KYUSHU ISLAND WORKは、「はたらくをオフィスから解放する」をコンセプトに、九州全域に快適な環境の整った分散型ワークプレイスを展開しています。この度、働き方、ワーケーション、地域商社、スタートアップ、農業改革、事業承継、公民連携など、多様なテーマで活躍するトップランナーが一堂に集結する『KIWサミット2022』を開催しました。
今回は、事業承継をテーマにした対談内容をご紹介します。
【パネラー】(敬称略)
・早川しょうゆみそ株式会社 取締役専務 早川薫氏
・九州アイランドワーク株式会社 代表取締役社長 馬渡侑佑氏
・AGRIST株式会社 取締役CFO/ AGRIST FARM株式会社 代表取締役社長 山口 孝司氏
自然な気持ちで会社を継いだ理由は職人さんの信念
馬渡:皆さん宮崎県の都城市出身で、縁を感じます。今回は地元トークも交えながら進めたいと思います。
早川しょうゆみそ株式会社について地元の誰もが知っている状況で、伝統的な会社を継ぐということに対して感じていたプレッシャー、あるいは将来への展望は何かありましたか?
早川:実は兄がいるので、自分か兄のどちらかが会社を継ぐのだろうとは幼い頃から感じていました。そして中学の頃、兄に会社を継ぐのは自分だと言われたこともあり、今に至っているというエピソードがあります。
親からのプレッシャーはなく、兄弟間で話した結果です。地元ではCMも流れており、小学生の頃のあだ名が「みそ」になるほど、地元に根ざしていることは自分でも感じていました。その部分に対しては、自分なりに前向きに会社を継ぐことを考えていたと思います。
ただし、高校の地理の時間に、人口ピラミッドや高齢化問題の話を聞きました。その課題の大きさと、地域の人の話す伝統的企業へのポジティブなイメージとのギャップに怖さを感じたのは覚えています。
これが、将来どういう方向に会社をもっていかなければいけないのかを考えるきっかけでした。
馬渡:結構早い段階から、決意をもって将来的な方向について考えていらっしゃったんですね。
個人的には、(やりがいではなく)生きがいと仕事がぴったりハマると、働くのが楽しくなると考えています。そして、親子継承の際には、やりがいも継承されやすいのではないかと思うのです。
早川さんは会社を継ぐことにやりがいを感じていらっしゃいましたか?
早川:曽祖父、祖父、父がどのような思いで味噌作りを行ってきたのかを、父からではなく、私自身が生まれる前から働いている職人さんから、丁寧に熱く教えられていました。
この経験から、会社を引き継ぎたいと自然に考えるようになったと思います。
職人さんから感じるのは、やりがいというのは形があるものではなく、信念(おいしいものを作ること)。
私自身、生きがい、やりがいと別段考えることはなく、自然な気持ちとして会社を継ごうというのが現状ですね。
ロボットを活用して農業で儲かる仕組みを作る
馬渡:早川さんの場合には、継承者が良い形で見つかりましたが、スマート農業を推進するAGRISTのある新富町では農家が継承者を見つけるのに苦労しています。
その点、AGRISTのように新規の事業を立ち上げることと同時に、農業を継承することについてどのような考えがありますか?
山口:鬼滅の刃で炭焼きで生計を立てている炭治郎が出てきますが、まさに私の実家は祖父母が炭焼きで生計を立てながら開墾した農地で農業をしてきました。
しかし、現状、満足に農業はできておらず、農地を人に貸したり、トラクターで賺すだけだったりします。
この状況に、自分自身申し訳なさや不甲斐なさを感じていたところ、AGRISTに出会いました。AGRISTでは、「100年先も続く持続可能な農業の実現」を目指しています。
そのビジョンに興味をもって、面白い会社があるということでAGRISTにジョインしました。
そして、今すごい大きな生きがいを感じています。
収穫の人手不足を解消するための農業ロボットを開発していますが、現段階ではロボット導入だけで農業の持続性を達成するのは難しい。なぜなら、若い世代の担い手が圧倒的に不足しているからです。
そこで、今目指しているのが、農業ロボットを活用して農業で儲かる仕組みを作ること。儲かる農業のパッケージを使って、実家の耕作放棄地で利益を上げることを生きがいにしています。
伝統を変えずに新しいものを作って将来につなげる
馬渡:小さい事業ほど承継が難しいという問題があります。
事業承継という点では、古いものを切り捨てて全く新しいものに切り替えるのではなく、古いものの中に新しいものを融合させていくのが良いのではとも思います。
次世代に向けた変化という点で、何か取り組んでいることはありますか?
早川:会社としては大きく変えたくないと思っています。私のイメージは、伝統を変えるのではなく、新しいものを作って将来につなげるイメージです。
会社の価値を定義して、その価値を表現できる新しいモノ・コトを新しいマーケットに訴求していこうとしています。その一つが、海外マーケットの開拓です。
海外にとって、130年もの伝統のある会社はそれ自体が価値になります。和食が世界文化遺産に認定されたこともあり、2年前に海外マーケット向けに粉末味噌を開発しました。これを海外の食文化に融合してもらえたらいいと思います。
馬渡:変化に対して周到に準備されている姿勢が素晴らしいですね。
早川:職人さんたちも世界に価値を認めてもらうことを喜んでくれているのは、励みになります。
山口:私達も儲かる農業のパッケージを作ろうとしていますが、これは従来の植物工場とは異なるものです。既存の農家が延長線上で導入できるパッケージを生み出したいと考えています。
実は、今年の7月には、農業生産法人を設立し農業を始めることになりました。外からの立場ではなく、中からの立場から課題に向き合うことで新しいことが見えてくるのではと思いますね。
馬渡:従来の形とは異なる価値を創出するのが重要ですね。一つの概念にとらわれない取り組みに大きな期待が膨らみます。事業承継は答えがなくなかなかまとめが難しいですが、早川しょうゆみそはすごい!ということで一旦締めたいと思います!