PR for どがわの里山学校
宮崎県の渡川(どがわ)地区を舞台に、「自分らしく生きる力」を学ぶ里山学校、第2回目の講師は、フードディレクターの寺本りえ子さん。
テーマが「食」ということもあるのか、会場には女性の姿が目立ちます。今回は、商品開発やぬか漬けワークショップもあるのだとか…どんな講座になるのでしょう。
いま、関東近郊で暮らす人は“安心”を求めている人が多い
「五ヶ瀬町に、しだれ桜で有名なお寺があるんですがご存知ですか〜?私、あそこの娘なんです。」
寺本さんの自己紹介に、会場から「ああ~」の声が漏れました。
高校卒業後に上京し、一度五ヶ瀬でピアノ講師をするも、その後再び上京し、音楽活動(自身のCDリリースや元ピチカート・ファイヴ野宮真貴さんとのDJユニット「OuiOui」など)を経て食の仕事に関わるようになった寺本さん。
現在その仕事は、パーティーフードのプロデュース、ブランディング、食育活動ほか、多岐に渡っています。また、宮崎での仕事も増えているのだそう。
震災以降、関東の人は“食”に敏感になっています。食材が、どこでどう育てられて、添加物は何が入っているのか、気にする人が本当に増えました。
地方には、だれが作ったのかが分かる食材がたくさんあります。これは都会の人にとっては、大切な価値なんですよね。例えば“タケノコ“だけではなく、”どこの“、”誰の“まで書いてあれば安心して買うことができます。
大事なのは「商品力」、そして「売り先がある」こと
今求められているのは、食への“安心感”。そして、それにきちんと応えられるのが“地域”なのだと寺本さんは言います。
何かを売ろうとするときに大事なのは、商品力、素材力です。でもその商品力に、その地域に住んでいる人が気付いていないことも多いと思います。
例えばこの前、頂いた干しタケノコを私のFacebookにアップしたら、すごい数のイイネが付きました。東京ではなかなか買えないんですよね。
また、食材だけではなく加工品も、地域で作るメリットがあると言う寺本さん。大量生産ではないからこそ、無添加にこだわったり、すぐに味の修正ができたりするからです。
あとは、“売り先が決まっている”ことも、とても大事です。
今日はしいたけパウダーを作ってみますが、これはベジリー(寺本さんがディレクションするフードデリバリーサービス。東京にいながら九州のオーガニック野菜が手に入る)で実際に取り扱う予定です。どこで売るかが決まっていると商品は作りやすいんです。
どんなお客さまに届けるために、どこで売りたいのか。しっかり考えて作ることが大切です。
渡川発の新商品「原木しいたけパウダー」!
では早速やってみましょう!と寺本さんが手に取ったのが、ビニール袋いっぱいに詰められた渡川産の干しシイタケ。
ぬか床ワークショップでうまみを足すためにセットにいれているしいたけパウダーを商品として欲しいという声が上がり、今回の商品開発にいたったのだそう。
まずは、干しシイタケをそのまま味見します。パリパリとした食感と素朴な香りは「このまま“しいたけチップス”として発売してもいいかも!」という参加者もいるほど。
干しシイタケをそのまま食べて美味しいというのはまずないことだそうで、いかに渡川の原木しいたけが美味しいのかが分かります。その後、機械にかけてパウダーにします。「あえて少し粒を残しても美味しい!」「お茶と混ぜてみては?(お茶を作っている参加者から)」「真空パックだったら保存も効くね」など、会場からも活発な意見が飛び出します。
パウダーが完成すると、次はパッケージ決め。渡川地区でお弁当や加工品を作っている「どがわマンマ」の商品シールや、渡川のロゴステッカー、サンプルで持ってきていた他の商品のシールを貼りかえてみたりしながら、みんなで意見を出し合います。
地域ビジネスには“継続”がとても大事だと言う寺本さん。そのための適正価格をみんなで議論しつつ、開始から約1時間後、しいたけパウダーが完成しました。価格は390円~450円程度、ベジリーで取り扱えるようになるまで、今後さらに試作を重ねます。
「菌と共存する体を作る」ぬか床ワークショップ
午後は、ぬか床の作り方、漬け方のワークショップです。寺本さんは伝統的な発酵食品である「ぬか漬け」を広める活動にも力を入れています。
「ぬか床を作ったことがある人?」という質問に、手を挙げた参加者は一人だけ。驚く寺本さんでしたが、やったことはあるけれど長続きしなくて…という参加者が多いようです。
通常、腸は5~8mくらいあると言われています。“腸活“とか”菌活“とかって聞いたことありますか?腸内環境を良くしておくことは、健康に暮らす秘訣なんです。
ボウルに入れた糠に、ゆっくりと塩水を足しながら言う寺本さん。糠は、ぎゅっと握った時に指の間から水分がにじむくらいがちょうどいいのだとか。
ぬか床2kgを作るときは、生糠1kgに対し、塩水約1リットルが目安。うま味成分(干ししいたけパウダーや唐辛子、乾燥昆布など)を混ぜ、塩水が糠に均一に混ざれば準備完了です。
ぬか床ができたら、次は捨て漬け。7~10日ほど水分を見ながら捨て漬け野菜を入れ替えると、発酵が進み、ふんわりとしたいい香りのぬか床が完成します。(詳しくはぜひ、「JOY OF AGING」(宝島社)を読んでみてください。)
前日に漬けたというぬか漬けを試食しましたが、優しい塩分が感じられ、「美味しい!」の声がたくさんあがっていました。ズッキーニやカリフラワーなど珍しい野菜の取り合わせにも、参加者みんな興味深々。特に「干しシイタケ」は、お酒のつまみにピッタリ!と大好評でした。
地域の食には可能性がいっぱい
朝10時半から午後3時まで、みっちり行われた今回の講座。加工品を作っていたり、カフェを運営していたり、実際に食の仕事をしている参加者が多かったのが印象的でした。
次々に投げかけられる質問に、「ここからは本当はお金が発生するんですけど…(笑)」と言いながらもどんどん応える寺本さん。
”地域と都会をつなぐ人”である寺本さんのような人が関わることで、“地域の食”は、ますます面白くなっていくのではないでしょうか。
今後の展開がとても楽しみです!
ゲストプロフィール
寺本りえ子:
フードディレクター。宮崎県五ヶ瀬町出身。音楽活動を経てフードコーディネーターの道へ。現在は『VEGEO VEGECO』ディレクターをはじめ、天王洲のスーホルム(アクタス)での毎月開催の「季節の手仕事」シリーズもプロデュース。ワークショップ、発酵食の普及やカフェのアドバイザー、地域活性化、商品開発や食育にも精力的に取り組み中。