全国に「へべす」の魅力を届けたい
齋藤: 今やってみたいことはありますか
行商がしたいんですよ。
トラックに満載つんで、日南などの南部に行きたいんですね。
「へべす」を知っているけど、使っていないという地域にもっていきたいと思っています。
宮崎からはじめて、九州、全国に広めていきたいですね。
「かぼす」という王者がいるので、そこに挑戦していくのが良いと思っています。
「かぼす」よりも「へべす」ではなくて、「かぼす」も良いね、「へべす」も良いねというふうにしていきたいと考えています。
買いたい、贈りたいというブームを作っていきます。
自ら挑戦して、実証していく
齋藤: 成合さんは「へべすマン」としても活躍されています
へべすのファンを増やしていかないといけないと思っています。
どこでも使われるタイミングがあるのだけど、利益があがらないと生産者は増えません。
今も多いのは兼業農家なんです。
私は、専業農家をもっと作っていきたいと考えています。
そのために、加工品をやったり、私自身が実証していかないといけないと思います。
インターネット販売を通しても、全国で買っていただける方がいます。
「あなたのへべすを欲しい」と言っていただけると、やる気になりますね。
自ら動いてファンを作る
成合さんは、インタビュー中にもあるように、自ら動くことで新しい「へべす」ファンを作っていっています。
既存の仕組みだけでは、へべすの専業農家を増やせないからこそ、新しいチャレンジを常に仕掛けていらっしゃいます。
「有機へべすを世界に届けたい」という野望もあるそうです。
「日向のへべす」が、今後どのような広がりを見せるのか期待が高まります。