広島県宮島へ夫婦で移住、木彫りカフェ「タムカイマ」が地域に根付くまで

日本でも屈指の観光地「宮島」。世界遺産の厳島神社が迎えてくれる島には、年間450万人以上の観光客が訪れます。いつ訪れても世界各国の人であふれる参道には、もみじ饅頭やあなごなどのお店や老舗旅館が立ち並んでいます。

そんなメインストリートから少し路地を入ったところに、味わい深い町屋が。中を覗くと、センスあふれる小物や箱庭、素敵な家具が置かれた、穏やかな空間が広がっていました。ところどころに、本物かと思うような木彫りのキノコが顔をのぞかせています。ここは、宮島でもユニークな木彫りカフェ「タムカイマ」。

埼玉と福岡からそれぞれ移住して、4年前にカフェを始めた松竹由紀さん・梯輔さん夫妻は、どんな風に地域に根づいていったのでしょう?

意外なことに「実は、わけもわからず開店したんです…」という松竹由紀さんに、お話を伺いました。

ゆったりとした時間が流れる宮島に移住

東京で長い間、接客や事務の仕事をしていた由紀さんは、地方の暮らしに興味を持ち、10年前に宮島の旅館で9カ月間のアルバイトを始めました。暮らし始めた宮島は、人も車も少なく、東京であふれかえっていた音や光の刺激もなく、夜の静けさは格別だったと言います。

すべてが「少ないこと」で、ゆったりとした時が流れる暮らしの中で、由紀さんは身も心も充電されたように感じたそうです。その後、再び東京で数年間過ごしますが、コンセントを抜かれたような状態に。

「やっぱり宮島に戻りたい」。後の夫となる悌輔さんは、すでに福岡から宮島へ移住していたこともあり、由紀さんは宮島に移り住むことを決めました。悌輔さんが住んでいた古い町屋が、一目で気に入った由紀さんは、そこで2人の暮らしをスタート。

その頃、木彫り作家として活動を始めたばかりの悌輔さんは、この町家を木彫りの店に。作家活動もあるため週末しかお店を開けていませんでしたが、もっと人に来てもらおうと、木彫りに囲まれてゆっくり時間を過ごせるカフェを作ることに決めたのです。

「タムカイマ」という名前に込められた想い

カフェを開いた経験もなく、ゼロからのスタートでした。2人とも、これでいいのかと常に試行錯誤しながら、やっていた感じです。だいぶ経ってから、地元の人に“あら、ここカフェだったの?”と驚かれたくらい、ひっそりとスタートしました。

こうして2014年夏にオープンした「タムカイマ」というお店の名前は、古い日本の言葉で「互いに向かい合う間」という意味。「タ」は「手」という意味もあり、「手仕事」を表しているそう。

宮島に流れる、古代から変わらないゆったりした時間を、木彫りの手仕事に囲まれて感じられる空間にしたい、そんな思いがあるのです。

店内には、悌輔さんの木彫りキノコや鉱石がちりばめられた箱庭も。

タムカイマでは、無農薬や減農薬などの体に良い素材を使って、ケーキや焼き菓子、酵素ジュースなどのメニューを提供しています。

口にすると、どれも心を込めて丁寧に作られたことが伝わってきます。夏の一番人気は、台湾のふわふわした食感のかき氷。いつもは行きつけの店に通う地元の人も、これを食べにくる人は多いのだそうです。

減農薬いちごとホワイトチョコのチーズケーキ

おいしい酵素ジュースがここから生まれる

試行錯誤しながら、看板メニューをそろえ、さまざまなライブや展覧会なども開きながら、この4年間ゆっくり進んできたタムカイマ。「少しのんびりやりすぎていたかな」と笑う由紀さんは、これから「宮島に来たからこそ楽しめるもの」をもっと提供できるよう、新たな計画をひそかに進めているようです。

また、この5年間で宮島を訪れる外国人観光客が約4倍(年間約29万人)に増えたこともあり、タムカイマを訪れる外国人のお客様ともっとコミュニケーションを取りたいと、由紀さんは最近英会話も習い始めたそう。ゆっくりと、でも丁寧に進んでいくタムカイマの姿が見えました。

宮島らしさを守りながら、均一化しない地域に

宮島のメインストリート

10年近く宮島に住む由紀さんは、この地域の変化も感じています。

ここ数年で、メインストリートなどに大型商業チェーン店が増えて、個人商店が入る余地が以前より減ってきているように感じます。均一化しないように意識していかないと、あっという間に流されていくのではという危機感があります。宮島の良さを守りながら、発展していけるといいですよね。

メインストリートから一本入った路地や裏通りには、ちらちらと素敵な個人商店や宿が並んでいます。昭和な文具とかわいいデザイン小物が混在した、古くから続く文具店。町家を生かしたカフェやB&B、ジェラート屋さん。さりげなく素敵な看板を掲げた古い酒屋さん。

メインストリートと並走する裏通り

そこには、ここにしかない何かに出会えそうなワクワク感があります。宮島ならではの良さを生かしながら、新しいものも取り入れて。タムカイマも地域も、そんな風に発展していってほしいと感じました。

地域に根付くための多様なアプローチ

松竹由紀さん

移住した新しい土地での、新しい試み。地域に溶け込むために、積極的に町内会や地域の取り組みに参加するものだと思っていた私には、由紀さんのお話はとても意外でした。

「カフェをやるので精一杯なので、とにかく存在感を出さず、日陰のようにひっそりとやっているんです(笑)」という由紀さんの一言に、肩の力が抜けた思いでした。

誰もが同じように、常に前へ前へと積極的にやれるわけでもないし、やりたいかどうかもわからない。さまざまな人が移住する中で、さまざまなアプローチがある。「でも、やっぱり人との縁は大切にしていますね。広島に来てから、本当にいい人たちに巡り合ってきたなと思います」と由紀さん。

取材している間も、店の横を通り過ぎた地元の若女将が、親しげに由紀さんに手を振っていたり、地元の人の家で梅を収穫することを話してくれたりと、実際に松竹さんご夫妻は、ゆっくりと地域に根づいているようでした。そう、日陰のようにひっそりと。

タムカイマ 
住所:広島県廿日市市宮島町幸町西浜435-4
TEL:0829-44-1682
営業時間:11:00–18:00
(定休日:水・不定休あり)
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