いま、地方移住への関心が高まっています。国が実施した「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」によると、東京都内在住者の4割が移住を検討している(*1)というデータが出ています。
単純化して考えれば、東京の人口は約1400万人なので、おおよそ560万人が何かしらの条件が整えば地方移住する可能性があることを示しています。
「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」 は、2014年に東京都在住の18~69歳の男女、1200人を対象に行われました。
この調査の結果を分析し、移住を検討している方が多いにも関わらず、移住が実現しない理由を考えてみます。
東京在住者の4割は地方への移住を検討
この調査によると、東京都から移住する予定または、移住を検討したいと思っている人は約4割にのぼることが明らかになっています。
この数字は、「今後1年」「今後5年をめど」「今後10年をめど」「具体的な時期は決まっていないが、検討したい」を合計したもの。
中でも、男女とも10・20代で移住する予定または検討したいと回答した人の割合が46.7%と高く、男性では50代も、50.8%と比較的高い値を示しています。
移住のきっかけや理由は各世代さまざま
なぜ移住したいと思うのかというきっかけについては、性別・年齢層別で異なっており、若い世代での結婚や子育て、就職が目立ち、年齢が上がるにつれて、早期退職や定年退職をきっかけに考える方が多いようです。
また移住を検討する理由では、「出身地であるから」(37.9%)と「スローライフを実現したいから」(36.9%)という項目が全体的に比較的割合が高くなっています。
その他には、暮らしやすさや、食への安心なども理由にあがっています。
移住する上での不安は働き口が見つからないこと
4割が検討する地方移住における不安や懸念点の項目では、「働き口が見つからない」という項目が41.8%と最も高くなっています。
ついで、「日常生活や公共交通の利便性」が上がっており、男女共に全世代で顕著に現れています。
意外にも「給料が下がる可能性があるから」という理由については、全体で6番目となる19.7%となっており、そこまで高い要因ではないことがわかります。
この調査結果より、「地方での仕事」が少ないことや、見つからないと考えられていることが、地方移住に一歩踏み出すことにブレーキをかけている大きな要因だといえます。
地域には仕事がないのか?
移住促進の取り組みの中でも、仕事への関心は顕著に現れているといえます。
宮崎県への移住を促進する民間団体「宮崎移住計画」は、2015年に東京で移住促進イベントを多数展開しました。
その際に、「宮崎、仕事あります!」をテーマに、積極的に地方で働く魅力と機会を打ち出していきました。その結果、2015年の移住希望地ランキングで10位にランクインし、圏外からの躍進となったことは記憶に新しいできごとです。
最も重要なのは、地方のリアルが伝わること
最後に、移住を検討する上で困っていることに関しては、「移住に関する情報が十分でなさそうなこと」というのが最も多く、次いで、「移住に関する情報をどこで入手していいのか分からないこと」が上げられています。
全国の自治体がしのぎを削りながら、自治体PRを行い、移住定住促進を行なう中、「移住に関する情報が十分でなさそうなこと」があげられるのは象徴的なことかもしれません。
つまり、地方移住への関心の高まりは、地方の情報に触れられる機会が多くなり、人生の選択肢として浮上していることを示しています。
一方で、実際に移住するかどうかに関しては、現在自分自身が触れている情報では、不足しているのではないかという思いがあるというわけです。
ひとつの仮説として、地方での生活のリアルや、仕事のリアルが十分に伝わっていないのではないかということがいえるでしょう。
全国の自治体による情報発信は、自己満足的なものであり、玉虫色の地方移住礼賛や、良いことばかりの宣伝は、飽きられ、疑われているのです。
目をそらしたり、言いたくないことであったり、「実際にどうなのか」ということを伝えなければいけない時代になっているのではないかと思います。
おくせずに地方のリアルを発信し、伝えていくことこそ、地方移住を希望する方々を動かすことに繋がるのではないでしょうか。
参照リンク
※1,2018年1月1日追記:本稿初出時、「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」の結果である「東京在住者の4割が地方への移住を検討している又は今後検討したいと考えている」という結果を、「東京在住者の4割が地方への移住を希望している」という表現で記載しておりました。調査結果を誤解なく伝えるために、該当箇所を「検討」に訂正すると共に、お詫び申し上げます。