農家になるかダンサーになるか、自分の生きる場所-石川県移住

平成29年、自然栽培で移住促進をしている石川県羽咋市へ、東京から単身で移住してきた水野 早乙美(みずのさとみ)さん。

JAはくいの「のと里山農業塾」第3期塾生で、羽咋市内でイチゴをはじめとしたベリー類の自然栽培を行い、さまざまな加工品を作って販売も手がける6次産業農家だ。そんな水野さんに、羽咋での自然栽培の農家の実情を聞いてみた。

地方移住を決めるまで

3年前、「パーマカルチャー」の本を読んで、これからの地球環境を考える農法への関心が高まった水野さんは、関東周辺でその農法を教えてくれる実践塾探していた。そんな時、羽咋市の隣町にある父親の墓参りの帰り道、ウェブで木村秋則さんの実践塾のことを知った。

実はその道すがら、初めて羽咋という地名を知り、「へえー、これではくいって読むんだ」と感心していたところに、自分が探していた塾があることを知って、なにか不思議な縁を感じ、瞬時に「これ通おう!」と思ったそうだ。

千葉県での就農予定から石川県

一年間、約20回の講義は東京から通った。修了後は千葉で就農するつもりだったが自然栽培に対して行政のサポートがないことと、当初畑を紹介してくれた方との意見の相違があり就農が白紙に戻ってしまった。

そんな折、農業塾の同期生から、「羽咋で畑を一枚借りられるけど羽咋でやってみない?」と誘われたのだった。

農家になるかダンサーになるか

ベリーダンスをしていた水野さんは、同じころ、憧れだったダンサーチームのオーディションに受かっていた。

移住する際に一番躊躇するのは、普通は仕事のこととか家族のことなんでしょうが、私はダンスのことで一番悩みました。でも、私にとって自然栽培とは農業とか農法とかではなく、自分の生き方に通じるもの。

「次世代に私達や前の世代が壊してしまったものをきれいにして返してあげたい」という信念が勝りました。ダンスのキャリアよりも、いつわりのない自分を生きる方を選んだんです。まあ、ベリーダンスはここにいてもできることですしね。

地方移住のリアル

墓参りでたまに通るくらいの縁しかなかったほぼ未知の土地に、女性がひとりで移住するのはすごく勇気がいったのではないだろうか。

私は勇気がある方で、行動力もある方なので、その点は普通の人よりもハードルは低かったと思います。それに農業塾に通っていたおかげで、いつの間にか知り合いがたくさんできていたので、淋しいとか心細いということは一切ありませんでした。

生活面ではJAのアルバイトも決まり、車を持っていなかったが、職場も畑も自転車で行けるところにいい賃貸物件を見つけることもでき、準備万端整っての移住だった。

地方で暮らす:農業が楽しい

農業はとにかく楽しくて、暮らしとか精神面でも全く問題はないという水野さん。地域に馴染み、東京よりも知り合いが多くなったと言う。
自然栽培は近隣の慣行栽培の農家とトラブルになることもあると聞くが、その点はどうなのだろうか?

私はここでは宇宙人らしくて、誰も何も言えないみたい。だって、東京から女の子がひとりで移住してきて自然栽培をやっている、これはここの人たちの理解を超えた存在、つまり宇宙人というわけ。私の草原のような畑を見て、「こんな難儀なとこでようやるなぁ」とはよく言われますけど。

持ち前の行動力と経験から、JAでは自然栽培の野菜や米の営業を買って出て、東京への販路拡大も行ったという。

地方で暮らす:課題と問題

国や市から助成を受けられるのは5年以内。だから、それまでに自立して生計を立てられるようにしないといけない。そのためには現在の規模では無理。農地も拡大しないといけないが、実はその農地がなかなかないのが、今抱えている問題だという。

慣行栽培に使っていた畑を自然栽培に移行するには最低でも3年はかかる。それにある程度大きな畑となるとなかなかない。さらに、借地だと持ち主が代替わりした際に、返さなくていけなくなることもあるそうで、そうすると農業計画が台無しになってしまう。同じ悩みを抱えている先輩農家さんたちも多いそうだ。

今は自分の土地を持ったほうがいいと思って、いろいろな人に声をかけて探してもらっています。

耕したくても耕せない土地が多い

この農地の問題、実は全国的にも深刻化している。耕作放棄地など、見えるところにはたくさん良さそうな土地はあるが、持ち主がわからない、持ち主と連絡がとれないなど、手をつけることはできないという問題。これは羽咋市に限ったことではない。

羽咋市では、この農地の問題と、さらに住まいの問題がネックとなって、自然栽培の移住者の受け入れをなかなか増やせずにいる。空き家もたくさんあるが、売るならいいが貸すのは嫌だという家主が多いのだという。

地方で暮らす:これからの目標や夢

マリンスポーツのインストラクターをしていたこともあるくらい、海が好きという水野さんは最近、サーフィンを始めた。

この一年半は楽しかったからついつい自然栽培だけに没頭していましたけど、人間はやっぱり息抜きが必要ですよね。サーフィンでもやろうかと軽い気持ちで始めたらハマっちゃいました。海の近くにいい土地があればいいな、なんて思ったりしています。

自然栽培は暮らしの一部

1ヘクタールほどの土地を持って、パーマカルチャー的な暮らしを営むことが目標です。 その中でプロとして自然栽培農業を営むことができれば、自分の暮らし全般も自分の目標とするビジョンに近づくだろうなと思っています。

水野さんにとって、自然栽培農家は過程であって、目的ではない。その先に、すべての暮らしが持続可能で、次世代にも引き継げるような場所をつくるという目標がある。

それが、ちゃんと地球と共生する暮らしになっていると分かってもらえれば、私みたいな人がどんどん増えて、地球全体もより持続可能なものになっていくのではないでしょうか。そんなモデルになる暮らしを作りたいです。

羽咋市から地球規模のことを考える水野さん。その視点はやっぱり宇宙人っぽいかもしれないが、だとしても物語に登場する地球を侵略する不気味なヤツではなく、地球を救ってくれるとってもチャーミングな宇宙人だ。

地方移住:自分の生きる場所はここ

「羽咋にしばらくいるつもりですか?」という質問には、「え!? 帰るつもりなんてないですよ!」ときっぱり。羽咋の人たちにたくさん世話になり、「一生かけて恩返しをしていきたい」と笑顔で話す。

移住をする目的や、移住先での目標は人それぞれだが、自分の生き方を貫くために移住した水野さんの選択は、今の暮らし方に閉塞感を感じている人たちにとって、少なからず参考になるのではないかと思う。

PR for こゆ財団(宮崎県)
地方×求人:地域の未来を創る起業家10名・10事業を募集!
世界一チャレンジしやすいまち
宮崎に移住して、
地方の課題を解決する。
10のプロジェクトで、
10人の起業家を募集中!

関連記事一覧