
KYUSHU ISLAND WORKは、「はたらくをオフィスから解放する」をコンセプトに、九州全域に快適な環境の整った分散型ワークプレイスを展開しています。この度、働き方、ワーケーション、地域商社、スタートアップ、農業改革、事業承継、公民連携など、多様なテーマで活躍するトップランナーが一堂に集結する『KIWサミット2022』を開催しました。
今回は、地域商社をテーマにした対談内容をご紹介します。
【パネラー】(敬称略)
・日々とデザイン株式会社 代表取締役 甲斐慶太朗氏
・パパイア王子代表/合同会社TABETEMAMORU代表 野菜ソムリエ 岩本脩成氏
・一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 理事 /合同会社しんとみ 職務執行者 高橋邦男氏
ビジネスのきっかけはイベントでの出会い
高橋:二人ともIターン、Uターンで宮崎に来られましたが、少し前まで移住は特別なことというイメージがありました。その点、お二人を見ていると、もっと自然体で移住を捉えている印象を受けます。
移住前後の考え方の変化などありましたら、お話いただけますか?
甲斐:私はもともと福岡の出身ですが、延岡には親戚もいるため、子どもの頃からよく遊びに来ていました。なので、全く見知らぬ土地に移住したわけではありません。
もちろん、最初は友達がいないので、寂しさを感じることはありました。ただ、日向市であったイベント(起業塾「日向ドラゴンアカデミー」)で同じ志を持つ人達と出会い、人の輪が広がり、今のビジネスにもつながっています。
地域の方がと外からの訪問者が集う食堂づくり
高橋:最初は焼酎の営業をやっていたところから、現在は日々とデザイン株式会社を立ち上げ、満月食堂の運営にも携わられています。事業について詳しく教えてください。
甲斐:具体的には延岡市島浦町で食堂の運営と、島浦町で獲れる鯛を加工したフレークを製造販売しています。
このビジネス構想自体は2019年から考えていたものです。地域活性につながるビジネスアイディアを募集するコンテストで優勝をいただきました。それを機に地域の方々と意見を交わし、食堂オープンにつながっています。
私の考えとして、地域の方が集まる場所を作りたいと考えていました。そして、外からの訪問者も来てもらえたらさらにいいということで、食堂という形になりました。
ただし、島浦町は高齢化率も50%を越え、いわゆる限界集落です。その中だけでビジネスを拡大させていくのは難しい。そこで、島浦から外に売り出していこうということで、加工品の販売も同時に行っています。
高橋:アイディアをビジネスにする過程には、何か大変さはありましたか?
甲斐:スタートした時点では、多くの方に無理だと言われました。それでも、その土地でお世話になった方々の顔が浮かび、ここで諦めることはできないという気持ちがあったからやってこれたのだと思います。
高橋:食堂の売上の中で、惣菜が占める割合が大きいと伺いました。つまり、地元の方にとっても必要なインフラになっています。
甲斐:惣菜は一皿100〜300円と高いものではありません。
島浦には夕方5時に閉まるスーパーや商店などはありますが、いざ夕食を作る時間になって、出来合いのものを買う選択肢はこれまでなかったんです。
できたての惣菜を買ったり、その場で食べたりできる貴重な場所として、地元の方にも活用していただけているのは嬉しいですね。
クラウドファンディングで自分たちが市場を作る

高橋:これまでビジネスアイディアがあっても、お金が無くて実現できないということもよくありました。その点、現在ではクラウドファンディングという方法も利用できます。
実際、甲斐さんと岩本さんのお二人はクラウドファンディング仲間ですね。
岩本:甲斐さんに初めてお会いしたのは、新富町で開催された講座に登壇したときだったと思います。
そこから、対面でお会いする機会はなくとも、SNSを介した繋がりで近況を見ていました。クラウドファンディングで大きなお金を獲得していたり、食堂をオープンさせたりと実際に行動を起こしていること、それを結果に結びつけていることが印象に残っています。
アイディアがあっても実際に行動に移せる人は少ない。一方で、甲斐さんはまさに有言実行される方ですね。
高橋:有言実行については、岩本さんも同じですね。岩本さんは全くの未経験であったにもかかわらず、パパイヤを栽培するところから事業をスタートされています。
パパイヤへの熱意を保ち続けられる源はどこにあるのでしょうか?
岩本:もともとは、医療健康系の研究開発を行っていました。その後Uターンして、良いものを食べて、健康に過ごしてほしいというビジョンの元でパパイヤに行き着きました。
ただし、コロナ禍で実際に目で見て、口にしてもらえる機会が限定的ということもあり、なかなかパパイヤの良さを普及しきれていないと感じています。だからこそ、私自身が主体的にパパイヤをアピールしている部分もあるんです。
高橋:未経験で就農して、商品開発まで行うバイタリティーには目を見張ります。今は何種類のパパイヤ加工品があるのでしょうか?
岩本:2桁台はありますね。
甲斐:開発スピードが凄まじいです。
高橋:ゼロから始める苦しさはあると思うのですが、途中で諦めない秘訣はどこにあるのでしょうか?
岩本:もちろん、やめたら楽になるだろうと感じたこともあります。続けることに意味があると周囲の方に喝を入れてもらうことは力になりますし、自分自身中途半端に終わりたくないという気持ちも強いです。
自分たちが市場を作るという気持ちでやっています。
岩本:私も自分の事業をやってよかったと強く感じています。島浦の人口は700人程度ですが、以前島浦に住んでいた方、島浦にゆかりのある方などはもっとたくさんいます。
島を訪れている方も含めて、皆さんから食堂があって良かったと言ってもらえるのはとても嬉しいですね。
キャリアの幅が広がる時代に地域商社という選択を

高橋:お二人に共通するのが、可能性に目を向けていることだと思います。諦める理由を見つけるのは簡単ですが、可能性に目を向けて選択肢を増やすという視点は地域商社にとってとても重要です。
では、最後に地域商社として将来どこを目指していくのかをぜひお聞かせください。
甲斐:島浦には高校がないので、中学卒業後に島の外に出て、そのまま大学などへ進学される方も多くいます。そのような方が将来Uターンしようと思っても、島浦では漁業が主力産業であるがゆえに、それまでの経験を活かして仕事ができる場所がほとんどないんです。
ここで飲食業と製造加工販売業を運営することで、マーケティングなど新しい仕事も生み出せます。島の外で学習機会を得た方が戻ってきて、島の中で活かしてもらえるといいですね。
高橋:この考え方は、島浦だけでなく、さまざまな地方で活かせますね。
甲斐:終身雇用という考え方は以前より薄れており、副業も活発です。今はキャリアの幅が広がっている時代ですので、モチベーションを持った方には楽しめる時代になったのではないでしょうか?
高橋:自分自身の生き方として理想にしているものはありますか?
甲斐:「日々とデザイン」という社名の通り、日常をデザインしていくことをミッションにしています。今の島の日常が将来も長く続くことを目指していきたいですね。
岩本:宮崎に移住すると話をしたとき、前職の方などには仕事は大丈夫なのか心配されました。地方には面白い仕事がないというイメージが強いと思いますので、それを変えたいです。今は一人でやっていますが、今後は人を雇用して、仲間と一緒に頑張っていきたいですね。