76万人の潜在保育士は、子育ての課題「孤育て」を解決できるか?

少子高齢化が社会問題化する中で、子育て環境の整備は日本全体での喫緊の課題となっています。

子どもを生みやすく、育てやすい環境を作ることが求められている中で、十分な整備が整わないために、孤独な子育てに陥ってしまう「孤育て」という問題が指摘され始めています。

子育てを取り巻く課題「孤育て」

「孤育て」とは、誰にも頼れない環境で孤独に孤育てせざるを得ない状態を指し、様々な弊害が指摘されている社会問題です。

背景には、住環境の変化が上げられます。核家族化が進み、夫婦だけでなくその両親も含めた家族での子育てができにくくなったこと、また地域全体で子どもをみて、育てようということも難しくなっていることなどが上げられます。

具体的な理由としては、転勤などによる知らない取りへの転居、職場以外でのコミュニティに属していないことによる、産後休職中の居場所のなさ、両親に頼れないなど、つながりが築けず、ひとりで子育てという状況に陥ってしまっていることがわかります。

孤育ての問題は、社会全体の問題

孤育ては、話し相手がいないことによる閉塞感や、自分の時間がもてないことによるストレス、毎日に張り合いがなくうつ症状を引き起こすなど、悪影響が指摘されています。

それだけではなく、孤育てに対する意欲低下はネグレクトや、場合によっては虐待に発展することがあるなど、子育てに大きな悪影響を与える可能性があるといいます。

孤育ての問題は、決して誰かに特有の個別な問題ではなく、社会全体の問題であるといえます。

孤育て環境の改善を国も掲げる

国も、この社会課題解決に動き出しています。ひとつは、「子育て世代包括支援センター」の開設です。

妊娠期から子育て期にわたるまで、地域の特性に応じ、「専門的な知見」と「当事者目線」の両方の視点を活かし、必要な情報を共有して、切れ目なく支援すること(引用:子育て世代包括支援センターと利用者支援事業等の関係等について)

ということを掲げ、ワンストップ相談窓口を設置し、地域の関連機関とのネットワーク化を行なうことで、子育て世代を孤独にさせないための窓口となっています。

2015年より試験的に始まり、段階的に全国に拡大していくとしています。

また安心して「子どもを預けられる」環境整備のために、保育士の採用拡大や、賃金アップによる地位向上などもはかられています。

待機児童の数は都市部では2万人を超える

保育所等に入りたいけど入れないという、待機児童の数は都市部では2万人を超えるともいわれ、需要に対応するために、保育施設の新設などが行われています。

しかし保育士の採用は難航しており、労働条件や賃金面など課題を残しています。

潜在保育士は76万人

保育士の数は、どのような変化を見せているのでしょうか。実は、保育士の資格を保有する方は年々増えています。しかし一方で、保育士は足りないという状態にあります。

これは、前述した労働条件や賃金面などの課題が大きく、就職したとしても早くに離職してしまうというケースも多く上がっているといいます。

保育士の資格を有しながら保育関係の職に就いていない人数=潜在保育士の人数は、全国で約76万人とされており、国が推計している「足りない保育士の数」が約7万人であることを考えると、ゆうにその10倍の人数の力が活用されずに眠っていることになります。

潜在保育士のうち、約30%は専業主婦

子育てが一段落してからの社会復帰等での保育士採用の拡大はもちろん、従来の枠組みにとらわれない保育士の技術を活用する仕組みづくりが求められているといえます。

3方良しのビジネスモデルを生み出したヨガインストラクター

「孤育て」という社会課題に注目し、解決しようと動き出した方がいます。茨城県県北地域を中心に、ヨガのインストラクターとして活躍する高橋美紀さんです。

特定の教室等を持たないスタイルで、社会人を対象とした夜コース、親子でできるヨガ教室など、対象に合わせて、健康増進のためのヨガのレッスンを提供しています。

自らの子育ての経験を課題解決に活かす。

高橋さん自身も、2児のママでもあることから、赤ちゃんをもつママのためのクラスを開講しています。そこで浮彫になったのは、「レッスンに出たいけど出られない」という方々でした。

アンケートをとってみると、「子どもを預けられない」という方や、「疲弊して体力、気力がない」という理由で参加できないことがわかりました。

この孤育てによる弊害は、特に体力低下や気力低下に結びつくと、子育てに悪影響を与えてしまいます。そこで、何か方法は無いかを考えました。(茨城ビジネスプランコンテストのプレゼンテーションより)

保育士の方が子どもたちの面倒を一時的に見てくれる仕組みを導入する

そこで高橋さんが考えたのは、保育士の方が子どもたちの面倒を一時的に見てくれる仕組みを導入することでした。

この仕組をつくることで、子育て世代の方はヨガのレッスンを受けることができ、潜在保育士の方は、その技能の用いて貢献し、賃金を得ることができ、さらに社会復帰の一歩にもなっています。

ヨガによる健康増進効果や、リフレッシュ効果により、子育ての疲労も改善できるなど、新しい子育て支援のモデルとなっています。

潜在保育士の方が担える仕事も増やしていきたい

この取り組みは地域の課題を解決するモデルケースとなる可能性があるものでしょう。

何か新しいことを生み出すのではなく、いま活用されていない資源として、潜在保育士を発見し、子どもが預けられないことによるストレスを解消、そしてヨガのレッスンを通じた健康増進。

この取り組みは決して特別ではないからこそ、大きな可能性を秘めているといえます。

今後は、テストケースを増やし、潜在保育士の方が担える仕事も増やしていきたいと高橋さんが言うように、必ずしも従来の枠組みだけが、子育て環境の改善になるとはいえません。

この取り組みのような短時間でのリフレッシュ環境の整備や、ママたちの活躍の場を作るなど、新しい視点が不可欠でしょう。今後も、社会課題解決への取り組みが続くことが期待されます。

保育士等に関する関係資料 – 厚生労働省

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