生息するクマの推定6割捕殺、マタギの本家・秋田の課題

「マタギ」。クマなどの大型獣を捕獲する技術によって、集団で狩猟を行う人々をそう呼ぶ。

全国のマタギ仲間から、「本家」と呼ばれているマタギがある。秋田県の北部に位置する、北秋田市の阿仁(あに)のマタギだ。

阿仁のマタギは、全国のマタギ仲間から「本家」と敬われている。その理由は、1800年代前半以降、阿仁のマタギたちが旅先で婿養子などで定着し、中部東北の村々に分家のような形で猟師組が形成されていったからである。

□出典:あきた森づくり活動サポートセンター

そんな秋田県における「クマの捕殺数」が、問題視されている。

クマの捕殺と住民の苦悩

環境省が発表した「クマ類の捕獲数[速報値]」によれば、秋田県で捕殺されたクマ類の数は、平成29年(11月分までの暫定値)で、既に前年度の1.7倍を越え、813頭にも及んだ。

これは、全国で最も高い数値だ。他の都道府県では多い所でも約150〜300頭という状況の中、2位である広大な北海道の766頭を追い越して、圧倒的な数字となっている。

絶滅が危惧されるツキノワグマ

狩猟対象の多くを占めるツキノワグマは、国際的にも絶滅が危惧される生き物だ。この捕獲数に対して、自然保護団体が駆除の中止を求めている。

「日本熊森(くまもり)協会」(本部・兵庫県、会員・約1万7千人)は昨年10月、「根絶殺害に近い」と、秋田県の佐竹敬久知事に有害駆除と冬の猟の中止を強く求める要望書を提出した。

□出典:朝日新聞

この動きは、ニュースでも取り上げられ、多くの人々の関心を集めた。

死傷者が出ている秋田の現場

しかし、地域で暮らす住民は、クマによる被害に不安を抱えている。

その背景には、秋田県で近年増加中のクマによる人身被害がある。平成28年には、例年の3倍近い869件の目撃があり、19人が被害にあい、内4名が死亡した。平成29年は、死傷者・目撃件数が更に増えたという。

行政側が住民の要請に応じた結果、必然的に捕殺数も増え続けている。

これを受けて、秋田県はクマとの共存を図ろうと、カメラによる生息調査やクマの出没しにくい環境づくりなど、様々な取り組みを行なっている。

クマと共に生きていくために

秋田のマタギは、山や自然、そこで生きるものを尊び、共に生きてきた歴史がある。クマの胆は、万病に効く薬(漢方薬の中でも最高級品)として取引され、マタギの貴重な収入源とされた。

北秋田市の「阿仁マタギの里」内には、東北地方唯一の熊牧場「くまくま園(旧:阿仁熊牧場)」があり、訪れた人々をクマが笑顔にしている。

共存の道に必要なこと

単に、クマに対する恐怖から、捕殺すれば良いということにはならない。様々な要因があるにせよ、クマ被害の大きな原因は人間側にあるからだ。

山の自然を保護すること、クマの餌となるようなゴミを放置しないことなどの根本的なことから、秋田県は、クマの生息域と人の生活圏を区分した上で、行政を含めた住民自身がきちんと管理していくことを目指すとしている。

登山の際はガイドを活用

人の生活圏におけるクマ被害を減らす努力をすると同時に、登山中もクマに注意が必要だ。

近年の登山ブームにより、登山をする人の層が広がっている。そのため、登山する人たちの中には、経験の浅い人も多い。

そんな人たちがクマ被害にあわないための施策の1つとして、登山ガイドや地域にあるガイド団体の利用を検討することが挙げられる。

先日、北秋田市で、地域や山の魅力を発信し続ける大川美紀さんという登山ガイドにお話を伺った。次回記事では、そのインタビューをお伝えしたい。

参考資料

環境省「クマ類の捕獲数(許可捕獲数)について[速報値]」平成30年1月9日
秋田県「今後のツキノワグマ被害防止対策について」

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