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グンゼと言えば、肌着やストッキングのメーカーという認識の方も多いかもしれません。
東証一部上場企業ともなっており、男性用肌着・インナーを主とする日本の繊維メーカーという範囲に留まらず、様々な事業領域を手掛ける大企業です。
しかし、その始まりの地は、京都府北部に位置する綾部市。
実はグンゼは、地域に根ざすローカルベンチャーから成長した企業なのです。
「グンゼ」に学ぶローカルベンチャーに必要な3つのこと
1. 地域の未来を示すこと
「グンゼ」の名の由来は「郡是」。
グンゼの創業の地は、旧何鹿郡(現在の綾部市)です。
1896年に、波多野鶴吉により創業されました。
当時、産業立国策を唱えて全国を回っていた元官僚前田正名氏の、「今日の急務は、国是、県是、郡是、村是を定むるにあり」という言葉に影響を受け、「郡是製絲株式會社」と名付けられました。
「郡」とは何鹿郡を指し、「是」は方針という意味です。
つまり波多野鶴吉は、何鹿郡の進むべき道として、蚕糸業発展を志し、その想いを社名に込めたのです。
2. 地域経済を守るために産業を主導できる存在になること
波多野鶴吉は、地域の産業である蚕糸を生産するために必要な産業である、栽桑・製種・養蚕業などを保護し、利益をなくさないためには、蚕糸業全般を主導できる強力な製糸業こそが必要と考えました。
そこで「蚕業奨励の機関」として、会社設立の協力を呼びかけました。
3. 事業は人であるということ
郡是製絲株式會社は、比較的早い段階から、生糸の海外輸出を行う方針を取ります。
当時の繰糸技術は、工女の精神的、肉体的な労働に依存していたので、心を込めた丁寧な仕事ができるように、人間尊重の経営を貫いたのだといいます。
事業が拡大してくると、「事業は人なり、善い人が善い糸をつくる」として、社内に教育部を設置。
人間尊重の精神に基づき、社長以下全社員にわたる教育が実施されました。
教育は事業の手段ではなく、従業員を愛し、一生幸福であることを願って教え導くことが大切であると説いたといわれています。
その様子は、「表から見れば工場、裏から見れば学校」という当時の郡是製絲株式會社を表した言葉にあらわれています。
地域に根ざすからこそ、地域の未来を考える
最近では、「企業の社会的責任(CSR)」がさけばれるようになっていますが、グンゼはこのように成り立ちそのものが「地域のため」だったことがわかります。
地域資源を活かし、雇用を生み、文化を作る。
グンゼが歩んだ道は、現在のローカルベンチャーにとっても、参考になる部分が多いのではないでしょうか。