2017年4月に大分県佐伯市で創刊した「さいき・あまべ食べる通信」。
第2号の表紙は、こちらです。
パッと見は版画のドライポイントのような人物画。
これ、なんとボールペンで書かれているというから驚きです。
創刊号では「しらす」、第2号では「緋扇貝」を特集。中面には大胆な構図の画像、そして読み手を刺激する心地のよいテンポのコピーが紙面に踊ります。
大分県で初めての「食べる通信」
image by さいき・あまべ食べる通信
食べる通信とは、全国で現在39団体が発行している、食材付きの情報紙のこと。「さいき・あまべ食べる通信」は大分県では初めてで、12ページの情報紙に加え、佐伯の海の幸をセットにして読者に届けています。
「さいき・あまべ食べる通信」は7月に第2号を発刊。現在は第3号を鋭意制作中です。
加工業者の目線が入るのが特徴
実はこの「さいき・あまべ食べる通信」には、はっきりとした違いがあります。
それは、全国の「食べる通信」の多くが生産者の目線で編集されているのに対し、「さいき・あまべ食べる通信」は生産者の目線にプラスして、加工業者の目線で編集されていることです。
いったいなぜ、加工業者の目線による「食べる通信」が作られたのでしょうか。
加工業者にも想いとストーリーがある
image by さいき・あまべ食べる通信
この情報紙を創刊したのは、市内に住む平川摂さん。
5年前に大阪からUターンし、家業である水産加工会社を継いだ経営者です。
現在は佐伯の浦を望む上浦に工場を置き、ヒジキやワカメなどの製造加工を行なっています。
スポットが当たりづらい加工という仕事
平川さんは大学卒業後からUターンするまで、リクルートに勤めていました。「当時は教育分野の仕事がメインで、広告営業からクリエイティブ、企画編集、研修の講師まで、とにかくなんでもバリバリこなしていましたね」と、当時を振り返ります。
40代に入ってからもますます意気盛んに仕事に取り組んでいましたが、知人のNPO活動などに刺激を受けたという平川さんは意を決し、家業の水産加工会社を継ぐために佐伯市へUターンしました。
そこで平川さんが気づいたもの。それは佐伯の海の幸の素晴らしさと、一方で確かな技術を持ちながらスポットが当たりにくい現実だったそうです。
しらすは、生で食べるのもおいしいですが、加工業者の絶妙な塩加減が抜群の味を引き出します。
また、しらすは火を通さないとなかなか流通に乗らないので、日持ちさせる加工業者の仕事は漁師さんにとってとても大切なんですよ。
でも、生産者さんの思いを伝えるメディアは多いですが、加工業者のそれは決して十分ではない。
加工業者にも素晴らしい技術やストーリーがあるのに、十分に日が当たっていないと感じたんです
加工業者のストーリーを発信
しらすを取り上げた創刊号では、漁師さんに続いて加工業者さんが登場します。
鮮度が命のしらすを3分間で茹でる。しらすに混在する小さなエビやイカを手作業で取り除く。
地道に、確かな仕事を重ねる加工業者の姿が、ドラマティックに書かれています。
加工業者は生産者と消費者の間をつなぐ存在。そこに日が当たることで、佐伯のまち全体にいろんなつながりが生まれ、中からも外からも関わる人が増えて、みんなが動き出せるようになったらええやん、と。
創刊したのはそんな思いからでしたね
[後編]へ続く