年間3757件の飲酒事故、地方発のアプリで社会課題を解決

高橋慶彦


MACHI LOG 東北編集長

3,757件。これは、2016年に発生した飲酒運転の事故件数だ。

年末年始の忘年会・新年会で、お酒を飲む機会が増えた人も多いだろう。それは、飲酒運転の事故件数にも影響する。実際、警察庁の報告を見ても、12月に発生する飲酒事故が年間で最も多い。

法改正により、20年前と比較すれば、飲酒事故は大幅に減少した。しかし、それでも、飲酒運転による死亡事故は年間200件を超えている。

飲酒運転の現状と対策

国税庁の統計情報によれば、私の故郷である秋田県は、20歳以上の人口1人あたり日本酒の摂取量がトップクラスの地域だ。

日本酒の生産量も多く、酒どころとして知られる秋田県だが、昔に比べて飲酒運転に対する意識はかなり高まっている。

秋田県は、摂取量が多いにも関わらず、免許保有者数あたりの事故件数の割合でみると、トップ5に入るぐらい全国的には飲酒事故が少ない地域である。

法改正と飲酒運転の減少

日本の飲酒運転事故の件数は、2000年度以降、何度か行われた法改正に伴い、大幅に減少した。

□平成13年の道路交通法改正:罰則の引き上げ
□平成13年の刑法改正:危険運転致死傷罪の新設
□平成16年の道路交通法改正:罰則の引き上げ
□平成16年の刑法改正:法定刑の引き上げ
□平成18年の刑法改正:罰金刑の引き上げ
□平成19年の刑法改正:自動車運転過失致死傷罪の新設
□平成19年の道路交通法改正:罰則の引き上げ・幇助行為への罰則整備

法改正により、罰金は以前の10倍の金額になり、運転者以外にも幇助した者や危険運転者への厳罰が行われることになった。それが、人々の飲酒運転への問題意識を高め、事故件数減少に寄与したと考えられる。

飲んだら運転しない

運転によって人命を奪うあるいは失う危険性を著しく高める飲酒運転は、決してしてはいけない行為だ。秋田県を含め、地方の現場では、以下のいずれかで飲酒運転を避けているはずだ。

1)そもそも、飲まない(地方では少ない選択)
2)家族や友人にお願いして迎えに来てもらう
3)運転代行を利用する(地方でタクシー利用は少ない)
4)安いホテルや友人宅に宿泊する(レアケース)

秋田県の私の周囲では、2番と3番が多い。早い時間であれば家族や友人にお願いして、遅い時間なら代行を使うという人もいる。

これは、多くの家庭で自家用車を1人1台持っていること、無料で使用できる駐車場に翌日まで車を置いておけること、代行の利用が慣習化していることが理由として挙げられる。

運転代行で飲酒事故を減らす

平成14年に、警察庁と国土交通省が共管し、「自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律(自動車運転代行業法)」が施行された。

その結果、10年間で認定業者が約4,000者から約9,000者に増加し、国としても、運転代行業が飲酒運転根絶のために大きな役割を担っているとしている。

運転代行を利用する上での課題

警察庁と国土交通省の実態調査を見てみると、飲食店等の経営者の立場からも「運転代行業が普及した方が良い(75%以上)」という回答がある。

その一方で、半数以上の一般ドライバーから以下の2つの問題が挙げられている。

□料金システムが不透明
□安心できる業者が分からない

確かに実際利用してみると、利用者から聞かないと目的地に到着するまで料金体系は知らされず、中には少しボッタクリのような金額を言われることもある。

運転代行アプリで課題を解決

このような課題を解決し、運転代行の利用を促進することで、飲酒運転の根絶に貢献しようとアプリを開発した企業が秋田県にある。

運転代行業者の配車から支払いまで一括で行えるアプリ「DAIKO」を開発したのが、秋田県秋田市に本社を置くシステム開発会社である株式会社トラパンツだ。

現在、秋田市内限定でテスト運用が行われている。出発地点と目的地を入力すると概算料金や代行の到着予定時間が表示され、到着後にクレジットカードでの支払いまでアプリ内で完了できる。代行業者にとっても、初期費用や初期設備などは不要となっており、運賃に応じた手数料を支払うモデルであるため、導入もし易い。

客側も運転手側も双方に評価できる機能が組み込まれており、お互いが安心して利用できるのも特徴の1つだ。

地方発のソーシャルビジネスが社会課題を解決

特定の人や地域にとっての「当たり前」をテクノロジーの力で仕組み化し、ビジネスの力で持続可能なものにすることで、社会課題を解決するソーシャルビジネスが日本の地方で生まれ始めている。

運転代行アプリも、秋田県内で効果を発揮できれば、運転代行の利用が慣習化している他の東北地方や北陸を中心に、全国各地の地方への展開もあり得る。

そのように、まずは身近な問題を解決することから、イノベーションは起きていくのだ。

安全は幸福な地域づくりの基本

人が幸福に生きる上で、「安全」は重要な要素(マズローの欲求:第二階層「安全欲求」)と言える。地域の飲酒事故が少なければ少ないほど、地域の安全性は高まる。

今回の事例のように、ビジネスの力で地域の安全性を高めることに寄与することは、幸福な地域づくりへ貢献することになるはずだ。

秋田は、安全で幸福な地域づくりへの道を現場レベルで歩もうとしている。

参考資料

□警察庁「平成28年における交通事故の発生状況」
□警察庁「飲酒運転事故関連統計資料」
□政策研究大学院大学 三上悠子「一連の飲酒運転厳罰化の効果に関する研究」
□警察庁・国土交通省「自動車運転代行業の実態調査の結果」

ABOUTこの記事をかいた人

高橋慶彦

「東北の魅力を世界に伝える」を使命に活動中。MACHI LOG 東北編集長、広告代理店・東北プリントワールド株式会社と有限会社雄物川印刷の代表取締役。PR・販促支援で企業・官公庁の実績多数。