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地方創生ICT特集:復興から、地方創生へ。「スマートシティ会津若松」が描く未来の地域づくり

地方創生ICT特集:復興から、地方創生へ。「スマートシティ会津若松」が描く未来の地域づくり

    CATEGORY: AREA:福島県

福島県の会津地方における中心都市、会津若松市。

幕末、最後まで「武士の本分」を貫き戦った会津藩の中心に位置する、人口約12万人の地方都市だ。夏は暑く、冬は雪が降り積もり、多くの観光資源を有する地域でもある。

日本初のコンピュータ専門大学として開設された公立大学・会津大学を中核として、日本版シリコンバレーの形成を目指していた流れをくみ、会津若松は震災以降、更なるイノベーションを起こそうとしている。

2013年から「スマートシティ会津若松」の推進を掲げてきた、会津若松。構想から5年半、チャレンジを続けてきた会津若松市で、現在、企画政策部 企画調整課 スマートシティ推進担当を務める山崎彬美さん。

持続可能な地域づくりを実現するために、全国で地域課題を解決する起業家育成とビジネス創出に取り組む、地域ビジネスプロデューサーの齋藤潤一さんと共に会津若松を訪れ、山崎さんにお話を伺った。

スマートシティ、地方創生の仕組みづくり

会津若松市は、スマートシティ構想を実現するため、市・会津大学・地元企業・地元に拠点を持つ大企業による産官学連携の団体「会津若松(現・会津地域)スマートシティ推進協議会」を立ち上げ、事業を推進してきた。

ICTというツールを使い、復興から地方創生の実現に向け、横串的に生活を豊かにする先駆的なモデルとなる地方創生の仕組みづくりに取り組んでいる。

スマートシティの先駆者

エネルギー・子育て・観光など、様々な分野でスマートシティ構想を推し進める会津若松市だが、試行錯誤を繰り返しながらプロジェクトを進めているという。

齋藤:先駆者として、どのような苦労がありましたか?

とにかく、全てが手探りでした。例えば、タブレットを使った証明書の申請システムでは、住基情報を無線ネットワークで飛ばして良いのか、電子署名をどう扱えば良いのかなど、過去に前例がない中で試行錯誤しながら行いました。

そのようなことを乗り越えて、現在では、市が持っているデータと市民が入力したデータをもとに、様々な通知を出すこともできます。例えば、情報に基づいて、お母さんに子どもの予防接種のアラートを出すことが可能です。

出典:「あいづっこ+(プラス)」チラシ

齋藤:その他には、どのような領域で検証が行われているのですか?

例えば、学校と家庭をつなぐことを目的とした「あいづっこ+(プラス)」というアプリがあります。会津若松市の幼稚園・小学校・中学校と教育委員会の情報を一本化して発信を行うもので、平成30年度からは全市的に活用されています。

その他、エネルギーの領域で消費電力を抑えたり、デジタルDMOという位置付けで観光サイトの表示内容をユーザーに合わせて自動で変化させたり、最近では、農業の分野でも導入が始まっています。

スマートシティに対する市民の認知と理解を上げるため、会津若松市では多角的にデジタル化を進めている。

豊かな地域づくりを具現化する会津若松

会津若松のシンボル「鶴ヶ城(会津若松城)」

5年半という期間で、様々な領域で構想を具現化している会津若松市。ここまで来るのには、多くの壁を乗り越えてきたはずだ。構想で終わらず、実現できた要因は何なのだろうか。

齋藤:率直に凄いと感じたのですが、ここまでできた要因は何でしょうか?

行政が、このような多角的な取り組みを行う上で、それぞれの部署にICTのことを理解できる人がいるかどうかは重要だと思います。外部との協業を行う際に、それが大きなポイントとなります。

会津若松市の場合は、情報政策課に長年いたITリテラシーの高いメンバーが各部署に散らばったおかげで、協業の話がスムーズに進みました。新しいチャレンジを面倒に思わず、ポジティブに取り組めたことが大きいです。

齋藤:市民からの抵抗は無かったんですか?

当然、ゼロではないです。ただ、実際にやってみて起きたこととして、市民のニーズが高いことに取り組むと、ポジティブな反応や成果が得られました。

例えば、先ほどお話しした「あいづっこ+(プラス)」に学校経由で連絡が来て、いつでもどこでもそれを確認できる仕組みを導入したところ、やってみようと考えた親御さんが多く、それを実施したことで、「会津若松+(プラス)」という基幹となるサービスのユーザー数も急増化しました。

行政サービスにおいても、ユーザー(市民)のニーズを理解し、今まで不便に感じていたものを便利に変えることで、より多くの理解者を増やすことができる。

「スマートシティ会津若松」が描く未来

会津若松市は、蓄積したデータをこれから本格的に活用し始めるというが、まずは、利活用のルールづくりから行っていく必要がある。そのためには、住民の理解を得ることが重要だ。

齋藤:今後ますます、住民の理解を得ることが重要ですね?

行政サービスに関して、実は享受しているけれど、その認識に至っていない、実感されにくい取り組みが多いと思います。

まずは、自分の仕事や自分の子育てという市民が実感しやすいものから取り組み、実証から実装に移行する過程で、更に住民の理解を得ていくことが大切だと思います。

決して、容易なチャレンジではない。忍耐強く、住民自身が自分の生活を豊かにするために、自分の情報をもっと出したいと思えるかどうかがポイントとなる。

その結果、地域に様々な企業が集まり、地域で暮らす人たちにとってより良いサービスが生まれる。そして、将来的には、会津で生まれた価値の高いサービスが、日本中・世界中へと展開されていく未来を会津若松市は描いている。

「スマートシティ会津若松」は、新たなステージへと歩みを進めている。