地方の農村や漁村を訪れた際に、その地域で生活している外国人の方々を見かけた経験がある方も多いと思います。
地方に滞在している外国人の方の多くは、現地の漁協や農協を通じて、生産技術等の習得をおこなっている方々で、日本の技術を受け継ぐ存在として注目されています。
島浦島の漁協では9人を受け入れ
例えば、宮崎県の北部にある離島・島浦島でも、外国人を見かけます。現在9名の方々が、外国人実習生として滞在しながら、学んでいます。
受け入れているのは、島浦町漁協で、インドネシアの水産高校を卒業した後の3年間の実習を行なっています。
島の人に話を聞いてみると、受け入れる前はうまくやっていけるのかという不安もあったと言いますが、実習生が礼儀正しく、素直で、どんどん受け入れられていっているといいます。
島の漁業の担い手が少なくなる中で、技術をどう伝えていくかということが課題。そこで外国人の方々が積極的に学ぼうと、前のめりで参加してくれるのは歓迎すべきこと
と語ります。
日本語も勉強し、コミュニケーションもスムーズ
実習生は、実習前に母国で日本語も学び、研修中も地元の方言も含めて、様々な知識を得ていくといいます。
生活する中で、家族のような付き合い方もできてきているそうです。
外国人研修・技能実習制度で増加する研修生
島浦島で受け入れられているような方の多くは、国の「外国人技能実習制度」を利用して滞在している方々です。
現在日本における外国人残留者数は約212万人(2014年データによる)となっており、その内約16万人が、この実習制度を利用して日本に滞在しています。
もともと制度ができた背景には、日本の技能・技術の知識を開発途上地域等に伝え、現地の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進です。
期間は最長で5年。研修生は、この期間内に技術を習得し、母国に持ち帰り、自分自身で会社を興したり、現地で更に人々に伝えていくなど、技術のハブとして活躍します。
担い手不足を解消しながら、日本の技を維持するためにできることとは?
漁業や農業など、一次産業の多くは、伝統的な技法や、技術・感覚により、培われていることが多い分野でもあります。
現在では補助的にテクノロジーを使う場面もありますが、伝統的な技法の習得に関しては、時間がかかることは否めません。
島浦島でも、「次は、日本が伝えた技術が外国で生き残り、その技術を日本が再び学ぶ日もくるのではないか」という話も聞かれます。
実際、若手の後継者が少ない中で、技術を積極的に吸収しようという実習生は、技術を伝え、担い手になるのに有望な存在です。
産業を未来につなげるためにできること
いま一次産業の分野では2つのことが求められているでしょう。
ひとつは、技術を守り、伝えていくこと。もうひとつは、伝統を革新し、新しいやり方を生み出すことです。
一見矛盾するようですが、自然環境も社会環境もより早いスピードで変わって行く中で、必然となる変化だといえるでしょう。
実習制度は、技術を伝えるというだけでなく、新しい技術を生み出す場にもなるはずです。受け入れ先によっては、労働環境の課題なども指摘される実習制度ですが、減り続ける一次産業の担い手不足を補い、かつ技術革新を起こす可能性がある取り組みだといえます。
国の制度としても、受け入れ先団体の姿勢としても、従来のまま運用するのではなく、より産業の活性化につながる制度の活用方法が求められているでしょう。