世界的なアウトドア用品ブランドとして知られ、新潟県燕市に本社を置くSnow Peak。その商品は、志・ミッションが詰まった、単なる製品でなく、その人へのライフスタイルを提案するもの。そんな心が伝わるものづくりを、どのようにして実現されているのでしょうか。
真北の方角はどっちだろうか?
「会社の経営にとって、『志・ミッション』とは、シンプルだけどもっとも大切なことです。私達の真北の方角はどっちだろうか?ということは常に意識しなければなりません。絶対ぶれてはいけないものなのです。」とSnow Peak社長の山井太さんはおっしゃいます。実際、Snow Peak社では志や創業の精神を明確にし、いつも意識して経営できるように、ミッションステートメント「THE Snow Peak Way」を経営の中核に置き、それを顧客や協力者にも公表していらっしゃいます。
「The Snow Peak Way」
(http://www.snowpeak.co.jp/about/01missionstatement.htmlより)
私達スノーピークは、一人一人の個性が最も重要であると自覚し、
同じ目標を共有する真の信頼で力を合わせ、
自然志向のライフスタイルを提案し実現するリーディングカンパニーをつくり上げよう。
私達は常に変化し、革新を起こし、時代の流れを変えていきます。
私達は自らもユーザーであるという立場から考え、
お互いが感動できるモノやサービスを提供します。
私達は私達に関わる全てのものに良い影響を与えます。
無意識に行動をしていくと、だんだんといろんな方向に分散していき、またたくさんの人が関わってくると、それぞれが思い思いの方向に進み、最初の想いからブレていってしまうことがよくあります。そのため、「志・ミッション」というのは非常に大切なものであって、「志・ミッション」を軸としてまとめる役割を果たします。
これは地域活性の活動についても活かすことができます。実際に燕三条プライドプロジェクトという、三条市と燕市が一体化した地域ブランド「燕三条ブランド」の確立に取り組むプロジェクトでも、ミッションが掲げられ、参加するみんなが進む方向を一つにする役割を果たしています。
また、「志・ミッション」は迷ったときの判断基準になります。その案は「志・ミッション」に適合しているかのか、より「志・ミッション」を成し遂げるために最適なのはどちらか、といった機能も果たすのです。
選択の自由を行使しよう
会社を経営するにあたって山井社長は、「選択の自由を行使する」ことを念頭に置かれているとのことでした。なぜなら、その選択の自由を行使することによって、「ブランド」が生まれるからです。では「選択の自由」とは何でしょう。それは、
1.誰に売るか? 誰を(真の)顧客にするかは自由
2.何を売るか? 売り物(差別化要因)を何にするかは自由
3.どう売るか? 売り方(ビジネスモデル)は自由
の3つ、と山井社長はおっしゃいます。
例えば、Snow Peak社では、
1.誰に売るか?
・1986~2010年 ハイエンドなアウトドア愛好者(アウトドアがライフスタイル)
・2010年~ 自然志向のライフスタイルをもった高感度コンシュマー
2.何を売るか?
・革新的な製品とサービス・システム・デザイン・永久保証・アフターサービス
・徹底したユーザー親和性・Snow Peak Way、Snow Peak Club、Snow Peak Store
・日本人としての感受性、自然に対する情緒感、ひとに対するもてなしのこころ
3.どう売るか?
・27店舗のSnow Peak Store 40~150坪 1店舗のOnline Shop 国内販売の1/2
・30店舗のフラッグシップディーラー+200店舗の正規特約店 国内販売の1/3
・ユーザーへの直接販売+ディーラーへの直接販売
これらが組み合わさることによって「Snow Peak」というブランドが築かれていきました。これは、まちづくりや地域活性化についても同じことが言えるのではないでしょうか。「地域活性化」を分析するにもありましたように、地域活性の仕方は本来自由であって、自分達でどこが一番その志やミッションを達成するのに最適かを、分析し、選択していくことなのです。
人深く幸せにしていこう
「ものづくりも大事ですが、ものづくりからことづくりへ、ことづくりからライフスタイルへつながるのです。」と山井社長はおっしゃいます。ものを作っても、それはものの形だけではなく、そこに機能だったり目に見えない価値を加えること、そしてその価値が生き方や生活に変化をもたらしていく。ものをつくるということは、そこにどういう想いを込めるかで、その人への影響を与えるパワーを持ったものでもあるといえるでしょう。だからこそ、「志・ミッション」を込めたものづくりは、人深く幸せにしてくのです。