多くの学生は、福利厚生などの制度が整っている会社に就職したいと言いますよね。でも、既にある仕組みに乗っかるのではなく、ないものを自らつくり出す選択肢も考えてもらいたいと思っています。今ある制度だって、誰かが切り拓いて整えた制度ですよね。だから、学生たちには、自分で道を切り拓く、最初の一歩を踏み出す人になってほしいなあと思っています。
自ら人を切り拓く女性が増えていくと、日本も変わると思います。最終的には、ハナラボのインターン生から日本発の女性首相が誕生したら嬉しいですね。それも、今までにいないタイプの首相。女性の強みを活かした首相です。
女性としてどう生きるべきか?
私は東京女子大出身で、元千葉県知事の堂本さんや瀬戸内寂聴さんのように、自ら道を切り拓いた先輩がたくさんいます。大学を通じて、「女性としてどう生きるべき」、「社会の中での役割」、「どう働いていくべきか」等を学びました。私の両親が離婚していたこともあって、女性が自立して、働いていく事を自然と意識していたんですよね。
一生働き続けるためには「手に職」。そう思って、新卒でIT企業にテクニカルライターという専門職で就職しました。そこで、執筆や編集について学んだ後、Webの仕事に関わるようになり、フリーランスのWebデザイナーとして独立したんです。とはいえ、デザインについてきちんと学んでいないことがずっと引っかかっていました。それで、デザインの本質を学びたいと思い、武蔵野美術大学(通信教育)に入学しました。
デザインスキルを身につけようと入った武蔵野美術大学でしたが、入学してみると自分の問題意識や社会課題に向き合うことが求められました。消費を生むための商業デザインではなく、課題提起や課題解決のためのコミュニケーションデザインを中心に学ぶ学科だったんです。まさにそれこそがデザインの本質だったのですが、知らないで入学するとは自分でもビックリですね(笑)。
67歳で教員免許を取得した母から学んだチャレンジ精神
私の母は67歳で教員免許を取りました。母のチャレンジ精神は、自分の性格にも大きな影響を与えていると思います。教師として活動することは難しいのに、65歳を過ぎてから、校長先生ですら年下の学校に教育実習に行っていました。面白いですよね。年齢に関係なく、チャレンジ精神が旺盛なんです。
女子学生の最も身近なロールモデルは、母親です。でも、学生の母親世代は、専業主婦が多いんですよね。子育てしながら働く女性と出会う機会が殆どないんです。だから、自分の母親以外の生き方をしている人に出会ってほしい、自分の可能性を広げてほしいという想いから「女子学生のための就活応援サイト ハナジョブ」を立ち上げました。さらに学生と社会人が直接フラットに話せる場を作りたいと思って「学生と社会人の女子会」という名のワークショップを始めました。
学生のために手を出さない
ハナジョブでは、学生がインタビュアーで、取材依頼も全部学生がやるんです。担当を決めて責任を持ってやらないと、どこかで人任せになってしまうんですよね。だから、ぎりぎりまで手を出さないようにしています。これがなかなか難しいんですけど(笑)。
そうやって女子大生と活動している中で、彼女たちの潜在能力がすごく高いことに気づいたんです。でも、学生たちに聞くと、なかなか活動する場がないと。活動する場がなければ、自分の強みに気づくこともできない。
私たちが考える女性の強みは「思わず共感してしまう力」「発想を広げる力」「すぐに変化できる柔軟性」なんですけど、その強みって今の日本ではあまり評価されない能力なんです。まさに、イノベーション人材と言われる人が持っている強みなんですけどね。その力を持っていても使い方がわからなければ、社会に出てからその力を発揮することが難しい。だったら、その力を伸ばして発揮する場を作ろうと、ハナラボ(ハナジョブ・イノベーションラボ)を作りました。ハナラボは、女子学生が地域課題、社会課題の解決に挑むプロジェクトです。
女子大生による地域活性化プロジェクト
現在は、山梨県北杜市で女子学生が地域のみなさんと一緒に課題を見つけ、解決のアイデアを提案、実施する活動を行なっています。現場に入って地域問題を解決する活動は、共感力や柔軟性が高い女性に向いていると思っています。
例えば、限界集落で、学生が多様なステークホルダーと高齢者の方々をつなげる潤滑油としての役割で貢献できる形が見えてきました。何かを始めるときに、すでに人間関係が出来ていれば、学生でもコーディネーターとしての役割を果たせます。
正直課題もいっぱいあります。大変と思ったら大変ですが、自分の目標設定がきちんとあれば、乗り換えることは苦ではないです。物事をプラス思考で考えて行動していれば、どんな課題でも乗り越えられるんじゃないかと思っています。
フィードバックで人は成長する
私は、女性の味方ではあるのですが、誰でも応援するわけではありません。がんばっている人は応援しますが、がんばっていなかったら応援しません(笑)。
最初からうまく行くことなど殆どないですよね。そこで挫けてしまう人も少なくないと思います。でも、近くにいる人がちゃんと見守ってフィードバックすれば続きます。自分が役に立っていると感じられれば、もっとがんばろうって思いますよね。期待しているということを、周りの人が伝えることが大事です。続けることで、様々な壁を乗り越えて成長しますから。
自分の中の問題意識に目を向けることが行動につながる
就職活動の影響もあって「早くやりがいを探さないといけない」という風潮がありますが、私自身はやりたいことが見つかったのは社会人になってしばらくしてから。だから、模索して行動していれば、いつかは必ず自分がやりたいことがみつかると思っています。
人は、それぞれ小さくても問題意識をもっているはずです。その問題意識が、「自分がやらないと他に誰がやるのか?」と言う気持ちになって、行動につながるんだと思います。使命感がないと自己犠牲になるので、問題意識がないと継続しにくいですよね。
社会はいろいろな役割の人がいて成り立っています。前に立つ人がえらいのではなく、それは単なる役割。だから「人のサポート」がやりたいことだったら、それを徹底的にやればいいと思います。誰にでも可能性があるから、やる気があって行動すれば道は拓けるはずなんです。
今、ハナラボでは、前述した、女子大生による地域活性化プロジェクトに力を入れています。地域を巻き込んだこのプロジェクトも、最初は、小さな問題意識からスタートしています。行動し、発信していく過程で、同じ問題意識を持った人が、賛同者・協力者になってくれました。
そして問題意識は、アイデアになり、形になってきています。ハナラボもスタートしたばかりで、まだまだこれからですが、社会変革の担い手を輩出するべく、行動し続けます。
ハナラボは、女子学生が地域のみなさんと一緒に課題を見つけ、解決のアイデアを提案、実施までやってしまおう!というプロジェクトです。2012年春のインターンシップでは、山梨県北杜市で「未来シナリオ」を作ります。