観光庁の発表(訪日外国人消費動向調査 平成28年)によると、2016年の訪日外国人旅行客は、前年の約1,974万人から20%以上増の約2,404万人になった。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、政府が当初目標としていた数値を更新し続けている。
インバウンド観光において、「東京・箱根・富士山・京都・大阪」などの人気の都市・観光スポットを効率良く巡ることができる「ゴールデンルート」が中心の現状から、日本各地へインバウンド誘客を実現しようと、各地域で様々な取り組みが行われている。その1つとして、海外におけるメディア戦略が挙げられる。
栃木県足利市に、日本で唯一、CNNのトラベルスタッフが選出した「2014年の世界の夢の旅行先10カ所」に選ばれた場所がある。それが「あしかがフラワーパーク」だ。
映画アバターの世界観に浸れる「あしかがフラワーパーク」
栃木県南西部に位置し、足利氏発祥の地とされる足利市。そこに、世界が注目する「あしかがフラワーパーク」がある。
CNNのトラベルスタッフが「2014年の世界の夢の旅行先10カ所」に選定した大きな要因が、樹齢150年を超える藤の「藤棚」だ。
この藤棚が、2009年に公開されたジェームズ・キャメロン監督作品「アバター」で出てくる「魂の木(エイワの木)」と同じように見えるとされ、1000平方メートルにも及ぶ大きさと美しさから、夢の旅行先として選出された。
ゴールデンウィーク期間中は、多くの日本人観光客で交通規制がかかるほど。実際に行ってみると、日本人だけではなくアジア圏を中心に外国人観光客もたくさんいた。
3本の大藤からなる藤棚
園内に入り、藤棚を見て驚くのが、その大きさとそれが1本の木から生えた枝で作られているということだ。
うす紅藤(4月中旬〜下旬頃)・大藤(4月下旬〜5月上旬頃)・白藤(5月上旬頃)・きばな藤(5月上旬〜5月中旬頃)という、少しずつ咲く時期の違う藤を楽しめる。(2018年は観測史上最も早い開花となり、見頃は早めに終わった。)
80m続く、きばな藤のゲート
今の時期、ギリギリ見頃だったのは、きばな藤だった。80m続く藤のゲートが、非常に美しかった。
外国人を含め多くの観光客が、足を止め、ゲートの前で記念撮影をしていた。
花々が咲き乱れるフラワーパーク
フラワーパークという名称の通り、大藤だけでなく、様々な花が園内には咲いており、その時々の自然の美しさを感じられる。
現在は、春のバラ祭りが同時開催されており、日中だけでなく、夜のライトアップされたバラも2018年5月13日まで楽しめる。
ご当地ソフトクリーム「藤ソフト」
園内では、飲食が楽しめるスポットがいくつもある。この時期、特に人気なのが「藤ソフト(400円)」。
鮮やかな色に、藤のフレーバー。気持ちも口の中も爽やかになる、ご当地ソフトクリームだ。他の来園者が食べているのを見ると、行列に並んででも、ついつい食べたくなってしまう。
地域の資源が経済を動かす
今回、「あしかがフラワーパーク」をゴールデンウィークに訪れたのは初めてだったが、観光客の多さと臨時駐車場の広さに驚いた。
更に、2018年4月に栃木県内では35年ぶりのJR新駅となる「あしかがフラワーパーク駅」が完成し、観光客が利用しているのを目にした。
樹齢100年を超える樹木だけで言えば、日本全国にあるはずだ。「あしかがフラワーパーク」は、それをコンテンツとして活かし、藤棚として夜のライトアップまで行い、見せ方・伝え方も工夫している。
そして、それが海外メディアにも取り上げられ、多くの観光客を動かし、そして、地域の経済を動かしている。
ただ同じことを真似するのではなく、それに取り組んだ人たちの話や全体のストーリーから学び、自分たちの地域では何ができるのかを考え、実際に小さく始めてみることで、見えてくるものが必ずあるはずだ。
参考資料
「訪日外国人消費動向調査」平成28年(平成29年3月31日 観光庁)